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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第六章 邂逅(かいこう)

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 第二十三話 守護者

 軽い地響きを起こし、奥の闇の中から四つ足の巨大な魔獣が姿を現した。


「ボルドーネ!?」


 フラムの前で立ち止まったボルドーネは、咆哮を上げる。

 余りの大声に、フラムとパルは耳を押える。


「こんなのが居るって聞いてないわよ」

「来るでヤンスよ!」


 向かって来たボルドーネに、フラムは慌てて剣を抜き、噛みついて来た牙を剣で弾く。


「フラント! パル!」

「分かってるでヤンスよ!」


 フラムの肩から飛び立ったパルが吐いた炎をボルドーネが軽々と躱した所に、フラントがボルドーネの首に噛みついた。

 ボルドーネは激しく暴れ出し、フラントを振り払う。

 飛ばされたフラントは近くの壁に叩き付けられ、その場に倒れると共に、体を覆う炎が消えてしまった。

 辺りは明かりを失い、漆黒の闇に包まれてしまった。


「何も見えないでヤンス」

「喋っちゃダメ。位置を探られるわよ」


 暗闇と静寂が訪れる中、体を起こしたフラントが再び炎を纏い、明るさが戻る。


「ようやく見えるように━━」


 安堵したフラムの目の前に、ボルドーネの大きな顔があった。

 フラムの悲鳴とボルドーネの咆哮が滝の外に洩れ、外に居る人々の怪訝を誘う。

 直ぐにパルが炎を吐き、ボルドーネはフラムから離れた。


「助かったわ!」


 フラントがボルドーネに飛び掛かり、揉み合いになっている所に、フラムが駆け寄って斬り掛かる。

 ボルドーネの体がスパークし、電撃を受けてフラントは痺れつつも慌ててボルドーネから離れて電撃を逃れる。


「これでどう!」


 フラムの剣が炎を纏った。

 その剣でボルドーネから迸る電撃を薙ぎ払いつつ、ボルドーネに斬り掛かる。

 ボルドーネも再び牙を使って剣を受け止める。

 ぎしぎしと牙と剣の音が聞こえる中、フラントの横からの体当たりが直撃し、今度は飛ばされたボルドーネが壁に叩き付けられる。

 倒れ込んだ所に、パルが吐いた炎がボルドーネの頭部を包む。


「どうでヤンス!」


 勝ち誇るパルの前で、ボルドーネは悲痛な声を上げるが、激しく振るった頭部の炎は呆気なく消えてしまった。

 ボルドーネが身を低くして唸るのを見て、フラム達も身構える。

 と、その時、


「ボルドーネ、止めろ!」


 奥の闇から聞こえて来た声と共に、ボルドーネが唸るのを止めて体を起こす。


「誰か居る?」


 奥の暗闇の中から、ゆっくりと姿を現したのは、小柄な優男だった。


「僕のボルドーネとあれだけ出来るなんて、おたくやるね」

「あんたのボルドーネ? あんた何者?」

「僕はジオーネ。ある方にあっちにある剣を守れって言われててね。いわば守護者って所かな」

「それはご丁寧にどうも。私はフラムよ」

「オイラはパルでヤンス」

「おや、喋る魔獣なんて珍しいものを連れてるね」

「そんな事はどうでもいいのよ」

「どうでもいい事ないでヤンス」


 パルは肩を落とす。


「あんたが言うあのお方って剣聖の事でしょう。私はその剣聖に剣を持って来るように言われて来たのよ。素直に渡してくれないかしら?」

「君も剣聖の弟子なのかい?」

「これからだけどね」

「これから?」

「修行をつける前に私の剣の片割れを取って来いって言われたのよ」

「そうか、君が持っている剣はヴァイトなのか」

「ヴァイト?」

「聞いてないのかい? ルジェロンの十傑には名前が付けられているんだよ。で、その二振りの剣は一対でヴァイトと呼ばれているんだよ」

「へえ~、あなた随分と博学でもあるのね」

「それほどでもあるけどね」

「自信家でもあるでヤンス」

「そのようね。それで、すんなり剣を渡して貰えるのかしら?」

「すんなりとは無理かな。持って行きたいなら僕に勝ってからにして貰わないと」

「結局そうなるのね。まあ、守護者って言っていたから、薄々そんな感じはしていたけど」

「ボルドーネは使わないよ。その代わり、そちらも魔獣は使わないで貰うよ」

「一対一って事ね。パルが言った通り自信家の様ね。まあ、不正はしなさそうだし。但し、甘く見ない方がいいわよ」


 フラムは剣を構え直す。


「そちらこそ」


 ジオーネも腰にある鞘から剣を抜いた。しかし、


「何よ、その剣!?」

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