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カルテ723 石剣のバレオン その24

「おお、とっても見違えましたね! 完全無欠のザ・山男ですよ!」


 本多はドレスアップしたバレオンの艶姿をじろじろと確認し、満足気にうなずいた。


「な……なんだか奇妙な格好だが、これで本当に大丈夫か?」


 心配そうにバレオンがつぶやく通り、彼は今や奇妙奇天烈な格好となっていた。速乾性の長袖のシャツやインナーの上に赤と白色のストライプの派手なスキーウェアの上下をまとい、頭部にはモフモフの熊さんの頭を模した黒い毛糸帽子を被り、脚には古い登山靴を履き、ビニールシートや食料や飲料水などの他に鎧まで押し込んだ大きな荷物袋を肩に下げている。


 それだけならばまあまだかろうじて許せそうだが、身の丈を超える巨大な石の黒剣と、腰からぶら下がった二十メートル近くある長い黄色い紐が統一感を完全無欠に破壊し不協和音を奏でていた。


「まあ、これだけあれば何とか雪山登山自体はいけるんじゃないかと思いますよ。古着とはいえこれらの防寒具は日本海側の冬山の地獄の豪雪にも耐えた、いわゆる伝説の装備ですからね。後、登山靴の底につけるアイゼンとスノーシューは状況に応じて履き替えてください。どれも名うての勇者じゃなかった山男だった爺様の愛用品なので効果のほどは折り紙付きですよ」


 本多は自分の手柄でもないくせに自慢げにうそぶいた。


「でも確かにすごそうだな、これ。まったく寒さを感じないぜ」


 バレオンは腕を動かしたりして感触を確かめつつ、異世界の技術に驚嘆していた。さっき試しにドアを開けて外気に触れてみたが、先ほどまでの山での体感気温と比べたら月とすっぽんだった。何の素材だかまったく不明だが、重い毛皮の服などよりも軽く、しかも着心地が良い。少し変な臭いがするのだけはちょっと気になったが、使っていれば直になれるだろう。


 本来は治療費を払うべき立場なのにこんな物まで譲ってもらうのはさすがにどうなんだとは彼自身思わないでもなかったが、今は新装備の素晴らしさの方に心を奪われていた。

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