カルテ422 幸運のカルフィーナ・オーブの災難(前編) その13
「エリザス、あなたは私を助けると誓ったんでしょう? これくらいのピンチ、今持っている情報を最大限に活用して解決してみせなさい。その程度の覚悟だったの?」
「ね、姉さん……」
「さあ皆さん、とりあえずカナリアちゃんの身体を寝かせてあげましょう。でも、血を飲み込まないように顔は横向きにしてください」
エミレースはてきぱきと指示を与えながらもエリザスの問いには答えず、うやむやにするばかりだった。エリザスはブーメランのごとく戻ってきた言葉の穂先に胸をえぐられるも、何とか落ち込みを脱し心を切り替えることに努めた。
(そうね、もう昔と違うんだし、姉さんばかりに頼っちゃダメだわ。私がもっとしっかり考えなくちゃ……!)
彼女の脳髄はこの場にいる誰よりもめまぐるしくフル回転し、今まで見聞きしたり経験したり本で読んだありとあらゆる知識を検証していた。必ずどこかにこの危機的状況を打破する糸口があると信じて……。
(確か……いつかどこかでこれとよく似た話を聞いたことがあったような……でも何時、何処で?)
エリザスの瞳は横たわる小さな病人を見つめ続けながらも、意識の半分は別世界の迷宮を彷徨っていた。その深奥に眠る秘宝こと値千金の知識の泉を目指し、恐る恐る暗闇をうかがうが、ゴールは遠い彼方だった。だが、僅かな希望と閃きが、彼女の足を前に動かした。
(ええと……確か少し前に何かひっかかる会話があったような……)
行く手を阻む茨の蔦や様々な罠、そして襲い来る怪物たちを排除しながらも彼女は突き進んでいく。何か現実世界で聞いた言葉が秘密の扉を開けるためのキーワードだった気がするが……喉の奥で小骨が引っ掛かっているような感覚が実にもどかしかった。だが、その比喩表現が食事を連想させ、思考を繋げるきっかけとなった。
(待てよ、あれはさっきピートルくんが帰る直前に、今日の夕ご飯に食べるとか言ってた……ハッ!)
真理の探索者たる彼女は、ようやくとある賢者のつぶやきを、迷路の壁に残る微かな記憶の糸から探り当てた。
(そうだ、白亜の建物の……ホンダ先生!)
皆様良いお年を!
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