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カルテ625 怪球カマグ(前編) その13

 その区画には、何だかよくわからないがらくた類や古い器具が雑然と置かれていた。そして最奥には彼女が仲間と共に苦労して運んできた、あのハイ・イーブルエルフが謎の球体によって変じた銀塊がさながら薪のように大雑把に積み重ねられ、炉の光を受けて鈍く銀色に光っていた。ただ、それだけならば別段彼女が驚愕する必要はない。それらは恐るべきことに……


(ああ……これは一体……!?)


 それらの表面には一様に、何か鋭利なもので削られたような傷跡がくっきりとつけられていたのだ。おかげで彫像たちはまるで包丁で皮を剥かれた野菜や果物のように凸凹しており、ふた目と見られないおぞましい姿と化していた。これでは万が一銀化が解けたとしても、無事ではすまされないだろう。


(あれらを符学院まで運搬した時点では、過酷な道中で多少傷がつくことはあったかもしれないけれど、少なくともこんなひどい状態では決してなかった……じゃあ、誰が、何のためにハイ・イーブルエルフの表面なんかを……って、ハイ・イーブルエルフの表面!?)


 そこまで考えた時、目まぐるしく動き回る彼女の脳が突如ひらめき、視線を再び先ほどの位置に戻す。時計の鐘の音のごとく相変わらず規則正しく生じる鎚音の下、徐々に引き延ばされ形成されていく金属の剣は、今は溶岩の如く赤々としてはいる。だが、もしかして、その元の色は……


「ま、まさか……その学院長の作られている剣の原材料というのは……!?」


 彼女は震える手で、部屋の隅のボロボロになった斬新的な金属の置物類を指さす。


「ほほう、ようやくそれに気づいたか。さすがは腐っても歴史ある我が学院の教師なだけはあるな」


 銀色の仮面がふいに顔を上げ、彼女を正面から見据える。どうやら彼女の推測は大正解のようであった。だが、彼女はさして嬉しくはなかった。何故なら間断なく続いている金属音に混じり、無数の断末魔のような声が地獄の底から立ち昇ってくる錯覚に襲われたから。

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