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ガチャ78 人食い宝箱

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 リュウは嚙みつきを必死で避けながら横目でマリを探す。

 中々見当たらず、まさかと思って天井を見上げると、高見の見物と決め込んでいるマリと目が合い、ニッコリと手を振られてしまった。


「おい、マリ! こいつは厄介そうだ。手を貸せ」

 と叫びながら、リュウはミミックが飛びかかって来た瞬間、敢えて前に出た。


 無数の牙に挟まれそうなタイミング。

 リュウは強引に上体を倒し、石畳スレスレをスライディング。


 大質量を誇る巨体とすれ違う中。リュウは最大出力のフレイムタンで斬りつけた。

 豪勢な装飾が施された箱はスキルで強化されていることもあり、小傷がつく程度であった。

 リュウは眉を潜め、ミミックをやり過ごした所で、踵を立てブレーキ。

 その反動を利用して飛び上がるように立ち上がり、天井に浮かぶマリを睨む。


 睨まれている当の本人は、マスターが危機に陥っているにも関わらず、いつの間にか取り出したティーセットでピーチティーを飲み「ああ、甘美だ」と頬を赤く染めているのだった。


 鋭い視線を感じたマリは「マスターの問いに応えねばならんという呪いは至極面倒だな」とぼやくと、ディザイアクロックのルールに則って仕方なく自身のカルマ獲得方法についての説明を始めるのだった。


「マスターの願いを断固拒否する。マスターがやられたら、極上のカルマが宿ったその魂を頂くだけでいいのだから、手助けする必要などない。勝っても負けても私は美味しい思いができるのだ。むしろ、負けてくれた方が、大抵の場合、ワタシ的には美味しいのだよ」とマリはカップを持ち上げると、再びピーチティーを味わい始めた。


 リュウは鼻で笑った。


「……好きにしろ。お前を当てにしようとした俺がバカだった」


 グリードムントの指環から取り出した小瓶の黄色い薬液を口に含むと、今度は自分から仕掛けるために、初速から全力で駆けだした。


 ミミックは、浮遊スキルを駆使して反転を済ませたところであった。

 すると、身体能力で劣っているリュウが愚かにも直線的に向かってくることに気づく。


 勝利を確信したミミックは長い舌を箱の隙間からダラリと垂らし、捕らえて丸呑みせんと大きく上蓋を開けながら、舌を伸ばした。


 リュウは尚も直進。

 麻痺毒をまき散らす長い舌に身体を巻かれ、一気に口元へと引き寄せられてしまう。

 ミミックが抵抗できないリュウを咀嚼しようと上蓋を閉じようとした瞬間。

 リュウは口に含んでいた麻痺消し剤を飲み込み、口角を上げ「炙られろ!」とフレイムタンをミミックの眉間に突き込んで、炎を噴出させた。


 追い込むためにフレイムタンを深く押し込む。


「ガガガアアアアア!」


 ミミックが発狂しながら上蓋を力任せに閉じた。


 フレイムタンを引き抜く暇はない。

 咄嗟にそう判断したリュウは、痺れる足に鞭を打ち、牙並ぶ箱の縁を蹴って離脱。

 

 だが、完全に嚙みつきを回避することはできずに、牙に引っ掛かった肉を犠牲にしながらの跳躍だった。

 当然、着地は上手く決まらず、裂かれた身体から血を滴らせながら地面を幾度も転げ、広間の壁にぶつかるまで止まることはなかった。


 リュウは溜まった血を吐き捨てると「クソ! フレイムタンが持っていかれた」と悔しさを滲ませて、アイスブランドを支えに、なんとか立ち上がる。


 フラつきながら前を見るリュウの目には、黄土色だった目を真っ赤に染めたミミックがフレイムタンを飲み欲し、何か蒸気のようなものを吐き出している姿が映った。

 変わった色も匂いも発していない。

 唯一見えるのは、無色無臭の液体を燃やす香炉が、ミミックの舌の上に乗っているくらいだった。

 ミミックの舌には不可思議な陣が描かれていたが、その意味はわからなかった。

 しかし、その上に置かれた香炉がどういう意味を持つかは重々承知していた。


「……魔寄せの香か! 大量に集まる前に仕留めるしかないっ。轟纏雷!!」


 圧縮した雷魔力を体内に取り込み、自ら雷の化身となったリュウが、紫電となって広間を疾駆。

 氷刃に広間ごと凍りつかせるほどのの魔力を込め、ミミックの眉間を再び突き刺そうとした。


 しかし、アイスブランドは匂いに釣られてやってきたダーティーモープの100を超える群れに阻まれてミミックまで凍らせることはできなかった。

 鬱陶しいそれらを蹴り砕くと、結晶が明かりを浴びて煌いた。

 だが、幻想的な光景は長く続かない。

 次に現れたのは50を超えるワイバーンナイトの群れとそれを率いる10体のワイバーンだった。


「これは、不味いな……」


 始めてワイバーンと相対したが、数体程度が相手なら負ける気はしなかった。10ならギリギリ勝てるという見込みが立つ。

 ワイバーンナイトの群れも、面倒なだけで勝てる相手だ。

 しかし、それはミミックがいなければの話。

 このまま手こずっていれば魔寄せの香に釣られたモンスターがさらに加わっていくことだろう。

 敗色濃厚な状況。

 だが、気持ちを切らしたらお終いだ。

 リュウは努めて傲岸不遜に言い切った。


「ククク。雑魚ども。俺に会ったのが運の尽きだ。圧倒的速度で殲滅してやる。黙って魔剣の錆となれ!」 

 リュウは飲み干したポーション瓶を投げ捨て、上を取っているワイバーンから始末するべく跳躍。

 ワイバーン達が連続で放つ炎弾が直撃する寸前。

 リュウはウイングブーツを起動。


 まるで入り組んだ階段を昇っているかのように、リュウは中空をクロムグリーンのブーツで蹴り出して、疾走。

 飛び交う炎弾の嵐。

 全て、ギリギリで躱し切る。

 一番近くに滞空しているワイバーンを一瞥。

 リュウは弾丸さながらに加速した。


 リュウの接近を嫌ったワイバーンが「ギャース!!」と叫び、大きな翼を打ち付けようと振るった。


「おおおおおおおおおお!」と気炎吐くリュウがワイバーンの翼を搔い潜った。

 懐に侵入した瞬間、ダイアモンドダストを散らしながら、氷刃で斬り上げる。

 過冷却された劣竜革の翼が斬られた衝撃で根元から一気に凍りつき、あっさりと砕け散った。


「ウギャギャ!」


 片翼を失ったワイバーンが絶叫しながら落下。

 石畳に青いシミを作った。


 しかし、尚も状況は芳しくない。

 一歩ごとにMPを消費するウイングブーツは、滅多にお目にかかれないほどのレアアイテムで低燃費だと思っていたが、今だけは頗る燃費が悪く感じてしまう。

 このままではジリ貧だ。

 リュウは何処かで流れを変えなければ負けると薄々感じながら、取り出したMPポーションを飲み、次のワイバーンの元へと虚空を蹴って飛び出そうとしたその時。


「ああっ! 今、ワタシは楽しく観戦中だ。邪魔をするな! む。力加減を間違えたな」と三又槍で複数のワイバーンを牽制するマリの、気怠い声が耳に入って来た。

お読み頂きありがとうございます。

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