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カルテ244 伝説の魔女と辛子の魔竜(後編) その25

「で、話の続きですが、急性白血病の他の症状としましては、増えすぎた白血病細胞が骨髄から溢れ出してどんどん体中に広まっていろんな臓器に浸潤するため、歯肉腫脹やリンパ節腫脹、肝臓や脾臓の腫大などが起こります。んで、急性リンパ性白血病ではリンパ節腫脹や肝脾腫が起こりやすいんですが、急性骨髄性白血病ではわりと少ないんですよ。このように、白血病ってのは意外に診断しやすいんです」


「ほほう……」


「ははあ……」


「……ああ、それでピートル君の口の中やお腹をよく見ていたわけですね」


「最初からそうパッパと進行すればいいのです」


 一同は口々にうなったり納得したり猛省を促したりして、張り詰めた空気がやや弛緩した。その間も、あたかもバックミュージックのように本多の演説は垂れ流されていたが。


「白血病は10万人中6~7人程度と、頻度は少ない疾患ですが、本や映画やテレビドラマ……つまり演劇みたいなものでは、しょっちゅう見かけましたね。何故なら昔は治療法がわからなくて不治の病と言われていたので、いわゆる難病ものとか、悲劇を作るのに都合がよかったからです。古いものでは赤いシリーズの『赤い疑惑』の山口〇恵、最近だと『世界の中心で、愛をさけぶ』の長澤ま〇みなんかが有名です。もっとも僕自身は難病ものや医療系ドラマなんかは見ていると突っ込みまくっちゃうんで最近敬遠気味ですね。


 以前元嫁と一緒にテレビ観賞していた時、『なんであんな街中なのにすぐに救急車で脳出血患者運ばずに工事現場に落ちてるドリルなんかで頭に穴開けだすんだ? あの医者感染症とか怖くないの?』とか『中学生の初産婦が前置胎盤ってそりゃおかしいでしょー! あれって高齢出産とか多産婦の病気だよ?』とか非常にうるさかったもんで彼女にすげえ怒られましたが、あれが離婚の遠因だったんですかねえ……いけねえ、涙が出そうになったんで話を元に戻しますと、白血病にかかった有名人は、昔の映画監督の溝〇健二氏や、三蔵法師役でおなじみの夏〇雅子さんや、80年代アイドルの本〇美奈子さんや、最後のお侍で有名な渡〇謙さんなんかがいますが……」


 本多のスピーチのいかれっ振りがいつも以上におかしい、としょっちゅう朝まで生講義に付き合わされそうになるセレネースは訝しげに彼を見つめた。明らかに何か言いたくないことを隠している。雑談を無限に長引かせ、話が終了するのを先延ばしにしているのだろう。途轍もなく嫌な予感がした。


「先生、それはもういいですから、結局うちの息子は治るんでしょうか?」


 講義時間のあまりのオーバー振りにしびれを切らせて再び不穏状態が悪化した村長が、沸騰した薬缶のように頭から湯気を上げて本多に吶喊し、壁際まで追い詰めた。


「か、壁ドンだけはお許しをををを! バツイチだけど清い身体でいたいんです!」


「だから結論を早く言ってください!」


「わ、わかりました。白血病全体から見ると小児の急性リンパ性白血病は結構予後が良い方で、現在では6~8割が治ると言われます。ただし、薬やら何やらがあればの話ですが……」


「ですから、それはあるんですか?」


「そ、それは、その……いやー、今日はちょっとばかり暑いですねー」


 迫りくる進撃のタコ入道を前に、腐れ医師の眼が泳ぎ出した。

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