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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第九章 サバイバル

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 第一話 最凶の復活

「フラム、あれは確か、ウィルの村で戦った奴でヤンスよ!」

「ええ、間違いなくジェモグリエの骨だわ。あんな大きな物を持って来るなんて」


 シュレーゲンが召喚したのは、バラバラにはなってはいるが、魔獣の骨であることは間違いない。

 それも、その大きさや形状からすると、以前にフラムが対したジェモグリエに相違なかった。


「ジェモグリエ? あの竜魔獣のジェモグリエですか? どう言う事です。ジェモグリエと言えば、竜魔獣の中でも上位魔獣ですよ。五賢人クラスでもないと召喚出来ないはずです」

「以前にわたしがイグニアの事で落ち込んだ時、フリードが連れて来たウィルと言う少年が居たでしょう。そのウィルの村がジェモグリエに襲われたんです…………」


 フラムは事の経緯をアインベルクに詳しく話した。


「なるほど、アルドがやりそうな事ですね」

「もちろん、操縛の印が掛けられずに殺されてしまいましたけど。その後、暴走して大変だったわよ」

「でも、フラムが倒したでヤンスよ」

「本当ですか!? こんな大きな竜魔獣をフラムさんが? 凄いです!」


 目を輝かせて羨望の眼差しを向けるシャルロアに、さすがにフラムも胸を張れずに照れる。


「たまたまよ、たまたま。それより、ジェモグリエの骨を持って来てどうするつもりかしら?」

「骨と魔界の者、この取り合わせで考えられるとしたら、一つしかありません」

「まさか!?」


 見上げた空に浮かんでいた漆黒の魔獣召喚陣がゆっくりと降下を始め、現れたジェモグリエの骨の全てを取り囲むように今度は地面で輝きを放つ。

 グリードの背に乗るシュレーゲンも、今度は下方に手を向けて伸ばす。


「フェン・ゼーレ!」

「あの言葉は反魂術。じゃあ、やっぱり」


 漆黒の魔獣召喚陣が再び輝きを増すと同時に、先程より大きな揺れが辺りを襲う。

 あちらこちらに横たわる巨大な骨がゆっくりと浮き上がり、決められたかのような位置に移動して行く。

 暫くしてその場に、明らかに骨だけになったジェモグリエの姿を形成した。

 更に、骨の周りから徐々に肉片の様なものが現れ、増殖して行く。やがて、四つ足の双頭の竜魔獣ジェモグリエが復活した。

 但し、その目の輝きは失われている。


「さあ、肉体は与えたぞ。思う存分暴れるがいい」


 復活を喜んでいるのか、双頭が次々と咆哮を上げる。

 空気をもひりつかせるその轟音は、周りの耳を塞がせる。

 踏み出した一歩が凶器となり、大勢の人々を抵抗を許すことなく踏み潰し、軽い地震を引き起こす。

 更に右の頭が炎を吐き、左の頭が冷気を吐き出し、多くの人の命を奪って行く。

 その全てが敵味方見境がなくだ。


「最悪だわ。生きてる時だって苦労してやっと倒したのに、死魔獣として甦るなんて」

「また体の中に入って、炎袋を斬り裂いてやればいいでヤンスよ」

「馬鹿言わないで。あの時は村が破壊されそうだったから、一か八かでやってみて運がよく上手く行っただけで、今度は訳が違うわよ。あの時と違って、今度のジェモグリエは死魔獣なのよ。上手く体の中に入れたとしても、炎袋を斬り裂いたとして、再生能力があるんだから、炎袋が暴走する前に塞がってしまうと考えた方いいでしょうし、そうなったら私は消化されてしまうか、一瞬にして灰にされるでしょうね」

「それは的確な判断ですね」


 アインベルクにも念を押され、意気揚々としていたパルはシュンとなる。


「では、打つ手はないんでしょうか?」


 不安そうに言うシャルロアに反応したのか、小さなオロドーアが任せろと言わんばかりに何度も胸を叩く。


「ありがたいですけど、オロドーアさんには無理です」


 シャルロアは宥める様にオロドーアの頭を撫でる。


「打つ手があるとすれば竜魔獣に対するのは竜魔獣。それも、ジェモグリエに対するとなるとそれなりの竜魔獣じゃないと」


 フラムの目は、自然とアインベルクに向いていた。


「分かっています。(ひょう)帝ならなんとかなるでしょう。ただ、今のケイハルトが魔獣を召喚出来ない体であるとは言え、何らかの方法で雷帝を召喚する事が出来るなら。その為にアルドを連れ去ったのでしょうから、それまでは氷帝を召喚する訳にはいかないでしょう」

「ですよね。だとすれば、後はあいつが来るのを待つしかないか」

「フリードでヤンスね」

「フリードさん? フリードさんって、そんなにお強くなってらっしゃるんですか?」

「なっていると言うか、持っているゼクスを使えるようになっていたらだけど」

「ゼクス?」

「ルディア様の剣です。そうですか。あの者が今ゼクスを。確かにあの剣を使いこなせたなら、あるいは。それで、そのフリードとやらは今何処に?」

「おそらくまだ魔界に居るんでしょうね」


 フラムが苛ついた顔で言う。


「そうですか。やはり()()()()魔界に行ったのですか」

「えっ! フラムさん、魔界に行かれたのですか?」

「行ったと言うか、行かされたと言うか……」


 その顔が更に苛ついて行く。

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