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カルテ596 牡牛の刑(後編) その47

「おーっ、こりゃまたどなたかと思ったら、童貞パイセンじゃねーっスか! こんなところで出会うなんて珍しいっスね!」


「……おい、人前で童貞だのなんだの言うな!」


 夜更けに酒場の隅で一人陰気に馬の小便みたいな味のエールを飲んでいたホーネルは、露骨に嫌な顔をした。完全に出来上がったケルガーが、一緒に飲んでいた仲間たちと離れてこちらの席に近づいてきたからだ。


「なーんで一人っきりなんスか? 女にでも振られたんスか?」


「うっ」


 ホーネルは思わず口にしていた酒を吹き出しそうになった。別にケルガーの指摘が正しかったからではないが、あながち間違ってはいなかったからだ。以前街で見かけて気になっていた美女が、実はすでに恋人がいるという情報を知って、気を紛らわせるために慣れない場所に憂さ晴らしに訪れたのであった。


「こっちに来て一緒にやりましょーよ。そんな陰にいるとち○ぽにカビが生えるっスよ?」


「いらんお世話だ! ほっといてくれよ。一人でいたい気分なんだ。てか貴様かなり酔っぱらっているな。しっかし相変わらず女にもてる奴だな……」


 瓶をテーブルに叩きつけて怒りを表明しながらも、ホーネルの目線はつい後輩の元いた席へと向いていた。


「おっ、うらやましいんスか、童貞パイセン?」


「だから童貞童貞言うな! 別にうらやましくなんかないし!だ、だが……」


「おっ、どうしたんスか?」


 急に小声になったホーネルに対し、ケルガーが怪訝そうに尋ねる。


「だが、どうすれば貴様のようになれるのか、少しくらいなら聞いてやってもいいぞ……」


 相手がへべれけなのをいいことに、ホーネルの食指が動いた。以前からこのスケコマシの後輩のテクニックを知りたいと思う好奇心はあったのだ。


「なーんだ、んなもん簡単なことっスよ! いくらでも気になる相手に声かけりゃいいだけですって! なんでもやってみなけりゃ結果はわからねえってことっス……オゲエエエエエエエエーっ!」


「き、貴様、こんなところで吐くなああああああああああ!」


 熱弁を振るっていたケルガーが突如テーブルの上に胃の中身を全てぶちまけたため、逃げ場のないホーネルは絶叫するしかなかった。

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