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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第七章 剣聖

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 第十四話 フリード、飛ぶ!

 魔獣召喚陣が光り輝き、その中から地魔獣ダーフントが姿を現した。


「変わった姿をした魔獣だな」

「前にも言ったけど、見た目で能力を決めないでよ。こう言う時には役立つ魔獣なんだから。さあダーフント、あの山の頂上まで道を作って」


 任せろと言わんばかりに吠えながら激しく首を振ったダーフントは、硬そうなその体を丸めると、激しく廻転しながら山に向かって動き出した。

 絶壁まで達すると、廻転で絶壁を削りながら右へ左へと動いて蛇行しながら少しずつ上へと登って行く。すると、なだらかな道が少しずつ出来上がって行く。


「道が出来て行くでヤンス」

「おお、あの道なら、俺でも高さを気にせずに頂上まで行けるぞ」

「そんなに上手く行けばいいけど」

「どうしてだ?」

「ダーフントを召喚出来る魔獣召喚士は大勢居るのよ。同じ事を考える人間が他に居ないとも思えないけど」


 ダーフントは、右に左にと蛇行しながら道を作りつつ山の三分の一程まで到達したが、突然向きを変え、作って来た道を慌てた様子で下り始めた。

 その後を、ダーフントの行く手にあった岩陰から飛び出した雷魔獣のライジャットが猛追する。


「やっぱりダメね」

「おいおい、分かってたのかよ」

「ちょっと、誰の為にやってると思ってるのよ」

「それもそうでヤンス」

「とりあえず、あれだけ道が出来たんだから、あんたもさっさとあのライジャットを何とかして来なさいよ!」


 フラムにお尻を蹴られてフリードはつんのめる。


「とっ、とっ、とっ、分かったよ」


 そのまま駆け出し、ダーフントが作った道を駆け上がって行く。


「でもどうするでヤンス? あれじゃあまだフリードは上まで行けないでヤンスよ」

「それならそれで、次の手を考えればいいまでよ」


 まだ光を放っている魔獣召喚陣を前に、フラムは再び印を組んで立つ。


「魔界に住みし属性なき魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」


 両手の印が形を変える。


「出でよ、魔獣ドゥーブ」


 再び輝いた召喚陣からドゥーブが飛び出し、印を解いて魔獣召喚陣を消したフラムは、飛び上がってドゥーブの上に乗り、ゴムまりのようにひしゃげたドゥーブの反発力を利用して高々と飛び上がった。

 その姿が一気にダーフントが作った道の上の方まで上がり、その上に上手く着地する。

 そこに途中でライジャットと一戦交えて斬り捨てて来たフリードが駆け上がって来た。


「おいおい、一気に上がって来るなら何でライジャットと戦わせてるんだよ」


 フリードの文句に、フラムは溜息を吐く。


「何言ってんのよ。ライジャットが戻って来たら困るでしょう。第一、あんたはドゥーブで飛び上がれないでしょう」

「ああ、確かに」


 フリードは、右の拳で左の掌を叩く。


「本当のバカでヤンス」


 フラムとその肩に乗るパルの冷ややかな目が向けられる。


「で、次はどうするんだ?」

「あんたちょっと人任せ過ぎない?」


 話をはぐらかそうとするも、更にツッコまれるばかりだ。


「分かったよ。だったら自分で━━」


 と歩み出そうとするも、横手の断崖から垣間見える下の景色に固まってしまう。


「やっぱり駄目だ」

「情けないでヤンス」

「本当よね。でも、乗り掛かった舟だし、最後まで面倒見てあげるわよ」


 その場にしゃがみ込んだフラムは、右手を地に落とす。


「アルシオンボルトーア!」


 現れた魔獣召喚陣から出て、それを前に印を組む。


「魔界に住みし風の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」


 両手の印が形を変える。


「出でよ、風魔獣リンディア!」


 輝きを放つ魔獣召喚陣から、大きな蜥蜴(トカゲ)の様な姿をしたリンディアが姿を現した。


「この魔獣でどうするんだ?」

「ここからだと、リンディアの風で頂上まで行けるはずよ」

「風でって、ちょっと待てよ。俺は飛んでは無理だぞ」

「だからこうすんのよ!」


 フラムがリンディアに向かってフリードの尻を蹴飛ばそうとするも、それを見越したフリードが、素早い動きで躱す。


「だから無理だって!」

「あんたにも少しは無理して貰わないとね。パル!」


 呼び掛けるパルの姿がフラムの肩にない。


「任せるでヤンス!」


 背後から聞こえて来た声に、フリードが振り返ると、パルがニヤニヤしながら飛んでいる。

 訝しげな面持ちでいるフリードのお尻が燃えていた。


「あっちぃ!!」


 フリードは高々と飛び上がる


「ナイス、パル。リンディア、あいつを頂上まで飛ばして!」


 素早い動きでフリードの真下に廻り込んだリンディアは、上を見上げてフリードに向けて口から目一杯の風を吐き出した。


「ちょ、ちょ、ちょっと待━━」


 風によってお尻の火は消えたものの、その体は頂上に向かって勢い良く飛び上がった。

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