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カルテ265 エターナル・エンペラー(前編) その10

「しかし失礼ですが、あなたエルフにしては、お胸が満月のように大きいとは珍しい……」


「ダオニールさん! それは本当に失礼ですよ!」


 後方からフィズリンガ大声で制し、瞬時に周囲の空間に緊張がみなぎった。


「す、すいません。つい……」


「ま、まあ、気にするな。よく言われることだ」


 ミラドールの白磁のように白い肌に筆で刷いたように朱がさしたのは、彗星のせいだけではなさそうだった。


「でも、確かにダオニールさんの言う通りですね。まるでイーブルエルフみたいで、なんとも奇妙なバスト……」


「なによ、テレミンまで!」


 旅の一行の知恵袋的な博識の少年もつられて興味を示したため、今度は更に後方のルセフィが声を荒げた。


「ご、ごめんなさい。純粋に学術的に興味があって……」


 老執事と少年が本体とその影の如くシンクロしながら頭を下げた。


「フフフフ、ちょっと面白そうな連中ねー。皆まあるいモノが好きなのねー」


 登山側の最後尾のイレッサがフードの中でほくそ笑みながら、前方のシグマートの尻を撫でる。


「やめてくださいよ色ボケオカマ野郎じゃなかったイレッサさん! つい転倒しそうになったじゃないですか! それに笑っちゃ気の毒ですよ!」


「あら、つい触りやすそうな丸いものが手近にあったのでごめんあそばせー」


「ったく……あっ、そうだ! こんな雪道の途中で悪いんですけど、是非聞いておきたいことがあるんです!」


 シグマートはミラドールの脇からひょいと身を乗り出すと、うなだれたままのダオニールに話しかけた。


「おや、護符師の方ですか? 随分お若そうですが、どうしましたか?」


「あなた方は山から下りて来たということは、運命神のお告げ所で、カルフィーナ様のご宣託を戴いてきたということですか?」


「はい、そうですが……」


「おお、やっぱり!」

  

 少年の双眸に好奇心の火が宿り、メラメラと全身に燃え広がっていった。


「お察しの通り、僕はシグマート・オーラップという護符師です。出会ったばかりで恐縮ですが、もしよければどんな内容のご宣託だったか、話せるところまででいいですから、是非とも教えて頂けませんか?」


「……ええっ!?」


 思わぬ申し出に、ダオニールは困惑気味に背後の仲間たちを振り返ったが、皆同様に困った表情を浮かべており、誰も即座に返答できなかった。


「……」


 二組の深夜の旅のグループの間に気まずい空気が流れ、地上の些事とは一切関りを持たぬ壮大な天体ショーのみが滞りなく進行していった。


 凍ったような時間の中で、ダオニールはミノタウロスとの激戦の日の後に起こった奇跡的な出来事を思い返していた。

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