カルテ726 石剣のバレオン その27
「しかし改めてみると変わった剣持ってますねあなた。この地方ではそういうのが流行っているんですか?」
いざ出立間際という段階になって、今更だが本多はバレオンの持つ石剣に食いついてきた。
「ああ、こいつか? こんなの使ってるの俺以外にいやしねえよ。ちなみに名前は『セレニカ』って言うんだぜ」
バレオンは愛おしそうに武骨な石の塊に頬ずりする。その様は、まるで大事な人間に対する様でもあった。
「ちなみに何故そんな見るからに不便そうな代物を愛用しているのか聞かせていただいてもよろしいですか?」
「確かにちと重たいのが欠点だが、上手く扱えばさっきやったみたいに凶暴な熊だって一撃で倒せるぞ。で、使用している理由ってのはおおむね三つあるが、一つ目はそりゃこんなの使っていれば自ずと有名になるからよ。俺は自分の武勇伝が、ここグルファストはおろか、世界中に広がるのが夢なのさ」
「ホーっ、そりゃまた稀有壮大な夢ですねえ。僕もそんな伝説上の人物になってみたいもんですよ」
「いや、あんたすでにそうなってるから! 伝説の『白亜の建物』だろうがここ!」
本多のとぼけっぷりに、元来ノリの良いバレオンはつい突っ込んでいた。
「ハハ、そちら側ではそうかもしれませんが、こっちの方では本多医院なんてなんの変哲もない単なる町医者なんですよ。不思議なもんですけどね」
「そうか、あんたも意外と苦労してそうだな……」
察しの良いバレオンは、同じ中年男として彼にシンパシーを感じていた。
「で、後二つの理由ってのはなんですか? 僕、気になります!」
「フフ、そいつは秘密にさせてもらうぜ。その方がミステリー的で深みが出るってもんだからな。まあ、賢そうなあんたにならバレバレかもしれんが……」
「全然わかりませんよ! ヒントくらいくださいよ!」
「ヒントだと?うーん、二つ目は見りゃすぐわかりそうな気がするが……そうでもないのか?」
あまりクイズを出し慣れていない大男は、ポリポリと頭をかいた。




