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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 最終章 戦いの果てに

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 第二話 対抗の召喚

 現れたライディシュラークは、ジェモグリエよりは少し体躯が小さいが、背中に生えた羽を広げたその雄大さは、ジェモグリエの巨躯を凌ぐ圧力を感じさせる。

 更に、大きく吸い込んだ息を吐きだすように一啼きした咆哮は、空を劈くジェモグリエのそれを超え、地上に残る耳を塞ぐ人々、いや、かなり遠くに居る人々にもその声が届いていた。


「よく見ておくがいい、愚民どもよ。これからダルメキアを消滅させる破壊神の姿をな。さあ、ライディシュラークよ、お前の力を見せてやれ」


 呼応するように大きく開けたライディシュラークの口の奥に輝きが見えたかと思うとそれが一気に膨れ上がり、首を縦に振ると共に一本の雷が地上に吐き出された。

 その大きさは計り知れず、ただの雷が地面に消えて行くのに対し、ライディシュラークが顔を上げて行くのに合わせて前方に走って行く。

 激しい破壊音が響き渡ると共に目を開けていられない程の閃光が辺りを真っ白な世界に変貌する。


「何が起こったでヤンスか?」


 徐々に戻って行く視界が見せる大きく変わってしまった景色に、その場にいる者達の表情が驚愕に染められて行く。


「山が割れちまった……」

「いえ、大地そのものが割れてしまっているのよ」


 ライディシュラークが雷を吐きつけた場所から大地が大きく裂け、その先にある山を二つに割り、更にその先にまで続いている。

 フラム達からは見えないが、裂け目の先から水が流れる音が聞こえて来る。それは、裂け目が大地の先まで達し、そこから海の水が大量に流れ落ちている音だった。


「桁違いでヤンス」

「おいおい、さっきの竜魔獣もかなり手古摺ったってのに、どうやって戦えってんだよ」


 ゆっくりと地上に降りて来たライディシュラークが身を屈めて差し出した手の上にケイハルトが飛び乗り、腕を伝って頭の上に移動する。


「これで分かったであろう。ライディシュラークが召喚された今、このダルメキアの命運も決まったようなものだ」


 その顔から絶えず笑みが、その口から笑い声が洩れる。


「笑っていられるのも今の内よ」


 視界に捉えるフラムが決意を新たにするが、


「何か策があんのか?」

「私には無理」


 フリードとパルがズッコケる。


「おいおい、それにしちゃあ自信満々に言うな」

「でヤンス」

「私には無理だけど、こっちにも五賢人が二人も居るのよ」

「お母様? あれ、お母様が居ない」

「ビエント様も居ないでヤンス」


 先程まで居たはずの二人の姿がない。


「お二人とも、やるべき事をしに動いたのよ」


 ケイハルトがライディシュラークを召喚して間もなく、アインベルクとビエントは示し合わせた訳でもなく動き出していた。

 それぞれが違う方向に、周りに人けが無い方向へと急ぐように駆けていた。


「ここら辺りでいいだろう」


 目視で人の影が遠くに見える辺りでビエント、更にはほぼ同じタイミングでアインベルクも人けがない場所で足を止めた。

 ビエントは三叉戟を、アインベルクは錫杖を地面に突き立て、右手を天に掲げ、その声が重なった。


「アルシオンボルトーア!」


 二人の上空に、ケイハルトがライディシュラークを召喚した時の様に暗雲が垂れ込めて渦を巻き、そこを中心に巨大な魔獣召喚陣が現れる。

 ビエントの魔獣召喚陣の範囲内には、風が激しく吹き始め、アインベルクの魔獣召喚陣の範囲には雪が吹雪き始める。


「まあ、そうなるであろうな。ならば」


 ライディシュラークの頭上に居るケイハルトが指で示唆すると、ライディシュラークが大地を割った一撃をビエントに向かって口から放射する。

 放たれた雷は光の速さでビエントに向かったが、ビエントの上空に輝く魔獣召喚陣の範囲に達すると突然竜巻のような突風が渦を巻いて壁となり、ぶつかると共に激しい閃光を放つも弾き返される。

 ケイハルトが更に指で指示を変えると、今度はアインベルクの方に雷の一撃が放たれる。だが、それもアインベルクの上空に輝く魔獣召喚陣の範囲に達すると、分厚い氷が壁となって現れ、同じ様に激しい閃光と共に弾き返される。


「やはり、いかなライディシュラークの力をもってしても、五帝の召喚時に襲うことは不可能か。まあ良い。召喚するならすれば良いわ。所詮は徒労に終わるであろうからな」


 ケイハルトはライディシュラークに攻撃を止めさせ、腕を組んで傍観を決め込んだ。

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