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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第六章 邂逅(かいこう)

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 第二十六話 誘拐

「何て書いてあるの?」

「ディコの両親は誘拐されたみたいね」

「ゆうかい? うちにはそんなにお金がないのに、どうして……」

「目的は金品じゃないみたいよ。ここには二人を返して欲しかったら、私に来いって書いてある」

「お姉ちゃんに? どうして?」

「分からない。でも、私のせいで誘拐されたなら、私が何とかしないと。ディコ、レイエの森って何処にあるの?」


 ディコは真剣な面持ちを少しの間下に向けていたが、意を決したようにフラムに顔を向ける。


「私が案内する」

「ダメよ。相手が誰なのか━━いえ、どれだけの人数が居るかも分からないのに、ここで大人しく待っていて。必ずお父さんとお母さんは無事に連れて戻って来るから」


 ディコは激しく首を振る。


「私も連れてってくれなきゃあ教えない」


 また少し顔を伏せたディコの目には光るものがあった。


「フラム、連れて行ったらどうでヤンス。オイラが体を張って守るでヤンスよ」

「張るほどの体なんかないでしょうに」


 張った胸を叩いたパルが(むせ)る。


「仕様がないわね。その代わり、危なくなったら直ぐにパルと一緒に逃げること。いいわね?」


 嬉しそうなディコの顔が上がると共に、威勢のいい返事が返って来た。


「じゃあ、行きましょう。ディコの両親を取り戻しに」

 

 家を出たフラム達は、ディコの案内で直ぐ近くにあるレイエの森に入った。

 手紙の中で指定されている森の中の少し開けた場所は、ディコが友達とよく遊んでいる場所という事らしく、迷う事なく先を進む。

 ただ、やはり両親が心配のようで、(はや)る気持ちがディコの歩みを早足にさせる。


「ちょっとディコ、落ち着いて」


 それでもディコの足並みは変わらない。


「フラム、それは無理な話でヤンスよ」

「分かるけど……」


 焦りがいらぬ事にならないかと、フラムの不安が募る。

 やがて、木々の向こう側に開けた場所が見えて来た。


「あそこね」

「はい」


 更に先を急ごうとするディコを制し、フラムが先に廻ってから木々の間を抜けた。

 周りを木々に囲まれたそこは、子供達が遊び廻るには十分な広さがあった。


「ディコ!」


 飛んで来たのはディコの母親の声だ。

 フラム達のほぼ対面に位置する木々の前に、ディコの父親と母親の姿があった。

 その二人を捕まえる様にして、ガラの悪そうな二人の男が立っている。

 男達の手にはナイフの様な小刀が握られている。

 駆け出そうとしたディコを、フラムが慌てて止めた。


「あんた達、見覚えがないと思うけど、私に何か用? どうして私を知ってるの? 一体何が目的なの?」

「お前がフラムか」

「俺達に恨みはねえよ。ただ、ある人にフラムって女を殺してくれって頼まれてな」

「ある人に頼まれたですって。一体誰に? まあいいわ。見たところ、剣士でも魔獣召喚士でもなさそうだし、さっさとその二人は返して貰うわよ」

「馬鹿言え。こっちには人質が居るんだぞ」

「そうだ。お前こそ早く剣を捨てろ」

「分かってないわね。私には頼りになる相棒が居んのよ」


 ディコの両親と二人の男が居る近くに立つ木々の間からパルが飛び出し、二人の男に向かって次々と炎を吐き出した。

 炎は二人の男の顔に直撃したが、直ぐに消えてしまった。

 男達の顔は真っ黒になり、髪はチリチリになっていたが、効いた様子はない。


「何だ、このちんけな魔獣は!」


 怒った男達がパルに斬り掛かるが、素早い動きで掠りもしない。

 その間に駆け迫っていたフラムが、剣を鞘から抜きざまに男達の小刀を叩き落とした。


「さあ、どうすんの?」


 フラムに剣の切っ鋒を向けられ、渋い面持ちを見せる男達は、


「覚えてろよ!」


 よくある捨て台詞を残して森の中へと姿を消して行った。


「お父さん! お母さん!」

「ディコ!」


 駆け寄って来たディコが両親に抱き付く。


「だから言ったでしょう。無事に助けるって」

「ありがとう。フラムお姉ちゃん」

「また迷惑をおかけして、済みません」

「いえ、今回は話からして私が巻き込んじゃったみたいだから」

「フラム、居るでヤンスよ」


 フラムの肩に戻って来たパルが、森の一角を見て言う。


「居るでしょうね。私に恨みがあるなら、私の最後を見たいでしょうから。さっさと出て来たらどう?」


 フラムの声に誘われるようにして、パルが睨みを利かせる先にある木々の間から、三つの人影が姿を見せた。

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