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ガチャ91 吠えるゴリラ

ホーリーナイトとは縁遠い話ですいませんm(__)m

 ダンクは馬車からエリーを引きずり出して、足に重りをつけた後、鼻の穴を大きく広げた。


「ここでお前を引き渡すまで、たっぷり遊んでやるからな」


「触らないで!」


 エリーはイヤイヤと頭を何度も横に振る。

 そんな様子を見て、ダンクはせせら笑う。


「ウホホ! 諦めろ、エリー。そうすれば楽になるぞ?」


 無言で俯くエリーから視線を外したダンクが、

「エテキチィ! 天幕を用意しろ!」

 とエテキチに向かって叫んだ。


「はいはい! 少々お待ちを~」


エテキチは馬車から布や支柱を取り出し、天幕の設営を始めた。

 後ろから眺めていたダンクがエテキチに近づき、軽く肩を叩く。

 しかし、エテキチにとっては力強過ぎて痛みのあまりに目を潤ませていた。


「ってぇええ! なんだい? アニキ」


「俺はちょっとションベンしてくらぁ。お前は、しっかり準備しとけよ。特に、寝床は入念にな」


「ウキキ! 当たり前じゃないか、アニキ! 任せておいて」


 返事を聞いたダンクは満足気に頷くと平地の隅へ行き、木の根元で用を足し始めた。

 エテキチは嫌らしい笑みを浮かべながら、急ビッチで支柱をくみ上げると、大きな布を持って骨組みの上に登っていった。



◆◆◆


 人工的に作られた平地。

 その外縁部の森に、軍馬ジョセフィーヌに乗ったミレーヌとダリアが身を潜め、豪猿とエリーの動向を観察していた。

 森で発見した豪猿達は互いをカバーできる範囲に常に位置取っていたが、平地につくなり、ダンクがエテキチに何かを伝えると、反対側の外縁部へ向かって行った。

 対するエテキチは馬車へ向かって行き、中から柱や大きな布を取り出し始めた。

 ミレーヌとダリアは顔を見合わせた。


「ミレーヌ。これは、チャンスよね?」


「はい。この機会を逃すと、後はエリーさんが襲われている時以外、狙える隙がなくなりますね」


 平然と答えるミレーヌ。

 ダリアは小さな声で叫んだ。


「そうなる前に、助けて見せるわ!」


 背中に掛けていた風弓を取り出し、矢を番える所――サイトにあるボタンをワンタッチ。

 折り畳まれた両端が突風のように速く、それでいて静かに展開され、身の丈を超える長弓となった。

 ダリアは左手に長弓を持つと、矢筒から取り出した矢を右手の指間に2本掴む。

 腕を振るわせながらも、頭上から下ろすように弦を引いた。

 反発する弦と押さえつけ腕が鳴らす軋み音だけが、周囲に流れている。

 そんな中、エテキチが1人で天幕の布を掛けるために支柱の上に跳び上がった。


「今です」


 ミレーヌの短くも的確な指示とほぼ同じタイミングで、ダリアは弦を解放。

 風切り音と共に、同時に発射された2本の矢がエテキチの背中と左ふくらはぎに突き刺さった。


 天幕の設営を今しがた終えたばかりのエテキチは突き刺さった矢の激痛に顔を歪め絶叫。


「ぎゃあああああっ! アニギィ!!」


「エテキチ! どうしたぁあ!!」


 用を足し終えたダンクが、天幕の方を振り返ると、大きな矢で身体を貫かれたエテキチを見つけた。

 矢に射貫かれたということは、人の仕業だということだ。


(……狙ってる奴がいやがる! くそったれが!)


 ダンクは鋭い視線を周囲に飛ばしながら、急いでエテキチに走り寄り、刺さった矢を引き抜いて非常用のポーションを掛けてやった。

 しかし、身体に開いた穴は塞がったものの、エテキチはぐったりとしたままだった。命は助かるだろうが、回復には随分と時間を要するようだった。

 ダンクは弟分を天幕のベットにゆっくりと下ろすと、エテキチを背に庇いながら吠え、分厚い胸板をドラミング。


「ッオオオオオオオ! 矢を放った奴、出てこぉぉぉい!!」


 ダンクの毛深い顔に、濁った血が集まった。

 側面へ回り込んだダリアが、無言で3本の矢を指間に挟む。

 狙いは頭、胸、脚。

 張りつめた弦を解放。

 縦に並んだ3本の矢が、風切り音を立てて飛んでいく。


 ビュッ――!


「来たか!」


 ダンクは、射貫かれるまであと僅かというところで、右から迫る矢を優れた動体視力で補足。

 縦へと扇状に広がる矢から回避することは難しいタイミング。 

 ダンクはそれでも嗤っていた。

 

「見えちまえばこっちのもんよ!」


 上げた右足の指で矢を挟み、

 右手で胸元に来た矢を掴み、

 頭を襲う矢を黄ばんだ歯で噛み止めた。


「噓でしょ! この距離で!!」


 側面からの3本同時斉射を完全に受けきられ、悲鳴のような声を漏らすダリア。

 ダンクは歯に咥えた矢を吐き捨てると、射手のいるであろう場所を目がけ叫ぶ。


「いまからそっちにいってやるから覚悟しろぉ!!」


 両拳を地面に下ろし、4足歩行となったダンクが、怒涛の勢いで走り始める。


「私が隙を作りましょう。ダリアさんは、確実に仕留めて下さい」


 ミレーヌは、鋭い視線をダンクに送りつつ、剣を構えた。

 ダリアは返事代わりに長弓の弦を命一杯に引いていく。

 

 ……ギチギチギチギチ。


 弦から飛び出ようとする矢が、待ちきれずに音を鳴らす中、ミレーヌがジョセフィーヌに短く命令を下す。


「ジョセフィーヌ、突撃!」


 ジョセフィーヌが平地を疾駆する。

 それを見たダンクはナックルウォーキングのスピードを上げた。


 肉薄する両者。

 先手はミレーヌ。


「覚悟!」


 地を這うダンクへ、当たればどこでもいいという勢いでミレーヌが剣を突き出していく。

 ダンクは鼻で笑って更に加速。

 剣先を掻い潜って体当たり。

 ジョセフィーヌごとミレーヌを引き倒した。

 ミレーヌは倒れた衝撃で剣を手放してしまう。


「ぐっ」


 立ち上がろうとするも、落馬のせいで右足を骨折したミレーヌは立ち上がることもできなかった。

 ダンクはミレーヌが動けないことを確認すると、

「お前は弓使いじゃねぇな。黙って隠れてれば、お前だけは助かったのに、バカなやつだ。後でじっくり嬲ってやるぜ! ウホホッ!」

 と、捨て台詞を吐いて、ダリアのいる方へとナックルウォーキングで走って行く。

 ミレーヌは震えながら上体だけを起こして、袖口に隠していたナイフを振り出した。


「ぐふっ……バカなのは、止めを刺さずにいってしまう、お前の方さ」


 握ったナイフを、腰の回転運動で勢いをつけて投げる。

 こちらへ意識を割いていないダンクの背中に、ナイフが吸い込まれるように刺さった。

 傷は浅い。しかし、意識外からの痛みに驚いたダンクのナックルウォーキングが一瞬だけ淀んでしまった。

 前を向いたまま、足を止めてダンクが叫ぶ。


「女! 後で覚えてやがれ!!」


(ここ!)


 すかさず、ダリアが矢を放った。

 このまま行けば、突き刺さる。

 少なくとも、ダリアにはそう思えた。

 しかし、ダンクは軽々と横へ跳んで躱してしまう。


「おいおい。流石に正面からは貰わねぇよ。もう観念しな」


 ニタリと笑ったダンクが爆速ナックルウォーキング。

 ダリアは指間に矢を挟み、速射を繰り返す。

 右に左に乱れ飛ぶ矢。

 しかし、ダンクには当たらない。

 ナックルウォーキングの途中で身を捻り、時には飛び跳ねながら、前進。

 とうとうダンクがダリアの姿を視界に捕らえた。


「ウホッ! 誰かと思えば、ダリアじゃねぇか!」


 額から汗を流すダリアが、森を移動しながら、長弓を引く。

 しかし、森の中はダンクの領域だ。

 木々を飛び回り、あっという間にダリアは背後を取られ、ヘッドロックをかけられてしまう。


「うっ」


 ダリアは長弓を手放し、酸素を求めて獣腕を引きはがそうとする。

 だが、圧倒的な筋力を誇るダンクの腕を乙女に引きはがすことなどできるはずもなかった。

 窒息しそうになりながら、それでもダリアは必死にあがく。

 ダンクは面白そうに嗤った。


「いいいねぇ。簡単に諦めない女ってのは、そそるな。それにしても、思ったより良い身体してんなぁ。エリーと一緒に遊んでやるぜ!」


「……かはっ」


 気を失い、項垂れるダリアを見て、ダンクがニヤリと笑った。


「エテキチも元気になるかもしれねぇな。ウホホ!」


 ダリアを担ぎ上げたダンクは、途中でミレーヌも同じように担ぎ、鼻息荒く天幕へ向かった。


楽しいライトノベルナイトを!

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