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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第六章 邂逅(かいこう)

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 第二十八話 危機の連発

 ディコと両親は慌てて森に入る少し手前まで下がって行く。

 それを見送ったフラムも、魔獣召喚陣から少し離れる。

 アドルフォも立ち上がり、フラム達とは魔獣召喚陣を挟んで反対側の外に出て魔獣召喚陣に向き直り、両手で印を組む。


「魔界に住みし氷の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」


 両手の印が形を変える。


「出でよ、氷魔獣フリデレオラ!」


 魔獣召喚陣が強烈な光を放ち、その中から八本の足を持つ巨大な氷の魔獣が姿を現した。


「フリデレオラって、まったく、本当に面倒な魔獣を呼び出すんだから」

「どうだ。ビビっ、ビビっ……」


 鼻高々に胸を張ろうとしたアドルフォが、力なくその場にへたり込んだ。


「アドルフォちゃん!?」


 母親が直ぐに駆け寄り、父親もそれに続く。


「どうしようもないわね。アルドの魔導具は自らの魔力を増幅するものじゃないんだから、身の丈に合わない魔獣を呼び出したら自分の命まで危うくなる事ぐらい分かりそうなもんだけど。まだ死ななかっただけましと思いなさい」


 とは言え、更に悪い事は続くもので、フリデレオラがアドルフォとその両親を三本の足でそれぞれを掴み上げた。


「パル、ディコ達を頼むわよ」

「まさか一人で戦うつもりでヤンスか?」

「私が巻き込んだみたいなもんだから、ディコ達を危険に晒せないでしょう」

「大丈夫でヤンスか?」

「あんたこそちゃんと守んなさいよ。さあ!」


 一抹の不安を抱えながらも、フラムの声に押されてパルはフラムの肩から飛び立った。


「さてと」


 フラムは駆け出しつつ一本の剣を鞘から抜き放つ。


「助けてくれ!!」


 (わめ)くアドルフォの体が軽々と持ち上がり、フリデレオラの大きな口へと運ばれる寸前、飛び上がったフラムの炎を纏った剣が一閃、フリデレオラの足を斬り落とした。

 更に休まず、王を捉えている足、王妃を捉えている足と、斬り落とした。


「助かった。でも、どうして?」


 アドルフォは、体に絡まるフリデレオラの足を取りながら、少し前に立つフラムの顔を見る。


「私達はあなたを殺そうとその化け物を呼び出したのですよ」

「それはムカついてるわよ。でも、そのまま見殺しにしたら、あんた達と変わらないでしょう」


 仕返ししようとした相手にそう言われては、三人は悔しさと惨めさに(さいな)まれる。

 三本の足を斬り落とされたフリデレオラは、苦しみ悶えていたが、直ぐに斬られた断面から新たな足が伸びて復活し、敵意剥き出しの目をフラムに向ける。


「あらあら、怒らせちゃったみたいね」


 フリデレオラがフラムに向かって冷気を吹き付ける。

 フラムが横に飛び退いてこれを躱すと、今度は足で掴み掛かる。


「舐めないでよね!」


 再び剣に炎を纏わせて足を斬り落とそうとするが、炎は直ぐに消えてしまった。


「しまった!」


 向かって来たフリデレオラの足に剣を合わせるも、弾かれてしまい、飛ばされた剣が少し離れた場所に突き刺さる。

 更に間髪入れずにもう一本の足が剣を失ったフラムに迫る。


「フラム!」

「お姉ちゃん!」


 伸びて来たフリデレオラの足に捕まえられる寸前、フラムはもう一本の剣を抜きざまに足を弾くと共に飛び退った。

 今度は剣を弾かれずに握っている。


「もう一本剣があって助かったわ━━おっと!」


 休まずに襲い掛かって来るフリデレオラに、フラムは逃げ廻るしかない。


「フリデレオラの弱点は体だって分かっているのに、足が邪魔で近寄る事も出来ないわね。足は斬っても直ぐにまた生えて来るだろうし……」

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