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ガチャ65 鍛治師のハンマー(達人級)

 ドラゴンワームとの激戦と素材の回収を終えたリュウは、疲れを癒すためにアクエリアスの泉に入っていた。HPとMPを回復させる効能を持つ乳白色の湯が聖天幕内に湯気を立ち上らせている。

 深海を連想させる蒼い天然石が輝くバスタブ。

 4体の天使像が水瓶から癒しの温水を贅沢に掛け流している。


「……極楽、だな」


 呟いたリュウはゆっくりと立ち上がり、大きなバスタブの中心から縁へと湯をかき分けるようにして歩いていく。ギリギリまで注がれている湯が歩くたびに跳ね、水面に波紋を浮かべた。しかし、リュウがどれほど水しぶきを上げても、水面の調整を行う天使像が淡く光るだけで湯が零れることはない。


 リュウはアクエリアスの泉から出ると、肌着だけを着て、豊かな毛並みが心地よい絨毯の上を歩き、クラウドパラダイスへと腰かけた。

 

(ようやくレアガチャが回せそうだな)


 ドラゴンワームから回収した球体魔石と竜鱗をグリードムントの指環から取り出しながら、リュウはレアガチャが回せることに浮かれて笑みを零す。上機嫌で高級魔石と鱗を鉄製の解体台の上に並べながら、GPガチャポイントへと変換させるためにスマートフォンを出現させようとする。しかし、あることを思い出してリュウは思い留まった。


(……レアガチャを回したいところだが、その前に、エアステップシューズをなんとかしてやろう)


 リュウはドラゴンワームの強酸アシッドブレスを受けてマジックアイテムとしての機能を失ったエアステップシューズに目を向ける。何度も窮地を救ってくれたエアステップシューズは、酸を受けた部分が蒸発したように消えており、大きく穴が空いていた。


(似たような能力を持つ高ランクマジックアイテムが出るまでは我慢する選択肢もあるだろう。ランクBのマジックアイテムで、回数の制限もあったしな。だが、空中で軌道を変えられるという能力は、既に俺の中で失うわけにはいかないものになってるんだ。それに、愛着も沸いてる。直すぞ)


 そう考えながら、リュウはグリードムントの指環から鈍く光を反射する鍛冶師のハンマーを取り出した。ハンマーは片方が打つ面になっており、反対側は尖っている。材質にミスリル合金が使われており、大きさの割に重さを感じさせない作りとなっていた。


(このハンマー。随分前に手に入れたような気がするが、実際はそうでもないんだよな。ダンジョンの中だと時間感覚が狂いそうだ。

 鍛治師のハンマーの効果は『達人級鍛冶師の魂が宿ったハンマーでBランクまでの武器やアイテムを叩くと1ランク上へと昇華させることができる。1度使用すると壊れてしまう』というものだったな。エアステップシューズがランクAになれば、どうなるか。楽しみだ!)


 リュウがエアステップシューズを叩く。直後、緑の光がシューズを包みこみ、穴あきのシューズが高級感溢れる革製のブーツへと姿を変えていった。

 光沢を放つ濃厚なクロムグリーン。

 ブーツの側面には空を飛ぶ能力を意味するように翼のマークが印されていた。


 リュウはランクアップを果たしたエアステップシューズだったものを眺めつつ、笑みを浮かべている。


(渋いブーツだ。好みの色ではなかったんだが、これはこれでアリかもしれん! ……いかんな。ランクアップで能力がどう変わったかが一番重要。まずは鑑定だ)


 浮かれた様子のまま、リュウはクロムグリーンのブーツに鑑定をかけた。


―――――――――――――――――――――――

名前 ウィングブーツ

評価 A

価値 金貨50枚

説明 1日に3回まで空中でステップを刻める。MPを消費することで上限を超えて使用することも可能。上限を超える場合、一歩ごとに消費するMPが上昇していく点に注意が必要。

―――――――――――――――――――――――


(マジックアイテムとしての性能はかなり上がったな。上限を超えてステップが刻めるっていうのは限定的だが空中戦が可能になったようなもの。……価値が金貨50枚か。とんでもない額だな)


 ウィングブーツを見つめながら、リュウは考え込む。


(……そういえば、レアガチャ産の物を鑑定で見るのは初めてだな。いつもはガチャで排出された時にスマートフォンで説明を見れる。機能や使い方についてはそこで把握できるし、価値を確かめようなんて思ったこともない。だから、気がつかなかったんだな……)


 リュウはウィングブーツへと爪先から入れていく。踵を入れた時点でサイズ調整が始まり、自動的にジャストフィット。しなやかな黒い紐を結んでいきながら、ふと視界に入ったグリードムントの指環を鑑定すると、脳内に浮かんだウィンドウには0がいくつも並んでいた


(……ガチャ産のモノを売れば、レアガチャがいくらでも回せそうだ。だが、それは使う用と鑑賞兼保存用に幾つか同じものが揃わなければ、絶対にやらんがな)


 リュウは日本にいた頃を思い出していた。


(子供の頃はラインナップにあるものはコンプリートするまでガチャを続け、ダブったものは大切に棚へしまいこんでいたし、社会人になって始めたソーシャルゲームでは、キャラ育成系、武器強化系のゲームを問わず、進化前と進化後を必ず揃えるまで回していたよな)

 

 心に眠っていたコンプリートへの欲求がふつふつと燃え上がり始める。


(自由をつかみとるために世界最強になる。これは最重要かつ最優先事項だ。これに支障を来すのは論外だが、異世界限定ガチャのラインナップ完全制覇も併せて進めていこう。……まあ、こっちは趣味みたいなもんだがな)

 

 圧倒的自由を掴むために強くなる。その目標に対しストイックに行動していくことに変わりはないものの、ユグドラシルでの生きがいをもう1つ見出したリュウは僅かに笑顔を浮かべていた。


(よし。早速、世界最強とラインナップ制覇を同時進行するとしようか!)


 リュウは少年のように笑いながら、今度こそ左手にスマートフォンを出現させ、レアガチャのメニューを開くのだった。

お読み頂きありがとうございます。

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