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ガチャ64 6対の白翼

密林の覇者であるドラゴンワームを倒したリュウは、鮮血の雨に打たれながら勝利の余韻に浸り、凄惨な笑みを浮かべていた。


 黒革の防具を赤く染められたリュウは、切断面から血が出なくなったことを確認し、まずは底をつきかけたMPを回復するため、グリードムントの指環からMP回復ポーションを取り出して飲む。

 戦闘中には気にならなかった苦味に眉を寄せつつ、サバイバル魔法のリトルウォーターを発動。流水で肌に纏わりつく返り血を洗い流した。


(ようやく、血が出なくなったか。あれだけの巨体だと血が抜けるのにも時間がかかるな)


 リュウはそんな感想を持ちながら、魔法剣・建御雷建タケミカヅチで真っ二つになったドラゴンワームの死体へと、銀髪から滴を落としつつ近づいていく。

 大穴の開いている天井から差し込む光がスポットライトのように照らす中、リュウは解体しようとフレイムタンを鱗の間へ刺し込もうとした。

 その瞬間、洞窟内に複雑な形の影が差す。


(……なんだ?)


 リュウは天井を見上げた。

 大穴の淵。

 岩壁の断面に腰かけている白髪の美青年の姿が映る。

 白いローブのようなものを着ており、背から6対の翼を生やしていた。

 リュウは驚愕のあまり上手く声を出せず唖然とする。

 

 白髪の美青年の方は初めて己の姿を見た人間の反応に慣れており、高貴さを感じさせる燐光を放ちながら一方的に話し始める。


「そなたは中々の使い手のようだ。だからこそ、忠告しよう。これ以上先へ進むな。近頃、そなた達が言うところの『飛龍の巣』最上層は業火炎の支配下となった。彼女はとても気性が荒い。余の言葉を守れないことも多々ある。命が惜しければ、早々に立ち去るがよい」


「なぜ、そんなことを俺に伝えた? あんたはいったい、何者なんだ?」


「そこまで答える義理はない。あの者との約束は、十分に果たした。……さらばだ」


 白髪の青年はリュウに背を向ける。


「あの者って誰……おい!」


 リュウが呼び止める声を捨て置いて、青年は6対の白翼を羽ばたかせ、空中へ飛翔。

 光の粒子を周囲に拡散させながら、霊峰フェンロンの頂へと昇っていき、立ち込める霧の中へと消えていった。

 リュウは白髪の青年の姿が見えなくなると同時に全身に入っていた力が抜けた。


(鑑定なんて使える相手じゃなかったな。天使か? 人間じゃないのは間違いない。はっきり言って、次元が違う。リィオスより強いんじゃないか?)


 白翼の青年を思い出し、リュウは口の端を上げて嗤った。


(ドラゴンワームに勝っていい気になってる場合じゃないな。わざわざ忠告するくらいだ。業火炎ってやつも、相当な実力者だろう。できれば、現時点では戦闘を避けたい相手だな)


 心とは裏腹にフレイムタンを握る手に力が入り、柄に巻かれた黒革が引き締められて音が鳴った。


(まあ、支配下に置いたからといって、普段から業火炎とやらが最上層にいるというわけでもないだろう。それに、白翼の男がリーダーだとすれば、ある程度業火炎も理性があると思う方が自然。話し合いの余地がありそうだ。直ぐに殺し合いということにはならないような気がするな。

 仮に、見境のない奴だったとしても、いざという時にはマギスクロール【ワープ】があるし、生きて帰るくらいはできるか。だが……)


 強く握ったフレイムタンを持ち上げ、リュウは闘志あふれる表情を浮かべた。


(仮に戦闘になったとしても俺が勝つ。そういうつもりで準備しよう。修行も新技の習得もまだまだこれからだしな。

 灰色尽くめの男へのリベンジも済ませる必要があるし、あまり悠長にしてはいられないが、できる限りレベルと技量を上げたうえで最上層にいくぞ)


 リュウはさらに強くなることを誓いつつ、視線をドラゴンワームの死体に戻す。


(まずは、レアガチャを回せそうな素材の回収からだな)


 リュウはフレイムタンが鱗を通すか確かめるためにフレイムタンの刃先を突き付ける。しかし、強固な鱗は健在であり、僅かな傷もつかなかった。


(だったら……)

 

 リュウがフレイムタンに炎を纏わせ、再び鱗と鱗の間に刃先を当てると、簡単に内部へと滑り込んでいった。


(やはり、生きている時の方が耐久性は高い。恐らく、魔力や血液が通るからだろう。硬化スキルも死んだら維持できないようだな。しかし、素材としてはかなり良い部類だろう。鑑定しておくか)


 リュウは切り取った大きなドラゴンワームの鱗を手に取り、鑑定をかけた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 竜鱗(大)

評価 C

価値 銀貨40枚相当

説明 高い硬度と斬撃耐性を持つ低級竜種の鱗。生半可な武器では傷つけることはできない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(1枚で銀貨40枚だと!! 建御雷タケミカヅチで斬り裂いて使えなくなったもの以外は、残さず剥ぎ取るぞ!!)


 相当な価値を持つことを知って興奮したリュウ。逸る気持ちを抑えつつ、薄く炎でコーティングしたフレイムタンを使い、鱗を傷つけないように丁寧に切れ込みを入れていく。巨体相応の大きさを持つ硬い鱗を剥がし終わる頃には既に数十分が経過していた。


(素材として使える程度に切り出すのは不慣れだ。だが、それでもこんなに時間がかかるとは思わなかった。建御雷タケミカヅチの炎雷は威力が高すぎたのか、価値を保っている鱗が少なかったのも痛いな……)


 悔しがるリュウの目線の先には己の手で剥ぎ取った竜鱗の山があった。既に状態の良い竜鱗を30枚選別してグリードムントの指環へと収納済みであり、高く積みあがった鱗の塊は価値の無いゴミも同然のものしか残っていない。数にして100枚以上は使えないものだというのだから、落胆するのも無理はなかった。


(それにしても、こいつは何処に魔石を隠し持ってるんだ? 鱗を剥がしててもわからなかったぞ。もう1度確認していくか)


 リュウは再び切り開かれたドラゴンワームの中へと足を踏み入れて、魔石のありそうな胸元をフレイムタンで裂いていく。

 心臓があるであろう場所を切り取ったが、特に魔石らしいものは見つからなかった。

 徒労に終わり、ため息をつきつつ、リュウは考え込む。


(心臓の位置に必ずあるわけじゃないんだな……。だとすると、頭か? 流石にそれはないか。魔石なんて置いてたら脳が小さくなって知能が落ちそうだ。

 そういえば、ドラゴンワームは喉元に魔力を集中させることが多かったな。試してみるか)


 ドラゴンワームが強酸アシッドブレスを吐く前に魔力を集中させて、大きく膨らませていた喉元。そこにリュウが狙いをつけて裂いていくと、弾力ある肉の中に、半透明な球体魔石を発見した。

 大きさは握り拳より一回りほど小さい程度。

 

 高ランク魔石なのは間違いない。そう感じたリュウは高揚した気分のまま魔石に鑑定をかけた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 ドラゴンワームの魔石(大)

評価 B

価値 金貨25枚相当

説明 中規模魔導機関のコアとして使うことのできる魔力保有量を誇り、再充填も可能な逸品。しかし、再利用するごとに充填できる魔力が減っていく点には注意が必要。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よし!」


 Bランクの中でも高い価値を持っていたことに思わず声を上げ、半透明な球体魔石をグリードムントの指環へと収納しながら、リュウは口角を上げて笑った。


(これでレアガチャがまた回せるな! すぐにでも回したいところだが……。血を洗い流したとはいえ、気分的には湯につかりたい。戦闘中に魔力を大量に使ったことも影響してるのか、精神的な疲労も溜まってる。楽しみはとっておいて、まずは、アクエリアスの泉に入ろう)


 そう決めたリュウは密林の溜池の近くに移動し、聖天幕を展開させるなり中へと入った。すぐさまジャケットとボトムを脱ぎ捨てると、天使の像が湯を注ぐバスタブに肩までつかり、一日の疲れを癒していくのであった。

お読み頂きありがとうございます。

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