ガチャ7 ー断罪の水晶ー
森を抜けて1時間程走った所でリュウは街らしきものを発見した。近くには石を敷き詰められた街道もあるが……。
(本当に街か?)
リュウが思わず疑うのも無理はない。
高さ20メートルほどの城壁が恐らくは数キロメートルほど、外的の侵入を阻むべく街の周囲を隙間なく囲んでいる。
城壁の内部を伺うことは叶わず、中心部に立つ城の姿が小さく見えるのみだ。
「凄いな……」
門の近くまでたどり着いてリュウは思わず呟いていた。
城門は木製だが表面を鉄で補強された上に深い堀が掘られており堅牢な守りとなっている。
外敵が現れた場合、即座に扉を閉めて吊り橋を跳ね上げればは容易に攻め込めないだろう。
長大な城壁と堅牢な門を持つ巨大な城塞都市であった。
門の近くには両側に兵士のような格好をした男が槍を携えて門を通過する人々の確認を1人ずつ行っている。リュウは列の一番後ろに並び自分の順番が来るのを待った。
「君、見たところ冒険者のように見えるけど、ギルドカードは持っているかな?」
「いや、持っていないんだ」
兵士は大きく目を見開き、何度か瞬きを繰り返した。
「驚いたな。どれも良い装備のように見えたから、てっきり冒険者かと思ったよ。他に身分証明できるものはあるかな?」
兵士の表情を見て、森に来ていた冒険者風の男達の装備を思い出してリュウ。
内心面倒なことになったと感じながらも、嘘をつくわけにもいかず正直に返事をするしかなかった。
「持ってないな」
「……そうか。身元が不明な人物を通すためには銀貨1枚と簡単な面談を行う必要があるんだ。武器を隣の兵士に預けて詰所まで来て貰ってもいいかな?」
丁寧な言い方だが怪しい人物を見るような目つきで言う兵士。
こんな話は聞いていない。リュウはガチャ神に対し憤りを感じながらも、表情には出さずに頷き、フレイムタンを預けて詰所へと向かった。
(拳銃はこの世界では存在しないようだな)
「汚いところで悪いね。席は適当に空いているところに腰かけてていいよ」
魔弾の拳銃のことは不用意に知られないように気をつけようと考えながらリュウは所狭しと存在感を主張するテーブルの近くに置かれた小さな木製の椅子に座った。
「さっそくだけど、まずはこの水晶に手を置いて欲しい。……ありがとう。では、名前とここリーデンブルグ王国の王都に何をしに来たのか教えて貰えるかな」
(嘘を見破る類いものだと面倒だ。鑑定をしておこう)
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名前 断罪の水晶
評価 A
価値 金貨5枚
説明 水晶に触れたものの罪を表示する。王国法に準拠。
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(これならなんとかなるだろう)
「名前はリュウ。覚えているのは名前だけで、特に目的なんてないさ。
気がついたら近くの森に倒れていたみたいでな。起きてからは過去のことを思い出そうとすると頭が痛むんだ。
どうしたものかと途方にくれていたところを盗賊に襲われてな。
不思議と身体は戦いなれてるようで、咄嗟に反応して盗賊に反撃して手傷を負わせることができたんだが、盗賊が逃げるときに上手いこと手荷物は持っていったようで、武器以外ろくな物が残ってない。
まずは今日寝泊まりできるところだけでも確保したいと思って歩いていたらここが見えたから、やってきたというわけだ」
ガチャ神に転生させて貰ったという話をしてもただ怪しさが増すだけだと判断したリュウはどうにか誤魔化すため、記憶喪失で押し通すことに決めた。
「記憶を失った上に盗賊にまで……。それは辛いね。でも、そうすると困ったな。仮身分証発行も銀貨が無いとできないんだ。王都の中に入れてあげるわけにはいかないんだよ」
「これを売って貰って、そこから銀貨1枚を引いてもらうというのはダメなのか?」
リュウは劣竜革のボトムのポケットからゴブリンから採ったゴブリンの魔石(極小)とゴブリンの魔石(中)をテーブルに並べた。
「屑魔石が2つと……ん? これはゴブリンハートじゃないか! 直に見るのは初めてだよ。幸運の証とも言われているんだ」
少年のように目を輝かせて角度を変えて羨ましそうに眺めている兵士を見てレアガチャで当たりを引いた友人のスマートフォンを覗く自分に重ねていたリュウだが、詰所にいた数名の兵士から仕事の邪魔だというように睨まれて話を戻した。
「……それで、足りるのか?」
「悪かったね。ちょっと興奮してしまった。ゴブリンハートは冒険者ギルドで売れば即金で銀貨30枚払われる。私が代わりに処理してくるからここでしばらく待ってて欲しい」
「よろしく頼む」
一瞬だけ真面目な顔に戻った兵士だったが手にしたゴブリンハートに目を落とすと思わず口元が歪んでいた。しかし、なんとか職務を全うするべく急いで冒険者ギルドへ行き精算を済ませ戻ってきた。
「待たせたね。ゴブリンハートと屑魔石の分が銀貨31枚になったよ。少しサービスしてくれたみたいだ。冒険ギルドの受付嬢が『またのご利用お願いします』って伝えて欲しいと言っていたよ」
「俺には戦うしか能がなさそうだ。すぐにでも顔出すさ。じゃあ、仮身分発行証とやらを貰おうか」
リュウは布袋に入っていた銀貨を1枚兵士に差し出した。受け取った兵士がリュウヘ白いカードを渡す。
「これで手続きは終わりか?」
「そうだね。では、改めて。ようこそ王都レーヴォリへ!」
リュウは兵士に挨拶を済ませ、フレイムタンを受け取って詰所を出る。再び重厚な雰囲気を醸し出す城壁と門を見て圧倒されつつ、王都の中へと入って行った。
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