カルテ722 石剣のバレオン その23
「まあ、そうガンガン言わんでくれよ。これでも結構用意して……」
「言い訳無用天地無用! それに寝袋にしてもだいぶ貧弱ですよ。さっき荷物の中を拝見させて頂きましたが、羽根も入っていないただの毛布を適当に丸めただけじゃないですか! これじゃ凍死しますよ!」
「作るのかなり大変だったんだがなあ……」
バレオンは自分で納得のいく物が欲しかったため頑張って手作りした寝袋の入った袋を悲し気に見つめた。
「そういう問題じゃないですって! 確かに昔の山好きの学生も自分の安布団を封筒状にチクチク縫って持って行ったって言いますけど、重いし寒いしでろくに眠れなかったと聞きます。それこそこんな天候では足を引っ張るだけですよ」
「そうかなあ……」
「そうなんです! こっちの世界じゃ防寒用具はナイロン製やゴワテックス製、ミリテックス製とかどんどん新素材が使われており、便利になっているそうです。マットにしても、うちの爺様の若い頃は代わりに炭俵を背負って登ったりしたそうですが、今時はもっと良い物が使われています」
「はあ……」
バレオンは本多の口からポンポン飛び出す呪文のような謎単語に圧倒されつつも、謎の説得力を感じ、ひたすら聞き入っていた。
「まあ、ここでグダグダ言ってても始まりませんしね。えーっと、確かあのおっぱい好き……じゃなかった山好き爺様の遺品がどこぞに眠っていたはずなんで、後で色々差し上げますよ」
「ええっ!? なんでそんなものがこの建物内にあるんだよ!? おかしいだろ!?」
バレオンは驚愕の声を上げた。ここは病気を治す建物であって、登山者のための設備ではないはずだ。
「だって仕方がないじゃないですか。その爺様ってのは先々代のここの院長様だった人なんだから。だから一応うちのレガシーなんですよ。山好きの変な医者ってのは昔から一定数いるんですよね」
本多はこともなげにそう告げた。




