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カルテ718 石剣のバレオン その19

「……ん? 俺は一体……どうなったんだっけ?」


 何だか身体全体に妙な圧迫感を感じ、バレオンは薄っすらと目を開けた。両腕を動かそうとするも、縛られているかのようにうまくいかない。そこでようやく全身を布団でぐるぐる巻きにされた状態であることを思い出した。どうやら所々記憶が抜け落ちている。視界には、彼を覗き込むもじゃもじゃ頭の白衣姿の中年男が、まぼろしのようにぼんやりと映っていた。


「気がつきましたか。いいですか、落ちついて聞いて下さい。あなたは……助かりました」


「おい!」


「メタルギャー!?」


 布団の隙間から抜き取った手で、間髪入れずに問答無用で放たれた鋭いバレオンの手刀がもじゃ公こと本多の首筋に横殴りに叩き込まれた。


「ちぇすとおおおお!? そこは人体の急所の一つなんだからやめてよバレオンさん! マジで脊椎損傷になっちゃうよ!」


「ふざけていないでとっとと状況を話してくれ。俺はどうなったんだ?」


「だって一度やってみたかったんよ!」


「もう一発速やかにお見舞いして、永遠に胴体と首が泣き別れになってもよろしいか?」


「それは医者Aと医者Bになっちゃうから本当にやめて! というわけで、吐き気とか不快感とかありませんか?」


 首元を手でさすりながら、やかましい医者は口調を改めると、真顔で語りかけてきた。


「あ、ああ……大丈夫だ」


 とりあえず自分の状態を確認し、彼はそれだけ答えた。


「それは良かったです。偶発性低体温症の症状って最初は震え程度なんですが、徐々に疲れや眠気が生じ、最終的には昏睡状態となって呼吸数や心拍数の低下が進んで死に至っちゃいますから……って、おっと、状況説明がまだでしたね」


 先ほどの衝撃を思い出したのか、医師は首をすくめた。


「でもそんなに大したことは言えないんですが、っていうかむしろ僕の方が説明してほしいんですが、ここ、すなわちあなた方のいうところの白亜の建物こと本多医院が停電した後、あなたが八甲田山みたいな感じで身体中雪まみれでうちの玄関先に意識不明で倒れていたんで、必殺じゃなくて秘技・人間海苔巻きでもって全身をホッカホカにしたところ、見事体温が正常に戻ったってわけです。さーって、今度はあなたの話すターンですよ」


「あの、伝説の白亜の建物だと!? やはりそうなのか!?」


 バレオンは目を丸くし、本多は糸目を更に細めた。


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