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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第九章 サバイバル

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 第八話 因果応報

「ケイハルト……」


 ヴェルクの口から多量の地が吹き出し、剣が引き抜かれると共に前のめりに倒れた。


「これじゃあ俺がブレアにした事と同じじゃねえか。罰が当たったか。まあ、これでシエイナの元に行けるな。何やってんだって叱られるかもしれねえが、それも悪くねえか」


 力を振り絞って仰向けになり、見下ろすケイハルトに目を向ける。


「所詮あんたも人の親って事か……」


 笑みを見せたヴェルクに、ケイハルトは止めの一撃を加えた。

 呆気ないヴェルクの最後であった。


「親? この私を他の人間と一緒にして貰っては困るな。さて、こちらは━━」


 ケイハルトがライオに向かって歩みだそうとした時、激しい揺れが一帯を襲う。

 ヴェルクに受けた傷で暴れていたジェモグリエは、傷も塞がり、落ち着きを見せていた。では、


「今度は何の揺れだ?」


 言葉ほどに気にする様子はない。

 アルブトラではあちらこちらで地面が割れ、魔界から魔獣が湧き出して来るのが常で、その都度に起こる揺れは珍しくもない。

 ジェモグリエの足元に大きな亀裂が走り、そこにジェモグリエの左側の足が嵌まって大きく体勢を崩す。


「図体ばかりでかいと動きが鈍いな。ん? 何か上がって来るか」


 ゆっくりと下から上がって来る気配、それは明らかに魔獣とは違うものだった。

 ライオとケイハルトが見つめる中、亀裂の下から上がって来たのはフリードだ。


「今度は当たりだろうな。もう下に戻るのはゴメンだぜ」


 更にもう一人、少し遅れて姿を見せたのは、名工ルジェロンの息子シュタイルだった。


「どうやら着いたようだな」

「何だ、お前達は? 単なる小物ではないようだが」


 フリードとシュタイルの目がケイハルトに向けられる。


「あんたこそ、誰?」

「ケイハルト、だな」


 言い当てたのはシュタイルだ。


「ケイハルトって、あの五賢人の? いきなり目的の人物とご対面かよ」


 フリードは慌てて鞘から剣を抜く。するとその剣は、刃が少し長く伸び、幅も広くなる。

 その剣の姿に、ケイハルトの顔色が変わる。


「その剣はゼクスか!? 何故お前が持っている?」

「何故って言われてもだな……」


 頭を掻こうとしたフリードとシュタイルの上方から、体勢を立て直したジェモグリエの足が降下して来る。


「な、な、何だ!?」


 慌ててフリードとシュタイルはその場を離れる。

 その先には、息を引き取ったヴェルクが倒れていた。


「お、こいつ確か、お前が追ってた奴じゃないのか? 殺されたのか」

「こいつ程の腕をやれるとすれば」


 シュタイルは少し離れてしまったライオとケイハルトを一瞥(いちべつ)する。


「わざわざ俺からツェントを奪って、結局その末がこれか。哀れなものだ」


 手を合わせて黙祷するシュタイルの姿に、フリードも慌てて剣を鞘に納め、手を合わせて黙祷する。


「ツェントは返して貰うぞ」


 ヴェルクの傍らに落ちているツェントを拾い上げるシュタイルの傍らで、フリードはジェモグリエを見上げる。


「それにしても何なんだ、このバカでっかい魔獣は? あれ、どっかで見たような……?」




 少し遡る事ヴェルクがジェモグリエを傷付けた時、上空で戦いを繰り広げていた二匹のグリードとフィールに乗るシュレーゲンとビエント、そしてフラムも、ジェモグリエの暴れようで地上での異変に気付いていた。


「何よ急に?」


 視線が一斉に地上に向けられた時、ライオと対峙しているヴェルクの背後に突然ケイハルトが現れ、剣でヴェルクの体を貫いたのを目撃する。


「ケイハルトがあの男を!? どうして?」

「おやおや、またも私が集めた人間を。実に困った方だ」


 とはいいつつ、シュレーゲンに驚いた風もない。


「あいつはそう言う奴よ」


 フラムも一時は驚きつつも、端的に吐き捨てる。


「この数年の間、傍で使えて来たなら、お前も分かっていよう。ケイハルトがどう言う人間かを」

「ええ、恐らくあなた方よりずっとね。だからこそ私は彼を選んだのですよ」

「お前は一体何をしようとしているのだ?」

「実に簡単な事ですよ」


 シュレーゲンは剣を持ったまま両腕を広げる。


「私が望むのはこのダルメキアの破壊」

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