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ガチャ68 Aランクモンスター 対 王国最強の戦士

ネット小説大賞 最終選考通過記念投稿!

 空を飛ぶ朱色の大鳥。

 赤黒く禍々しい魔光圧気エーテルグラスト

 眼下に群がる人間エサの物色を終えた大鳥型Aランクモンスター焔鳥ホムラは、適当に人間エサどもを炙ってから食べてやろうとくちばしを開き、火炎を吐き始めた。

 危険を感じた兵士達は我先にと後退していくが、ブレスの範囲は広大。

 逃げ切れなかった兵士達は高温の炎を身体に浴びてしまう。


「ぐあああ! あづい!」


「クソッ! 消えねぇぞ!」


「うごお! 目ん玉が燃え! もえじま……」


 人間を焼く異臭が立ち込める戦場。

 ホムラは舞い降り、鋭い嘴を焦げた死体へ埋める。

 血を啜り、骨を噛み砕く。生々しい音を立てながら、ホムラは飢えを満たすように食事を続けて行く。

 

 隙だらけのホムラ。

 攻撃を加える最大のチャンス。

 だが、兵士達はあまりにもかけ離れた強さと禍々しさを併せ持つホムラに恐怖し、完全に動きが止まっていた。

 

 そんな様子を見かねた宮廷魔術師団の長は、神経質そうな目を見開き、いつになく真剣な声色で後方待機していた魔術師団を叱咤する。

 

「前線で勇敢に戦っている兵士の犠牲を無駄にするな! 回復魔法が使えるものは負傷者の手当てを急げ! 魔術師団は攻撃準備だ。敵は火属性。ウォーターニードル斉射用意! 3、2、1……撃て!!」


 正規軍後方に陣取っていた宮廷魔術師団は、ザフィール団長の号令で中級水魔法ウォーターニードルを一斉に放つ。しかし、ホムラは嘲笑うように一声鳴き大きく羽を羽ばたかせ、ウォーターニードルが当たらない高さまで瞬時に昇ってしまう。

 ウォーターニードルを避けたホムラは嘴の横から炎を漏らつつ目を細め、魔力反応のあった場所を見つける。

 攻撃を加えてきた魔術師団は、ホムラにとって魔力の多い上質なエサの山。禍々しく鋭い目を喜に歪ませ、魔術師団へ向かって勢いよく近づいていく。


 「……総員下がれ!! 盾となれ、大地盾壁アースシールド!」


 ザフィールの短い詠唱で発動した土属性魔法によって、魔術師団の前面に高く分厚い土壁が一瞬で形成される。

 そびえ立つ土壁を見て、激突するのを躊躇ったホムラが一瞬だけ空中で制止した。

 

 ――確実に仕留められる。そう判断したリィオスはボソリと呟く。 


「罪のない人に手を出して、タダで済むと思わないことだね……」 


 笑みを口元に貼りつけたまま、凄まじい殺気をこめて目を細める。

 腰を落とし、聖剣と名高いブリュンヒルデの柄に手をかけた。

 景色が歪むほどの眩い魔光圧気エーテルグラストが放出される。

 直後、マルコにも視認できない速度で跳躍。


「……魔法剣・流星斬!」


 空を飛ぶホムラの正面に、リィオスが現れる。

 豪華な造りの黄金の柄から、光魔力を込められ限界まで加速させられた剣身が、圧倒的な速度で振り抜かれた。

 縦横斜めに流星の如く閃光が走る。

 まるで一人だけ時を止めて動いているかのような速度で一方的に斬りつけたリィオスは、殺気を霧散させ、ブリュンヒルデを鞘へと戻した。 


 リィオスの接近を全く感知できなかったホムラだったが、リィオスが強敵であることは瞬時に悟った。しかし、リィオスの手元が僅かに動いたように見えただけであり、今は圧倒的な光属性の魔光圧気エーテルグラストもなりを潜めていた。

 ホムラは今のうちに目障りな強敵を殺すために、鋭い嘴を突き刺そうと前へ進む。

 その瞬間、ホムラの身体中に走った剣線が露わになり、その場で無数の肉片となり息絶えた。

 落下する肉片は、聖剣と光魔力によって浄化され、発光しながら箒星のように消えていく。


 兵士の間に歓声が沸き起こった。

 相対したら命がないものと思えと教えられるAランクモンスターを、王国最強の戦士が一瞬で仕留めてくれたからだ。

 

「リィオス殿がやってくれたぞ!」


「うおおおお! 助けて貰ってばかりでどうする! 俺もやるぞ!」


「生きててよかった……。妻と子供に会えそうだ。ありがとうございます。リィオス様!!」


「雑魚に手を煩わせちゃいかんわな。オラ! ゴブリンども。オレ様が相手してやる!」


 口々に王国の英雄へと感謝しながら、士気を高めた兵士がゴブリンの大群を一気に蹴散らしていく。

 

 リィオスは斬り刻んだ肉片が浄化されながら地面へと落下していく中、わざと大きめに斬っておいた肉片を蹴って土壁へ跳躍。土壁をさらに蹴って城壁にいるマルコの隣へと着地した。


「リィオスさん。流石ですね。こっちは今のところ異常なしです」


 城壁で他に強敵が出現しないか警戒していたマルコが、戻ってきたリィオスを気遣うように声をかけた。 

 リィオスはブリュンヒルデを豪華な造りの鞘へ戻すと珍しく真剣な顔でマルコへと話しかける。

 

「なぜ、この距離まで姿が見えなかったんだろうね? 恐らくは灰色尽くめの男とやらの特殊魔法なんだろうけど……。まったく厄介な相手だよ」

  

「ホントに参りましたね。このレベルのモンスターが連続で来たら、兵が持ちませんよ。打って出るわけにもいけませんしね。守護隊がもう少しいれば違ったんでしょうが……。これも作戦だとしたら、かなりの強敵ですね」


「恐らく、作戦なんじゃないかな。まさかSランクモンスターが来るとは思えないけど、しばらくは最大限の警戒しないといけないね」


「……そうですね。本腰入れますか」


 リィオスとマルコが神経を尖らせ索敵を続けること数時間。

 オークやコボルトなどの低級モンスターが大群で押し寄せる中、Bランクモンスターが襲ってくる程度でAランクを超えるようなモンスターの出現は無かった。

 今は押し寄せる数も少なく、兵士達で十分対応できそうな状況である。

 2人はアイコンタクトをとり、軽く頷き合う。

 最低限の警戒をしつつ、休憩を取ることにしたのだ。


「……ところでマルコ君。ホムラが出現する前に、なんだかとても無礼なことを言っていたよね。私が忘れっぽい奴だという扱いは、やめてくれないかな? 心外だよ」


 リィオスが片方の目だけを閉じ、人差し指を立てて横に振りながらそう言った。

 マルコは呆れたように凛々しい眉を寄せ、吹きだすのを堪えながら言葉を返す。


「リィオスさん。何を今更……。むしろ、忘れてることの方が多いくらいじゃないですか」


「あのね。決して忘れているわけじゃないんだよ。ただ、どうにかなることは頭の片隅のさらにその奥へ追いやってしまうみたいでね。思い出すのに時間がかかるだけさ」


「はいはい。わかりましたよ。それで、今回は何を忘れてたんですか?」


「少し待ちたまえ。……うーむ。なんだったかなぁ」


そう言って、ウンウンと唸りながら、時間だけが悪戯に過ぎていく。

 リィオスが百面相をしている様を隣で見せ続けられているマルコは、最初こそ面白い顔するもんだと思っていた。しかし、そんな時間が5分も続けば嫌気がさすし、10分を超えれば怒りと変わるものだ。


 組んでいた腕にかかる指で貧乏揺すりをしながら、耐えかねたマルコが急かすため声をかけようとした瞬間、リィオスが閉じていた瞼を開け、晴れやかな表情で大声を出す。


「……ああ! 思い出した!!」


 爽やかな顔を浮かべるリィオス。

 マルコは渋面のままため息をついた。

 

「……はぁ。それはよかったですね。それで、なんだったんですか?」


 内緒だよ?と囁いたリィオスが、小さな声であっけらかんと思い出したことをマルコへ伝えた。


「今、飛龍の巣の最上層には推定Sランクの実力者『業火炎』が君臨しているはずなんだ」


「……業火炎? へぇー。……って神話に時々出てくるあの業火炎ですか!? ホントですか!!」


 マルコは驚愕のあまりに顎が落ちそうなほど大きく口を開けて叫んでいた。


書籍化することが確定し、感極まっております!

読者の皆様のお蔭です。ありがとうございます!!

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※最新話の下欄から行えます。

次回予定などは下記リンクの活動報告から行います。

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