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カルテ522 エターナル・エンペラー(後編) その89

「未熟者なのでどうもすみません。ですが、すると現在は誰の魂が……?」


「おっと、質問はこちらがする約束じゃぞ。それでは早速第2問といこうかの。それがしがクモ好きなのは知っていると思うが、それを別にしてもそれがしの紋章がクモなのは一体何故じゃ?」


 骸骨が横から口を挟みつつ、白墨のごとき指を二本立てた。


「そ、その質問は、さっきこちらがしたものでは……!?」


 テレミンは思わぬ不意打ちのブーメラン攻撃を食らって喉が引きつりそうになった。


「そうじゃ。知らんかったか? 一流の研究者たる者は自ら考えた問題を独力で解くものだということを。もっと簡単に言えば、『自分の尻は自分で拭け』ってことじゃな」


「尻ですって!?」


 すかさず腐れ毒魚が反応したため数人がかりで取り押さえる物音が背後で繰り広げられたが、テレミンはシンキング・タイムの真っ最中でそれどころではなかった。


(確かにこれは己の力で解くべき問題だ。だが、今までの流れから、ある程度答えの骨子は既に出来ている。これで間違いないはずだ!)


 彼の細い指先は自然と、室内を飛び交う金の天使を指していた。


「これを捕まえたかったんでしょう?」


 その瞬間、ビクッとドクロ頭が反応したため、少年は胸のすくような思いを感じた。ビンゴだ。


「クモには自らに花のような模様をまとって蝶をおびき寄せて捕まえるタイプのものもいます。あなたは幼少期、黄金蝶を捕まえようとするも、結局望みは叶わなかった。ならば自分の代わりにそれが可能な存在としてクモに注目し、いつしか研究するようになった……違いますか?」


 推測を答弁しながら、先ほどの部屋でのひと騒動が鮮明に浮かんでくる。寒いところで生息するクモが獲物とするもの、それはやはり同じ地域に住むものに違いない。


「またしても正解じゃ! まったく、お前さんは一体何者なんじゃ!?」


 骸骨はすかさず両手を合わせる。何だか孫の活躍を見学しているお祖父ちゃんみたいだと取り押さえられ中の腐れ邪妖精は思った。


「おっと、拍手の前に一つお願いがあります。すみませんが、あなたの人生についてもっと聞かせてください」


 テレミンは寝しなに母親に物語をねだる幼子の顔で骸骨に懇願する。出し惜しみされて、続きが気になって仕方がないのだろう。


「ま、良かろう。どうせあと一息じゃ」


「ありがとうございます!」


 こうして終わりの始まりが開始した。

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