ガチャ93 なんとかするんだ。一緒にな
お待たせしました!
ワープと聞いたエリーの顔に安堵が広がっていく。
(そうだ! リュウ兄さんにはワープがあったじゃない! これなら、予定より早く戻れる! 薬もあるし、絶対にお父さんとお母さんを助けられる!!)
エリーは、自分の両親の為とはいえ、リュウが入手不可能と言われるマジックアイテムを躊躇なく使ってくれると言ってくれたことで、胸がいっぱいになった。
「……リュウ兄さん! ありがとうございます」
精一杯大きな声を出しながら、エリーは熱い眼差しをリュウに送った。
リュウはエリーの声から伝わる想いを感じて口角を上げた。
エリーをそのまま抱きしめてやりたいところであったが、時間に然程猶予があるとも思えかった。
リュウは表情を消すと、ファラに視線を送った。
「ファラは猿共を頼む!」
ファラは返事代わりに飛び上がり、全身を炎で包み込んだ。
纏う業火が一際大きく燃え上がると、飛龍に戻ったファラが空中で翼をはためかせ、炎を散らしていく。
救出してもらった際にファラ本人から飛龍族だと聞いていたエリーであったが、改めてファラが飛龍になっていくのを間近で見て、
「……フ、ファラさんって、本当に飛龍なんですね。綺麗だけど、ちょっとコワいです」
と、思わず声を漏らさずにはいられなかった。
エリーの呟きを聞いたダリアは、
「そうね」
と、頷いた後、Cランクの腕前を持つからこそ感じられる、ファラの強力な力の波動に冷や汗を流す。
「これで、人間に化けたら美女なんだから、困ったものだわ。強力なライバルが2人になっちゃった」
ダリアが唸るように声を出し、チラリと横を向いた。するとエリーが「もしかして!」と口にしながらダリアの方に首を振る。
エリーは追求したいはずだが、先の言葉を続けられずに口ごもってしまった。
そんな様子見ていたミレーヌがふとダリアと目を合わせると、ダリアがエリーに見えないように『話を広げて』と口だけを動かして伝えた。
ミレーヌは瞬きを大袈裟に繰り返し、上半身をなんとか起こす。
まずは、エリーの気持ちを代弁するところからだ。
「今、エリーさんが考えている通りで、認識として間違いありませんよ」
「私の考えている通りですか!?」
「そうです。ダリアさんとファラさんが、リュウさんを好きだということですね。エリーさん。お二人に肉体では敵いませんから、清純さは大切にされた方がよろしいかと」
「なっ! えっ! いったい、どういう……」
妖艶に笑うダリアに、エリーは狼狽えながらも詰め寄っていく。
ファラは、ダリアとミレーヌがエリーの緊張を解そうと敢えてそういう話題を選んだことに気がつき、ニヤリと笑いながら森の中で死にかけているダンクの元へ飛んだ。
右足の爪をダンクの身体に食い込ませながら掴み上げると、エテキチの元へ。
空いている左足の爪でエテキチも同様に掴み上げた。
ファラが旋回して天幕へと舞い戻ると、エリーの質問に答える形でダリアがリュウとの関係と好きになった経緯を話し始めた所であった。
ファラは空中で羽ばたきながら、恋敵である二人の会話を聞いていた。
「……でね。つまり、長年付きまとっていたセクハラ野郎から私を救ってくれたの。それで、好きになっちゃったってわけ」
「……なるほど。それは、女性なら好きになっちゃいますよね」
そう言って態度を軟化させるエリー。
ダリアは大きく頷いた。
「でしょう? 見かけによらず、リュウって困っている人を見ると助けちゃったりするタイプなのよ。きっと」
エリーが目をつむりながらため息を吐く。
「そこが、良い所なんですよね。でも、誰にでも優しいのは、困るな……」
「うふふ。お互い、大変な人を好きになってしまったわね」
「そう、ですね……」
2人の会話聞いていたファラがふと下を向くと、ミレーヌも気を遣う側であったのに、当然のようにすまし顔で聞き耳を立てていたのを見つけてしまう。
ファラは豪快に笑った。
人間は、やはり面白い。
「愉快愉快!」
そこへ、真剣な表情でリュウが走ってやってきた。
エリーとダリアは視線を合わせて頷き合うと、身の上話を切り上げて立ち上がり、出発をスムーズに行えるよう、ミレーヌの肩を持って立たせた。いつの間にか戻ってきていたジョセフィーヌがミレーヌの頬を鼻先で擦って心配そうに嘶いている。
「ありがとうございます。……ジョセフィーヌは、心配性ね」
そう言ってミレーヌが痛みに堪えがら立っていると、それを見ていたリュウはグリードムントの指環の起動を隠すこともせず、高級ポーションを取り出してミレーヌに差し出した。
ミレーヌは、次元の境界線が揺らぐ様を見て驚愕の声を上げる。
「……っ! それは、アイテムボックスではありませんか!?」
「よくわかったな」
「マジックバックで、それほどハッキリと境界線が浮き出るものなどAランクのマジックバックですらありませんから」
「わかっているとは思うが、俺についての情報は、他言無用で頼む」
「もちろん、言いません。まだ、死にたくないので」
「良かった。恩人が敵になるのは、悲しいからな」
「貴方が敵対者には容赦しない方だというのは、わかっていますよ」
上半身を支える背中の筋肉を強く緊張させながら、ミレーヌが答えた。
「わかってくれていればいいさ。さあ、これを使え」
リュウがそう言ってポーション瓶を数本纏めてミレーヌに差し出す。
ミレーヌはポーション瓶を受け取ると、栓を抜いて骨折した足を中心にポーションを振りかけていく。
高級ポーションの効果は高く、3本ほどかけると明らかに腫れが引いた。
恐る恐るミレーヌが足を曲げ伸ばしするも、痛みは然程感じずに済んだようで、短く息を吐く。
「ありがとうございます。お代は王都に戻ってから支払いますので」
「必要ない。エリーとダリアのために戦ってくれてケガをしたんだろう? お前がいなければ、俺が助ける前に不味いことになっていたかもしれないんだ。感謝している。色々と落ち着いた頃に、改めて礼をさせてくれ」
「そうですか。それでは有り難くそうさせて頂きましょう」
リュウはミレーヌの返事を聞くと、話すべきことは話したとばかりに視線を切り、再び
グリードムントの指環からマギ・スクロール【ワープ】を取り出した。
「エリー。いくぞ?」
リュウの問いかけに、エリーは再び顔を強張らせた。
ワープが使えるということで安堵し、ダリア達と話をすることで恐怖を意識の外へ追い出そうとしていたが、両親が病に蝕まれている姿は刻銘に脳裏に焼き付いていた。
あの黒い薬液がきちんと効くのか。
後遺症は残らないのか。
そして、本当に、まだ無事なのか。
なるべく考えないようにしていたエリーだったが、一度意識に浮上してしまうと止められなかった。
頭の天辺からつま先まで一気に寒気が走り抜け、全身がガクガクと震え出す。
エリーは噛み合わない歯を無理やり動かし、それでも気丈に振舞おうとした。
だが、どれだけ頑張っても、言葉は途切れ途切れにしか出せなかった。
「……あれ? おかしいな。
お母さんと、お父さんを。
私が。
グスッ。
助ける、はず、だった……の、に。
うううっ。うあああああん!」
エリーの瞳から冷たい滴が寒々と流れ出す。
リュウはゆっくりとエリーを抱き寄せ「なんとかすんだ。一緒にな」と囁いた。
ダリア、ファラ、ミレーヌも口々に励ましの声をエリーに掛けていく。
エリーはリュウの胸に身体を預け、泣きじゃくりながらも頷き返す。
「いい子だ」
とエリーの頭を撫でた後、険しい顔つきでリュウが叫んだ。
「…………ワープ!」
光に包まれた一行は、亜空間に飲み込まれ、瞬時にその場から姿を消した。
また、しばらく忙しくなりますが、2月からは週一程度での更新を予定しています。
詳しくは活動報告の方でまた連絡させていただきたいと思います。
よろしくお願いしますm(__)m




