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カルテ717 石剣のバレオン その18

「僕の爺様はここよりもう少し北国の出身で、そこに全世界でトップの死亡者数を誇る魔の山がありましてね。冬季の山小屋ではしょっちゅう雪崩に巻き込まれかけたり遭難した登山者が救助隊によって担ぎ込まれてくることがあったそうですよ。んで、そういう時はどうするかというと、事前にお米を大量に炊いておくんです。意味わかります?」


「……」


 これにはさすがの豪傑も押し黙った。


「さて、いざ瀕死の救助者が山小屋に運び込まれてくると、まずこうやって力を合わせて人間巻き寿司を布団などを使って作り、一気に全身を温めたんですってさ。何しろヘリコプターっていう空飛ぶ便利な機械もない時代だからふもとの病院まですぐ運ぶことも出来ないし、即その場で温めるのが一番手早かったそうですよ。子供の頃初めて聞いた時すげえインパクトがある話だったんでびっくりしたけど、おかげで覚えていてよかったわ~。


 もっとも昔は、『また爺ちゃんのウソ話だろう』なんて思ってたけど、でもよく考えたら、密閉されたお米は保温性に優れているし、塗れたりしないんでこういう場合保温材として非常に有用なんですよ。いやぁ、人間様ってのは医療機器が何もない場所でもいろいろと知恵を絞るもんですね~。よいしょっと」


 なんとかかんとか苦労して男を簀巻き状態にしながら、本多は話を続けた。


「……それは理解できるんだが、まず手足をお湯で温めた方がよくないか? 確か先端部の方が先に冷えるはずでは……」


 バレオンは以前山で耳にした豆知識を口にした。


「おっ、よくご存知ですね~。その原理は確かにそうですけど、そのやり方だと、末端部の冷えた血液が心臓の方に戻ってしまい、かえって体温が下がってしまうので、今では危険だとされているんですよ。まずは中心部を温めるのが先決ってわけですね」


「なるほど……そうだったのか。しかしその使用した米は口にして大丈夫なのか?」


「そこまでは知らないよ! その後スタッフが美味しくいただくのかどうかわかんないし! なんかオヤジが脇の下で握ったおにぎりみたいな味がしそうで嫌なんですけど!」


「冗談だから真に受けないでくれ……」


「あなたの冗談はわかりにくいよ! うごおおおおおおお!」


 簀巻き寿司を作りながらも本多は突っ込み続け、その叫びを聞きながら、身体が温まってきたバレオンは、徐々に眠くなっていった。

皆様新年あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!

お正月なので特別更新です!よって次回は金曜日でなく土曜日の1月3日更新になります!では、また!

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