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ガチャ77 飛龍の巣に顕現せし小悪魔

 リーデンブルグ王城で緊急会議が終わった頃、飛龍の巣で修行を積んでいるリュウは、とうとう最上層へと続く道を昇り切ろうというところまで来ていた。

 陽の光が最奥から差し込み、洞窟はやけに眩しく感じられる。

 リュウはこのまま全力で坂道を駆け上がろうと思ったが、途中で足を止めてしまった。

 懐にしまい込んでいたマジックアイテムの懐中時計が強烈に振動していると気づいたからだ。


(これがディザイアモードか! 何処かに、高ランクの代物があるということだな)


 口角を上げたリュウがディザイアクロックの蓋を開けると、深蒼の文字盤が深紅の羅針盤へと姿を変えていた。

 時針と分針が高速で回転を続けていたが、次第に速度が落ちていき『西北西』で両針が重なり合ったところで止まる。


 白銀の蓋が漆黒に染まったかと思うと、ボンテージに肉感的な身体を押し込めた小悪魔が裏蓋から顕現。


 頭から羊の角を生やした妙齢の美女が、リュウに臣下の礼を取った。


「この姿でお目にかかるのは初めてだったな。ワタシはマリ=アンドロス。所持者の欲望を喰らって生きる悪魔だ。マスターの望むモノは彼方にある。さあ、早くいけ!」と三又槍を西北西に向けて突き出した。


 その勢いで、柔肌を露出する巨乳も大きく揺れる。


 リュウが視線を逸らしながら「言われなくても、そのつもりだ」と言うと、マリは尻尾を持ち上げて口の端を上げた。


 不毛なやり取りに陥るのはごめんだ。

 そう思ったリュウは「灯れ、トーチ」と呟き、周囲を照らす灯球を浮かべて西北西にある脇道に向かい、足早に歩き出す。

 マリは蝙蝠の翼を羽ばたかせ、軽くパーマがかかっている黄色い髪を靡かせつつ、後ろからピタリとついてきているようだった。


「一つ、いいか」


 リュウは前を向いたまま「お前、いつまでついてくるつもりだ?」と続けた。


「マスターが宝を手にして、欲望を満たすまでだ」

 と、そう返すマリは、恍惚とした顔を浮かべて「そうすれば、ワタシは飢えが満たされ、再びうたた寝ができるのだ」と甘ったるい声を出した。


「マリからは魔力を全く感じない。もし、対処する力がないのなら、最初からディザイアクロックの中で待機してろ。足手まといを連れ歩く趣味も時間も俺にはない」


「ワタシは上級悪魔。この辺りのモンスターに殺されるほど軟ではない。魔力を感じさせないのは、ワタシがカルマをエナジーとして扱っているからだ」とドス黒いカルマを放出。


 洞窟の壁面から飛び出してきたダーティモープを禍々しく黒光りする三又槍で突き刺した。

 ダーティーモープはカルマに包まれ、闇に溶け消える。


「なるほどな。実力はわかった。が、その服装はなんとかならんのか。少々、目のやり場に困る」


 マリは下乳が丸見えの胸元に手を置き「欲望を取り込むには生身が一番だ。この衣装もそのために露出を上げているのだよ。よって、マスターの願いを断固拒否する」と情欲を掻き立てる笑みを浮かべた。


 リュウは押しの強い小悪魔に魅了される前に視線を切り「……さっさといくぞ。どうやら、それらしい場所につくらしい」と狭くなった脇道の先に見える広間に急いだ。


「了解だ。マスター」とマリは羽音も立てずについてくる。


 広間に入ると、天井や壁に設置されていた蝋燭に一斉に火が付き、周囲が明るくなった。


 地面には光沢のある頑丈な石畳が敷き詰められており、広間を縦断する絨毯が、どことなく鮮血を連想させる。絨毯の先には、遠くからでもわかるほどに大きな宝箱があった。


 マリは宝箱を見て頬を染めながら「ああっ! マスター。あの宝箱から強いカルマを感じる。罠の類には気を付けたほうがいい」と尻尾を激しく動かした。


「当然だな。こんなに怪しい場所も珍しい」


 マリの言葉を聞く以前からリュウは宝箱を鑑定していたが、豪華な宝箱としか表記されなかった。

 罠や中身を鑑定で知ることはできないと知り、不満げに鼻を鳴らすと、フレイムタンをいつでも抜刀できるように構え、ゆっくりと広間の中央に足を進めた。


 警戒しながら進むものの、拍子抜けするほど、何も起きずに宝箱前までついてしまった。

 とすれば、この宝箱に仕掛けがあるに違いない。

 リュウはグリードムントの指輪から盗賊王のスペアキーを取り出すと、人間が数人は入りそうな宝箱の大きすぎる鍵穴に鍵を差し込んだ。

 黄金の鍵が穴に飲み込まれると内部で回転し、リュウの脳内に解除中の罠の内容を知らせてくる。


『毒ガス、解除成功。麻痺ガス、解除成功。睡眠ガス、解除成功。モンスター化…………エラー。解除不能。マスターキーの使用を推奨します』


「モンスター化だと?」

 と、リュウが呟くとほぼ同時。

 宝箱の蓋が勝手に開き、薄汚い黄土色の目が浮かび上がる。

 退路を探すも、すでに、穴という穴が岩壁で埋め立てられていた。

 リュウは背筋がゾクリとする感覚に従って、後ろに飛び退く。

 すると、ほんの数舜前にリュウが立っていた場所に、寸分狂わず宝箱が跳ねてきて、びっしりと生えた牙で食い殺そうと、上蓋と箱口をバクンと閉じた。

 Sランクのマジックアイテムであるヴィーチェルコートの裾が巻き込まれ、抵抗なく嚙みちぎられた。

 どうやら直感従って正解だったようだ。

 そう思いながら、リュウは鑑定をかけつつ、グルッと向きを変えて襲ってくるミミックを何とか躱す。


―――――――――――――――――――――――

名前 ミミック

種族 憑依魂族

レベル 230

HP 3431/3431

MP 256/256

筋力 1473

魔力 316

耐久 2075

敏捷 1450

器用 456

幸運 99


スキル

【物質憑依lv9】

【依代強化lv7】

【浮遊lv6】

【跳躍lv8】

【硬化lv6】

【嚙みつきlv8】

【宝箱擬態lv9】

【毒ガス噴射lv4】

【麻痺舌lv3】

【整地lv6】

【活性胃袋lv9】

【無劣化保存】

【送還陣】


魔法

加護

―――――――――――――――――――――――


 レベル差30以上。

 見慣れないスキル群。

 恐らくはAランク級のモンスターだ。

 反撃の糸口もまだ見当たらない。

 足を止めれば、恐ろしい口で磨り潰されるだろう。

 滑りやすい石畳の上で、白亜のコートを靡かせるリュウはまるで戦場で舞う踊り手。

 寸分のミスも許されない決死の舞が幾度となく繰り返されていった。

お読み頂きありがとうございます。

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