表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第六章 邂逅(かいこう)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/189

 第十九話 剣聖ウォルンタース

 ゆっくりと歩いて来るのは、杖を突いた小柄な老人だった。


「あれが本当に剣聖?」

「オイラでも勝てそうでヤンス」

「バカ言え。ああ見えて、俺が全く歯が立たないからな」

「あんたが!?」


 歩み寄って来たウォルンタースが顔を顰める。


「何じゃい、大きな声を出しおって。おお、フリードも来ておったのか」

「お久しぶりです、先生」

「うむ。それとお主は……」


 ウォルンタースの目が、フラムに移る。


「えっと、私は━━」

「そうか、お主がフラムじゃな」

「えっ、どうして!?」

「まあ、それは後にして、今はエドアール」


 名前を呼ばれ、エドアールは背筋を伸ばす。


「お前は何をしておったのじゃ? 儂は霧から魔獣が出ぬように見張っておけと言っておいたはずじゃが」

「何よ、それ。じゃあ、無駄に戦わずに済んだんじゃないのよ」

「本当だな」

「そうだったかな……」

「何を惚けておる。お前のこの頭はどうなってるのじゃ?」


 目を逸らして惚けるエドアールの頭に、ウォルンタースが持つ杖の頭が木魚のようにポクポクと打ち付けられる。


「痛い。先生、痛いですって」

「あれって、アインベルク様があんたにしているのに似ているけど、関係あるのかしら?」

「何だかオイラの頭も痛くなって来たでヤンス」


 パルも思わず頭を押さえる。


「まあ良いわ。先に魔獣(こやつ)達をどうにかする方が先じゃの」


 ウォルンタースが顔を振り向けると、魔獣達は一斉に身構え、威嚇を始めるが、ウォルンタースが一睨みした刹那、全ての魔獣が体を震わせ始めた。


「さあ、行くぞ。付いて来い。ああ、お前達はここで待っておればよい」


 フラム達にここで待つように言った後、歩み出したウォルンタースに、魔獣達は互いの顔を見合わせてから、全ての魔獣がその後にぞろぞろと付いて行った。

 

「今の何? 目を見ているだけで殺されると思った」

「オイラもでヤンス」


 フラムとパルは微かに震えていた。


「だから言っただろう。俺でも歯が立たないって」


 少ししてウォルンタースが戻って来たが、付いて行った魔獣達の姿はない。


「魔獣達はどうしたんです?」


 気になってフラムが訊く。


「元居た場所に戻しただけじゃよ。さあ、これでケーレも静かになった事じゃし、エドアールよ、ケーレの村人達に戻ってよいと伝えて来い」

「私がですか?」

「儂の見立てだと、お前だけ何もしておらんのではないのか?」

「それは……」

「だったら少しは仕事をせんかい。それが終わったら薪割りが待っとるぞ」

「はあ~、分かりましたよ」

「何じゃその返事は?」


 ウォルンタースの軽い睨みに、エドアールの背筋が伸びる。


「行って参ります!」


 エドアールは慌ててその場から駆け去って行った。


「アルファンドの王子様が随分とこき使われているのね」

「あれじゃあ城に戻った方がよかったんじゃないか?」

「でヤンスね」

「ほらほら、お主らも喋っとらんで、立ち話もなんじゃから付いて来い」


 ウォルンタースが歩み出し、フラム達もそれに続く。

 少しすると、森の中に少し開けた場所に、こじんまりとした家が建っていた。


「これが剣聖の家?」

「剣聖と言っても単なる小さなジジイじゃぞ。一人で暮らすのにそんな大きな家もいらんじゃろう」


 横手には、薪割りが途中の木が多く積まれている。


「先生は他に何か所か家があるけど、どれも似たようなもんさ」

「へえ~、意外と庶民的なんだ……」

「でヤンスね」

「何をしておる。話なら中でじゃ。ほらフリード、早く入ってお茶を用意せんかい」

「分かってますよ」

「あら、アンタまでこき使われるんだ」

「先生は使えるものは使う主義だからな」

「はようせんかい!」

「はい!」


 フリードは慌てて家に駆け込んで行く。


「かなり気難しそうな人ね」

「でヤンスね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ