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ガチャ72 灰色の幻影

 高揚した気分のまま、リュウはステータスの項目をじっくりと眺めていく。


―――――――――――――――――――――――

名 前 リュウ

種 族 人間

ランク C

レベル 198 

HP 1489/1489

MP 3849/5025

筋力 961

魔力 903

耐久 812

敏捷 1225 

器用 751

幸運 EX


スキル

【レアガチャlv2】(希望の宝玉クライノートの上位互換)

【刻印lv2】

【異世界言語翻訳・通訳】

【鑑定lv8】

【気配察知lv6】

【MP増加lv6】

【身体能力強化lv3】

【千里眼lv6】

【ウォールランlv7】

【銃lv6】

【剣lv8】

【格闘lv5】

【魔力操作lv10】


魔法

【雷魔法lv8】

【サバイバル魔法lv10】


称号

【ゴブリンキラー】

極大魔光エーテルを宿し者】

【雷使い】


加護

【ガチャ神の加護】

―――――――――――――――――――――――


 レベルは200目前。

 スキル、魔法も大きく強化された。

 ステータスの合計値はEXTRAである幸運を除いても、既にBランクの域を超えていた。

 中でも敏捷値は凄まじい上がり方だった。

 轟纏雷ごうてんらいを使用しての高速戦闘が影響し、大きく加算されているのだ。 

 スマートフォンを見つめる眼が細められた。


「ククク。上々、だな」


 しかし、喜びは長く続かない。

 脳裏を過るのは、灰色尽くめの男。

 己よりも、圧倒的に速く強い宿敵の存在。

 リュウは眉を寄せ拳をきつく握りしめた。


「これで、アイツとも少しは戦えるか?」


 握った拳に灰色の幻影を重ね、自問するリュウ。

 灰色尽くめの男との戦闘では、満足に動くことすら許されず、為す術もなく負けた。

 数キロも離れていた距離を一瞬で詰められている間にできたこと。

 それは、転移のスクロールを起動することだけ。

 屈辱的な撤退劇だった。


 灰色の幻影が嫌らしく嘲笑う。

 リュウはハッとしたように目を見開く。ほんの数回だけ、目を瞬かせた。

 直後、好戦的な雷魔光圧気エーテルグラストを放出。

 纏わりついていた幻影を紫電が掻き散らす。

 

「次は必ず、俺が勝つ」


 闘志の炎が瞳に灯る。

 視線の先は、長い坂。

 上層へと向かうであろう、一本道。

 奥から延びる陽光が、少しだけ眩しかった。


(さっさとワイバーンを倒して、レベルを上げ、王都へ凱旋。そのままアイツにリベンジにいくぞ。まずは……)


「最上層へ駆け上がるっ!」


 熱く滾る闘志。

 先へ先へと急かす鼓動。

 リュウは口角を上げ、洞窟を駆け上がっていく。

 

◆◆◆


――飛龍の巣でやるべきことを済ませた男は、王の復活のために動いていた。


 西の魔境と恐れられる地底洞窟。

 瘴気漂う洞窟を、ある男が涼し気な顔で進んで行た。

 強力なモンスターが闊歩する危険極まりない場所に、靴音が響く。

 身に纏うは全身を包む灰色のローブと一本の剣だけ。

 モンスターからすれば間抜けなエサに違いなかった。


「……グフフ」

 

 ハイオーガは洞窟に大きく響く靴音を当然のように聞きつけた。

 青肌をクシャクシャにして、思わず涎を垂らす。

 靴音がこちらに向かって進んでいるとわかったからだ。

 不気味に嗤いながら、魔法銀ミスリルの棍棒を掲げ、獲物に突撃。

 

 衝突まであと僅か。

 そんな距離で男とハイオーガの目があった。

 男は僅かに眉を寄せ、灰色の魔光圧気エーテルグラストを放出。 

 

「……使役者が命ずる。退け」 


 急停止したハイオーガの目が灰色に染まる。

 ハイオーガは一度だけ男に頭を垂れると、洞窟の端まで身体を寄せた。 

 男はフードの下で薄く笑い再びゆっくりと歩き出す。

  

 その後も、何度となく道を遮るように現れるモンスター達。

 だが、例外なく虚ろな目つきで男に道を譲るのであった。

 男はひしめくモンスターと一切戦闘することなく最下層へ到達。

 そのまま数ある罠を避け、正しい道順で奥へと突き進む。


 男が辿り着いたのは最奥の一室。

 侵入者を撃退するために作られたガーゴイルが、入口の両脇に鎮座している。

 男は無言でローブの特殊効果を発動させた。

 男は姿と気配を隠して周囲の景色と同化。

 門番の目を欺き「封印の間」と彫られたプレートの下を潜った。  


 瘴気の充ちる部屋には、棺が3つ。その奥に黄金の祭壇が1つあった。

 棺の1つは蓋が取れていたが、残りの棺と祭壇は強力な結界で覆われたまま。

 周囲の瘴気を弾く透明の膜。

 魔を払う聖なる気が邪悪な瘴気に触れる度、微かに閃光を放っていた。

 男は眩しそうに眼を細め、祭壇に近づき、ひざまずく。


「……王。『絶望に彩られた魂』です。お納め下さい」


 懐から六芒星の描かれたカードを取り出し、禍々しく光る祭壇へ恭しく差し出した。

 六芒星が煌くとカードが結界を中和し、結界の内側へと侵入を果たす。

 役割を果たした六芒星が、カードから消えた。

 男は結界に焼かれないよう腕を引き戻す。

 純白のカードが祭壇に落ちた。 


ソウル解放リベイション


 まっさらなカードに老若男女の絶望した顔が映し出されたと思うと、祭壇の周りに魂が飛び出した。

 魂は死の瞬間に刻まれた絶望を、男の詠唱によって無理やり引き出されていく。

      

 まずは、生きたまま皮を剥がれ死んだ男。

 

「ぎゃああああ! うごおおお!」


 次は、オークに無理やり犯され続け絶命した女。   


「痛い! ひい! イダイ、イダイ、イダイィイイイイイイ!!」

 

 見るに堪えない惨劇。

 耳をつんざくような絶叫。

 悪夢のような光景が繰り返されていった。

 黄金の祭壇は、シーンのクライマックスで一番悲鳴を上げている魂から順番に吸収し、その度に振動していた。 

 カードに捕らえられた魂が尽きるまで。


 数分後、ようやく全ての魂を貪り尽した祭壇は振動を止める。

 カードは役目を終えた途端、風化した紙屑のようにボロボロになった。

 男は跪いたまま、己の主が満足した様子に安堵していた。

 祭壇が黒い邪気を放ち、男に念話を飛ばす。


「グレイよ。今宵も美味であった」


「……喜んで頂けたようでなによりです」


「だが、少々、量が足りん」


「申し訳ございません」


「以前、命じたことを覚えているか? グレイ」


「もちろんでございます。もうじき、帝国と王国が戦争します。必ずや、今宵よりも多くの絶望を届けてご覧に入れましょう」


「フッフッフッ! 悲鳴のスパイスが効いた魂を、期待しているぞ」


「お任せください」


 グレイは部屋から出て、来た道を戻って行く。

 入口を出た途端、ローブ越しに深夜の冷たい風が当たる。


「リュウとかいう餓鬼。どこにいきやがった? ったく。当てが外れたぜ! 帝国の諜報員も役に立たねぇな。何が『奴が向かったのは西で間違いない』だっ」


 舌打ちするグレイ。


(いいとこでモンスターを見つけて消してくあの嗅覚。思い出すだけで腹が立つ。オーガキングを生み出す実験の時はぶち切れて斬りかかったが、まんまと逃げられちまった。邪魔者は消しておくに限る。が、居場所がわからねぇのには参ったぜ)


「めんどくせぇ。探すのはもうやめだ。餓鬼の方から来たくなるようにしてやるぜ。そういえば、親しくなった女がいるって報告があったな……」


 グレイは嫌らしく笑って、灰色の魔力を高める。


「使役者に応じ、門から出でよ。『ワイバーン』」

 

 右手を突き出すと、空間に歪が生まれた。

 灰色のノイズが目障りな狭間から、黒い翼竜が押し出されるように飛び出る。

 グレイは怯えるワイバーンの首を掴み、乱暴に背中へ跨った。


「オラ! さっさと行け! 王都までだ! 女にちょっかいかけるついでに、もう一回、襲撃してやるか。あはははははは!」


 深夜の西の魔境上空に、狂気をはらんだ嗤い声が響き渡った。

お読み頂きありがとうございます。

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