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ガチャ61 洞窟の中の密林

――飛龍の巣潜入から数日経過。


 銀髪の青年が作り出した雷球が、常闇に潜むものを炙り出すかのように光っている。

 昼間のように明るくなった洞窟の両側面から、突如として現れた2体のダーティーモープ。

 リュウを格上の相手だと本能で察したダーティーモープ達は、種族最強の一撃『土竜爪』を繰り出しながら突っ込んでいた。

 

「……フンっ。遅いな」


 瞬時に2度振るわれるフレイムタン。

 炎を纏った刀身がドリルのように高速回転しているダーティーモープの身体に紅い線を走らせる。

 

 通り抜けた魔法銀製の紅刃が、蒼い雷光を反射して、纏う炎を赤紫色に染め上げた。

 絶命したダーティーモープ達は勢いを失い、断面から臓物を溢しながら地へと落ちる。

 リュウはフレイムタンに着いた血を斬るように飛ばし、漆黒の鞘へ納刀した。


(まったく。これで10体倒したことになるのか。出現率が高くないか? こいつらは結構強いはずだ。増えなきゃいけない理由はなさそうだがな。寧ろ餌に困ったりしそうだ。まあ、俺としてはレベルが上がるし、魔石や爪が入手できるわけで、有りがたいだけだ。……気にしなくてもいいか?)


 何処か引っ掛かるような気がしつつ、リュウはダーティーモープの死体へ近づいて魔石とショベル爪を回収しようとして眉を潜める。魔石は溶けて薄茶色の液体になってしまっており、手にしたショベル爪は明らかに使い物にならないとわかるほど歪に変形していたからだ。


「チッ。またか……」


 思わすそう口にしてしまうリュウ。

 ダーティーモープの魔石は熱にすこぶる弱いようで、フレイムタンの炎は魔石を完全に溶かしてしまう。

 ショベル爪も本来ガチャポイントにできる素材だが、それは状態の良い時の話であり、今回のように高熱で溶け、鋭さを失ったものは価値を失う傾向にある。

 そのことをリュウは鑑定を繰り返したことで気がついていた。

 売却はできずガチャポイントへの変換もできない。

 愚痴を溢したくなるのも無理はなかった。


(気に入らんが、炎を纏わせて斬るのを止めるわけにもいかんしな……)


 レベルアップで上昇した筋力と敏捷を如何なく使って振るわれるフレイムタンの切れ味は凄まじい。だが、土竜爪を使って飛び込んでくるダーティーモープは回転する力も加わっており、普通の斬撃は刃が途まで食い込むものの、半ば辺りで止められてしまうのだ。

 相手が1体ならそれでも良いが、複数体の相手をする場合大きな隙を晒すことになり、土竜爪を喰らうことになるだろう。

 もしも土竜爪をまともに喰らえば、例えレベルが上がったリュウといえども絶命を免れない。それ故、高熱の炎で溶かしながら強引に振りぬいているのだ。


(魔粒銀糸のバンテージを使って格闘のスキル上げもしていきたいが……。敢えてダーティーモープと最初に遭遇した時のように、危険な戦い方をする必要もないか。あの時は、ああするしかなかっただけしな。

 かすっただけで大ダメージを受けるのが確定のミサイル野郎と毎回拳で戦っていたら、命が幾つあっても足りん。他のモンスターが出てくるまでは、我慢するしかないな)


 リュウは雷球を消し、明かりの魔法トーチを起動させた。柔らかな光が周囲を照らし出している。

 

(先に進もう。考えるのは後でもいい)


 起伏の激しい岩上を慣れた様子で跳び、比較的平坦な床へ降りるとリュウは上層へ向かうべく走り始めた。


◇◇◇


――さらに数日が経過。


(……飛龍の巣に入ってから結構たったが、なかなか上層へ向かう道に当たらないな)


 リュウはそんなことを考えながら、ブラックバットを魔粒銀糸のバンテージを巻いた拳で吹き飛ばしつつ、薄暗い洞窟を走っている。

 洞窟内の道は岩よりも土の占める割合が多くなってきており、草や木が生えているところも出てきている。草木のある場所には爬虫類のような小型の生物もいるようで、ブラックバットがそれらを餌として食べている姿も頻繁に見られていた。


(なるほどな。これだけ餌があれば鬱陶しいくらいにブラックバットが繁殖するのもわかるし、こいつが多くいれば当然アイツも……。真下か!)


 起動させて置いた気配察知がリュウの足元から迫る存在に反応した。


(数は1体か。串刺しにしてやる)


 脳内に響く警鐘音が危険度を示しているがリュウは気にせず炎を纏わせたフレイムタンを逆手に持ち、切っ先を地面へと向ける。


 ダーティーモープのショベル爪の先端が地面を突き破ろうとした瞬間、リュウはフレイムタンを力の限り振り下ろした。

 高熱を放つ炎剣が飛び出してきたダーティーモープの爪と頭を穴に縫い付ける。


「フギッ……」


 呆気ない声を出したと同時にダーティーモープは焼き尽くされ灰と化す。フレイムタンを鞘へ戻すと同時にリュウは自身の身体に再び力が満ちていくのを感じていた。


(魔石も爪も回収できないが、着実に経験値は溜まってレベルが上がっていくな。数日前にも上がったばかりだが、やはりダーティーモープは取得できる経験値が多いようだ。

 ダンジョンに来た目的は強くなることだし、ガチャが回せないのは仕方ないだろう。魔石は他のモンスターから採ればいい。可能ならダーティーモープを魔弾の拳銃や雷魔法で倒してもいいんだしな)


 そうは言っても、やはり価値のある素材を己で潰してしまっていることに、リュウは後ろ髪を引かれる思いをしていた。しかし、考えてもどうしようもないこともある。リュウはそう割り切ると、ダンジョン攻略に意識を戻し視線を前に向けた。


(む? 奥の方は草木が生えるっていうより、密林みたいだな。大きな変化があったのはここが初めてだ。もしかしたら、道が上層へ続いているかもしれんな!)


 リュウは目に見えた変化に期待感を持ちながら洞窟の奥を千里眼も使って覗きこんだ。密林のように樹木が生い茂る様はまるで深緑の森のようであったが、密林は天井に空いた大きな穴と同じくらいの範囲に留まっていることがわかる。

 リュウは大きく穴の開いた天井へと目を向けた。


(なるほど。そういうことか……)


 霊峰フェンロンから流れている滝が天井の穴から見えた。


(滝から流れる水は空中で霧散しているが、水分が消えたわけではないもんな)


 リュウは納得しながら視線を密林へと向けると水溜まりが幾つか見つかった。


(やはりな。湿度が高いとは思っていたが、水溜まりまであるんだ。モンスターが多く繁殖する理由はこれだな)


 そう考えながらリュウは上層へ向かう道であろう密林に足を踏み入れていくのであった。

お読み頂きありがとうございます。

ネット小説大賞一次選考通過しました!これも皆さんのお蔭です。

ありがとうございます!

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