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カルテ704 石剣のバレオン その5

 文字通り天地を貫く凄まじい爆音が盛大に鳴り響いたかと思うと、本多医院の全ての電気がフッと消え、室内は暗闇に包まれた。


「ウギャーッ! 沸騰した味噌汁がああああああ!」


 驚いた表紙に鍋の中の物が腕にかかったのだろう、本多が情けない悲鳴を上げた。


「そんなものはとっとと水道水で冷やしてください、本多先生。しかし、これは一体……落雷による停電でしょうか?」


「どう見ても100%そうだよ! 水うううううううー!」


 うるさい叫び声を発しながら本多は蛇口まですっ飛ぶと、両腕に滝行のように水を浴びせた。


「どうしましょうか、先生? これでは明日患者さんがお見えになった時、とても困りますね……」


「確かどっかに配電盤があるはずだから、ブレーカーとか上げれば直るんじゃないの?よく知らんけど」


「まったく、自分のクリニックのことぐらい把握しておいてください。これでしょうかね?」


 早くも廊下でそれらしき物を発見した優秀な看護師が、蓋を開けてブレーカーを上げるも状態はまったく変わらず、世界は漆黒の闇に覆われたままだった。


「おかしいですね……でも、とりあえずもう終業時刻を過ぎているので帰らせていただきます。後は何とかしてくださいね、本多先生」



「ええっ、そりゃひどすぎるよ! 後十分だけでいいからお願い! 待ってプリーズ!」


「ではさようなら」


 院長が直々に泣いて嘆願するにもかかわらず、村井ナースはスマホの明りを利用してさっさと荷物をまとめると、これ以上天気が悪化しないうちにと立ち去っていった。


「あーあ、行っちゃったよ。しっかしどうしたもんかねえ。ひょっとしてもうあっちの世界に移動した後なのかな? でも、たとえ異世界に転移したとしても電気系統は何の問題も無いはずなのに……いや、正確に言えば転移じゃなくて、あの状態はこっちの世界と異世界の狭間に位置しているので、どちらの世界とも繋がっているってわけだけどね。その証拠に水道はちゃんと繋がってるし。おそらく電線でも切れたんじゃないかな?」


 闇の中に残された本多は、気を紛らわすためかブツブツ独り言をつぶやいた。


「とにかく今は一刻も早く何か灯りを探さなければ……おやっ?」


 気を取り直した本多だったが、窓の外の風景に異変を感じ、微かに驚きの色を声ににじませる。


「これはちょっと凄いわ……」


 なんと、外は一面の銀世界で、ブリザードが吹き荒れていた。

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