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カルテ494 エターナル・エンペラー(後編) その62

「じゃあ、とりあえず飯でも食いながら一緒に話すか、ボウズ?」


「ここは初めてか? 肉料理が絶品なんだぜ! ついでにおばちゃんもお勧めだぜ!」


 しつこく食い下がるラミアンに根負けし、男たちもようやく同じ席について話す態度を見せてくれた。


(そうか、あのホンダ先生の出てきた夢はこのことを指していたんだ!)


 夜の酒場の喧騒に包まれながら、今こそラミアンは謎の予知夢の意味を正確に悟った。いや、あれは彼自身が、心の深層ではどうやって金欠の危機を乗り越えるべきか既にわかっていたのだが、路傍の石のごとくそれに気づくことがなかったため、夢という形で表出化し、意識を向けさせたに違いない。兎にも角にもお告げのお陰で、彼は今後偽薬草師を演じる方向に鋭角に舵を切った。


「で、何を注文するんだボウズ? 言っとくが金は自分で払えよ」


「承知してます! もう選ぶものは決めています!」


 店のメニューをずらりと書き記した一枚板をじっくりと見つめていたラミアンの瞳は、ある特別な料理を見逃さなかった。それは、今の彼にとっては宝物庫に眠る門外不出の宝玉よりも輝いて見えた。彼は真っ直ぐ挙手すると、威勢良くこう声を張り上げた。


「すみませーん、店員さーん! 『豚肉のレバー炒め 季節の香草あえ』を一人前お願いしまーす!」


「おう、やっぱ豚を選ぶか! 見る目があるな!」


「そうそう、人のお勧めは聞くもんだぜ、ボウズ!」


(別にそういうわけじゃないんだけどな……)


 ラミアンは手を上げたまま、苦笑いを噛み殺した。



 教えてもらったファボアール邸は街の目抜き通りに位置する豪邸だった。酔っ払い2人からの受け売り知識によると、何でも珍しい雑貨や貴重な調度品、高価な家具などを他国と輸出入して一代で財を成した豪商らしい。薔薇を象った鉄製の門扉を潜って百花繚乱の広い庭園を突き進むと、豪奢な三回建のクリーム色をした建物が高い木々の梢の間から姿を現した。最上階にちょこんと突き出した可愛らしいデザインのベランダは、なるほど深窓のご令嬢が深夜に愛を囁いてもおかしくないと夢想するほどの優雅さだった。


(いよいよだ。失敗は許されないぞ……!)


 ラミアンはゴクリと唾を飲み込むと、黒スーツ姿の執事の案内で玄関ホールへと歩を進めた。

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