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カルテ241 伝説の魔女と辛子の魔竜(後編) その22

 一瞬時が止まったかのように沈黙が訪れた後、


「「「「えええええええええええええっ!?」」」」


 四人の絶叫が合唱となり、洞窟のあちこちにワンワンと反響する。あまりの喧騒に、小さなコウモリが数匹驚いたかのように上空を飛び回ったほどだ。


「はい、わかりました、エミレース様。仰せのままに」


 対する従僕は微塵も嫌がる素振りを見せず、今までずっと被っていたフードを威勢よくパッと払いのけると、スルスルとその場にローブを脱ぎ捨て、その下に着ていた物も全て取り去っていく。それはあたかも美しい蝶が蛹から脱皮するかの如く、至極自然な行為にすら思われるほどの優雅さだった。その場のオーディエンス全員が言葉を忘れ、鋭い鍾乳石の先端から時折落下する水滴の音が、やけに大きく感じられた。


(……エミレース姉さんはいったい何を考えているのよ、こんな衆人環視の中で女性にストリップさせるだなんて!でも、そういえばこの人はいったい何者なのか、確かに興味あるわ……)


 最初は姉の破廉恥極まる無茶振りな命令に、他人事ながら憤っていたエリザスだったが、自分の魔眼を易々と受け止めた謎を解明したいという内なる欲求に駆られ、不本意ながらも、つい最前列でかぶりつき状態となって、禁断の情景に見入ってしまった。エナデールは両手を交差して胸を覆い隠してはいるものの、その豊満な肉体は内から光を発しているかのように蠱惑的だった。なお、フードの下からようやく全貌を現した額には、硬貨大の褐色調の瘢痕があった。


(うわ、私よりも結構ありそう……彼女ってば着痩せするタイプかしら……ってそうじゃないだろおい! 謎を解くんでしょうが謎を! そういえば、今までもう一人だけメデューサの石化能力が効かなかった人がいたような……あれは、えーっと……)


 理性を失わないよう自分を律しつつ、記憶の泥沼を引っ掻き回しているうちに、急に何か固い手ごたえがあった。


(そうか、白亜の建物だ!)


 あたかも鉄仮面を被っているかのように無表情だったが、聡明かつ大胆で的確に指示を出してくれた彼女の命の恩人、赤毛の受付嬢兼看護師セレネース。あの新月の夜、彼女は確か涼しい顔でこう言っていた。


「詳しいことは申し上げられませんが、私には状態変化系の攻撃は無効なのですよ」


(エナデールとセレネース……二人には、何か意外な関係がある!?)


 水源と湧水がたとえ遠く離れていても、地下深い水脈で結ばれているような、そんな目に見えない奇妙な繋がりを、その無機質な態度以上に両者の間に存在するように、エリザスには察せられた。


「うわ、まぶしいニャ!」


「な、なんじゃいあれは!?」


「……護符、のようだな。あんな変わったやつは初めてお目にかかるが」


「!」


 騒がしいギャラリーのせいで我に返ったエリザスは、両手を身体の横にくっつけた全裸のエナデールを一目見るなり、度肝を抜かれてしまった。ぬばたまの夜のように艶やかな黒髪を纏わりつかせた起伏のあるまことに女性的な裸身はあたかも古代の優れた彫刻のようだった。ただし、その深い胸の谷間には、一片の虹色に光り輝く護符が、まるで心臓を守護するかのように貼られていたのである。


(あれは……まさか、特殊護符!?)


 符学院で耳にした噂話が脳裏を駆け巡り、エリザスは戦慄した。

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