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ガチャ88 伝説の飛龍族

烈火の如く怒る業火炎が咆哮する。


「ウオオオオオオオオオオオ!!」


震える大気。

爆発する炎の魔光圧気エーテルグラスト

しかし、咆哮の隙を逃すほど、リュウもお人好しではない。

頬を焦がすような熱波が襲いくる中、既に生成を済ませていた雷の化身達に追撃の命を下す。


「隙だらけだ! 貫け、稲妻投槍ブリューナク!」


10本の雷槍が一斉に打ち出された。

常人には見ることも叶わない速度で、雷槍が飛来する。

業火炎が僅かに眉を潜めた。


「詠唱短縮? 賢者クラスか!」


だが、リュウの視線から、狙う先は読めていた。

業火炎にとっては、見切れないというほどのものでもない。

この程度ならば避けきるのは造作もないことだった。


「あまり、妾を舐めるな!」


雷槍をバレルロールで躱しながらリュウへと肉薄。

業火炎の燃える爪が、リュウの腹を裂こうと振るわれた。


リュウは完全に稲妻投槍ブリューナクを回避され驚愕するも、接近する脅威に対応すべく咄嗟にアイスブランドの刃を立てる。

再びぶつかる氷刃と炎爪。


業火炎が忌々しそうに氷刃を睨んだ。


「邪魔だな。その魔剣は!」


語気を荒げる業火炎は、爪の先端に魔力をこれでもかと注ぎ込み、炎を一点に収斂させるという芸当をやってのけた。

超高温を放つ炎爪が、アイスブランドの刀身を溶かし、中心に穴を穿つ。


……ビキ! ビキキキッ!


「なんだとッ!!」


 リュウが叫ぶと同時に、氷刃に罅が入り、柄を残して砕け散った。

 しかし、業火炎は驚くことすら許さない。


「魔剣がなければ、防げまい!」


 リュウの喉元に鋭い爪が迫る。

 アイスブランドの柄を惜しみながら地面へ放り、咄嗟に逆手でフレイムタンを引き抜いた。

 ガキンッと鳴る、耳障りな金属音。


「それも炎を宿すか。運のよい奴じゃ! 同じ炎。溶けることはないだろう。だが、妾にダメージを与えることもできまいて。先の雷魔法も既に見切っておる。大人しく、死ぬがよい!」


 圧倒的なパワーでフレイムタンを押し戻す業火炎。

 リュウは危機の中、魔光圧気エーテルグラストを放出しながら冷笑して見せる。


「言葉をそっくり返してやる。あまり、人間を舐めるなよ?」


 雷光が不規則に中空を走った直後。

 リュウは大きく練り上げた雷魔力を解放。

 出現した暗雲に向かって、左手を突き上げた。


「裁け、雷槌之龍ドラゴントール!!」


 雷龍が轟音を鳴らしながら垂直に降下。

 極大の雷柱が断崖ごと両者を押し潰す。


「ああああああああっ!」


 雷柱の直撃を受けた業火炎が全身に走る痛みと痺れに絶叫している。

 対するリュウは、轟纏雷のオーラが雷柱を中和し、無事に済んでいた。

 しかし、魔力を一気に消費したことで、軽い頭痛と眩暈を感じていた。


(これで倒れてくれればいいが……)


 そう思うリュウの視線の先には既に業火炎はいなかった。

 追撃を嫌った業火炎が、隙を見て上に逃げていたのだ。


「今のは少々効いたぞ、人間!」


 業火炎は凄まじい形相で大きく口を開いている。

 ブレスの予備動作だ。

 溶岩が煮えたぎるような音が喉元から聞こえてきた。


「そういうわけにもいかないか!」


 気合を入れなおしたリュウが、ブレスを回避しようと駆けだした。

 離れる距離。ましてや高速で動き回るリュウに、炎球ブレスを当てることは難しいだろう。

 しかし、業火炎は必ず当たると確信を持ってブレスを放った。

 ブレスは扇状に広がる広範囲型であったのだ。


「何っ!!」


 叫ぶリュウの視界が赤く染まる。

 リュウはグリードムントの指環から、咄嗟にタワーシールドを取り出した。

 重厚な金属の大盾が業火を遮る。

 ヴィーチェルコートの効果で風の幕が張られたこともあり、大盾の周りだけはなんとかブレスの影響を免れていた。

 しかし、それも長くは続かない。

 高熱の炎に侵食される大盾は、あと数十秒持てばいい方だ。


(ワープで撤退するか)


 一瞬だけ、そんな考えがよぎった。

 すると、灰色の幻影が現れて『お前は逃げるだけの能無しだな』と嘲笑した。

 怒りを覚える反面、確かにその通りだともリュウは思った。

 これからも、勝てそうにない相手と戦うことはあるだろう。

 その度に、ワープできるわけではないのだ。


(……そろそろ、覚悟を決めるか)


 守りに入っていては、勝てるはずがない。

 それに、考えている間に、大盾はもう溶けきる寸前だった。

 今、スクロールを出しても燃えカスになるだけだ。

 

(まずは、動きを止めてやる!)


 リュウは魔力を練り上げ、稲妻の形をしたクナイを生成。

 紫電迸るクナイを右手で握って、思い切り振りかぶった。


「唸れ、雷光鳴動インドラ!」


 大盾が溶けきった瞬間。

 リュウが雷光鳴動インドラを業火炎に目がけて投げる。

 油断なく回避を試みる業火炎。

 しかし、雷光鳴動インドラが嘲笑うように途中で爆ぜる。

 直後、閃光が霊峰の中腹をも包み込み、爆音が轟いた。

 業火炎は視覚と聴覚が一時的に麻痺してしまい、一瞬だけ姿勢を崩す。


「ちぃ! 目と耳をやられたか。だが!!」


 舌打ちする業火炎は、気配を頼りに炎球を連続で放つ。

 微かに狙いが先ほどより甘くなるだけで済んでいる辺り、流石は飛龍と称すべきだろう。


 リュウは紙一重で炎球を交わしながら、地面を舐めるように疾走。

 炎球の合間を縫って跳躍。

 バンテージに込められた水魔力を右拳に纏わせて、肘を引きながら、業火炎の懐へと飛び込んだ。


「喰らいやがれ」


 迎撃してくる炎爪を左手で受け流すと、引いた右手を斜め上方に振り上げた。

 丸太を素手で殴ったような感触。

 業火炎の顎元に流水纏う拳がめり込んだ。


「グッ!!」


 業火炎の顔が僅かに歪む。

 リュウはそのまま振り切った。

 

流水拳アクアインパクト!!」


 直撃した瞬間に解き放たれた高圧水の直撃を受け、業火炎は吐血。

 しかし、目はまだ死んでいない。

 リュウが追撃しようと拳を引くと、業火炎の尻尾が鞭となって襲い掛かって来た。

 躱そうとするも、時すでに遅し。

 尻尾をまともに喰らったリュウは、弾き飛ばされた。


「ぐはっ」


 尖塔のように伸びる大岩にぶつかるという所で、リュウは空中で強引に態勢を整えると、自ら岩に向かって踏み出した。

 岩を砕きながら、上に向かってウォールラン。

 止めを刺そうと突撃してきた業火炎がブレーキングし、垂直に上昇してくる姿が視界に入った。

 頭上を取ったリュウは、再び右拳を引き、岩壁を蹴り出し真下へ跳ぶ。

 業火炎はリュウを見上げながら睨み、同様に左腕を引いた。

 その様は、格上がどちらか思い知らせてやるといわんばかりである。


「望む所だ!」


 突っ込むリュウに炎爪が伸びる。

 リュウは空中でスウェーバック。

 腹部を抉られ、盛大に血を撒き散らしながらも、致命傷の回避には成功。

 伸びきった業火炎の左腕に、リュウの右ストレートが交差する。

 困惑する業火炎の顔面に、クリーンヒットする渾身の流水拳アクアインパクト

 衝撃と水圧で吹き飛ばされた業火炎は、重力から逃れることはできず地面に身体を打ちつけた。


「ぐっ!!」


 強靭な肉体を持つ飛龍であっても頭部は比較的脆い部位だ。

 そこへ二度も大打撃を喰らって、無事でいられるはずもない。

 業火炎はよろめきながら立ち上がるも、むせ込んで血を大量に吐いた。


 千載一遇のチャンス。

 しかし、リュウも抉られた腹部から鮮血が噴き出し、身体が思うように動かなかった。

 通常であればとっくに意識を失っていてもおかしくない出血量。

コンセスタDのおかげで、やけに頭の中だけはクリアだったのは幸いだった。

 リュウは焦土と化した地面に降りると、冷静にグリードムントの指環から取り出した上級ポーションを何本もかけ、傷口を閉じさせ、体力を微量ながら回復させる。


 そうしている間に、業火炎もダメージが多少抜けたようで、身体を宙に浮かばせていた。


「なかなかやるではないか」


 業火炎の全身が燃え上がり、その巨体を更に大きく見せた。

 

「侮っていたことを詫びる代わりに、妾の全力を見せてやろう」


お読み頂きありがとうございます。

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