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カルテ338 ライドラースの庭で(後編) その8

 グルファスト王国の首都ドグマチールの東南には、ランデルという大きな街がある。交通の要所に栄えたその街は活気に満ちており、荒くれ男たちが多かったが、そこで道具屋を営むスオード・コンレイは物腰が低く人当たりの柔らかい性格で、ほぼ誰からも好かれていた。父の跡を継いだ二代目ではあったが、真面目で仕事もしっかり出来るため他人からの信用があり、更に「道具屋コンレイ」はランデルの目抜き通りに店を構えており、立地の良さと品ぞろえの豊富さもあって繁盛していた。


 そろそろ結婚して跡継ぎを作らなければ、と長年人に言ってはいたが、たまに娼館に行けば満足してしまうので積極的に結婚する気にもならず、日々の生活や仕事の忙しさにかまけて40までズルズルと独身のまま来てしまったある日、彼の身に思わぬ異変が生じる。最初に、左首の辺りが少し腫れているな、と髭剃りの時に気づいたのは今から数カ月前だった。そんなに目立つものでもないし、別に痛くもかゆくもないので、放っておけばそのうち勝手に治るだろうと大して気にもせず放置していた。


 それが日を追うごとに二個、三個と次第に数が増えてきて、やがて火傷でもしたかのように赤黒く変色し、盛り上がって来たのだ。さすがにまずいと焦った彼は、今更ながらこすったり叩いたりしてみたが、何の効果もなかった。あまりにみっともないため商売のつてで手に入れたフード付きの服を常に着るようになるも、亡者のような陰気な姿に客足が徐々に減ったので、仕方なく従業員を雇う羽目になった。


(自分が一体何をしたというのか……そもそも何故こんなことになったのだ!?)


 一人懊悩する彼は近くの薬草師の元を尋ねるも何の手立てもないとそっけなく言われ、徒労に終わった。病に効果のあると噂の温泉に逗留するも、変化は欠片もなく無駄だった。幸いなことに熱や痛みはないため日常生活に差支えは無かったが、人前に出るのが苦痛で仕方がなかった。商売人としては致命的である。


 そんな生き地獄のような日々を送る中、心配になって彼の元を訪れた友人から、ある耳寄りな情報を聞きつけた。なんでもドグマチールのライドラース神殿は普段は外傷の患者しか診ないが、非公式に彼のような謎の症状の者たちの治療を行っている、という噂だった。

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