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ガチャ54 修業の地を目指して

(魔粒銀糸のバンテージに付与する属性か……。

 火はフレイムタンがあるから必要ない。

 水、風、土のどれかだな。どうするか)


 リュウはしばらく考え込む。しかし、時間ばかり過ぎていき、結論が出なかった。


(……たまには直感に従ってみるか)


 そう思ったリュウは、半透明のケースにMPを込め始めるのだった。



 リュウは魔粒銀糸のバンテージに込められる限界までMPを込めていく。同時に、属性を付与するため流し込む魔力に水属性を付与させていった。

 MPを500注ぎ込んだところで、魔粒銀糸のバンテージはそれ以上MPを吸収しなくなる。

 

(これで完成だな)


 魔粒銀糸のバンテージを巻き付け、再び両拳を打ち合わせた。

 明らかに強度が増したことに満足そうに笑いつつ、リュウは水属性の能力をどうやって発動させるのかと考えていた。


(フレイムタンと同じで念じれば発動するようなタイプか?

 まあ、やってみればわかるな。

 水よ、拳を包め!)


 リュウが念じると、瞬時に魔粒銀糸のバンテージの上を水がグローブ状となって覆った。


「おお!」


 リュウは突如現れた水のグローブがある程度の威力を持っているだろうことに驚いていたが、僅かに魔粒銀糸のバンテージから魔力が抜けたことに気がつき眉をひそめた。


(……使った分消費されたな。纏う時間だけ魔力を放出する感じか? まあ、攻撃用に使うなんて滅多にないだろうし、ストックを作るのは後回しでいいか。次は、魔弾の精製だな)


 リュウは魔粒銀糸のバンテージを生成するために使っていた円筒型ケースをグリードムントの指環へと戻し、魔弾の精製を始めていく。


(MPが増えたし、ある程度魔弾も量産できた。グレイウルフやゴブリンなんかの相手には今後もMP20の魔弾でいいが、相手が強くなるとそれでは物足りない。

 今回の分から、MP40の魔弾を精製していこう)


 リュウは慣れた手つきで魔弾の拳銃の弾倉を振り出して、6つの空穴にMPを込めていく。

 数回繰返し、魔弾がそれなりに貯まったところで、グリードムントの指環にしまった。


(残りのMPは1500くらいか。

 そういえば、魔弾には最高でいくつMPを込められるんだろうな? 数発くらいは威力の高い魔弾があってもいい。少し試してみるか……)


 リュウは再び魔弾の拳銃の弾倉を振り出して、1つの穴にだけMPを注ぎ込んでいく。


(1000も超えたな。

 おお! 1200か。マジックウェポンとマジックアイテムでは随分違うんだな。上限は1500ってところか?

 ……なに? 1500を超えただと! チッ。魔力枯渇しちま)


「……グッ」


 意図せずMPを使いきってしまったリュウは魔力枯渇現象を引き起こし、魔銃を手放しつつクラウドパラダイスの上に倒れこみ、眠りについてしまう。


ーー翌朝。


「……何時だ?」


 リュウは重いまぶたを僅かに開け、美しい意匠が施されている白銀の懐中時計を取り出した。

 ディザイアクロックは9:00を指し示している。


(まさか、魔弾に1500以上もMPを込められるとは。予想外だったな)


 そんなことを考えながら、リュウは魔力が練り込まれた特殊な雲で形成されたベッドの上で身体を起こし、ベッドサイドに座る。

 リュウは視線をクラウドパラダイスの中央に向け、無造作に放られている魔弾の拳銃を一瞥した。


(だが、無限ってこともないハズだ。じゃなきゃあAランクに収まりきらないだろう)


 リュウは立ち上がって劣竜革のジャケットとボトムを着る。

 ボトムの上から装着したホルスターへと流れるように魔弾の拳銃を戻し入れ、フレイムタンを腰に差し、全身を覆うような外套を一気に羽織った。


(魔弾の検証は夜の修業が終わってからで良いな。

 魔粒銀糸のバンテージの使い心地も気にはなるが、まずは飛竜の巣へいくことを優先したい。霊峰フェンロンまでは全力で走ろう)


 リュウは眠気を覚ますために身体を伸ばし、深く息を吐いて聖天幕から出る。


(閉じろ。聖天幕)


 グリードムントの指環にハンカチサイズまで折り畳まれた聖天幕を収納した。

 暖かみを感じさせる太陽が草原に立つリュウを照らしている。


「……よし。いくか」


 リュウは霊峰フェンロンのある南へ向かって、力強く駆け出して行った。


◇◇◇


ーーーー数日後。


 朝陽が昇り始めている頃。

 

 外套で全身を隠している銀髪の青年が、生い茂っている森の中を縫うように走っている。

 

 リュウは時折襲いかかってくる野生の獣やモンスターを魔粒銀糸のバンテージを巻いた拳で弾き飛ばしながら、霊峰フェンロンへと向かっていた。


(……またか)


 リュウが森に入って数日経っている。

 はじめの頃は多少驚いたものだが、ゴブリンやグレイウルフといったモンスターが死角から襲ってくるのを、今は当たり前のことと思うようになっていた。


 気配察知で頭上でモンスターが旋回していることを知覚。


(空中を飛ぶモンスターか。この魔力量。また、あいつか。数が多いな)


 リュウは警戒する素振りを全く見せず、ポーカーフェイスのまま突き進む。


 そんなリュウを見て鳥型Dランクモンスターのビッグバードは焦げ茶色の体を揺らしながらあざけ笑い、木々の少ない空間へ獲物リュウが足を踏み入れるのを、空中で待つ。


 いよいよリュウが木々の少ない開けた場所へ足を踏み入れるというタイミング。


 ビッグバードが旋回を止め、全長4メートル程もある翼を折り畳み、リュウへと急降下していく。


 Dランクモンスターでも上位の存在であるビッグバードは、森のハンターと呼ばれるほどの恐るべきスピードでリュウの後頭部付近へ風切り音をたてながら接近。


 鋭利なくちばしでリュウを貫こうとしていた。


「……フン!」


 もう少しで嘴に頭を貫かれる。そんなタイミングでリュウはバンテージを巻いた右手で裏拳を放つ。


 灰銀の拳が鋭利なくちばしへ吸い込まれるように当たり、細木の枝のようにくちばしを軽くへし折った。


 ビッグバードは裏拳の衝撃で数メートル離れた木まで吹き飛び、背中から勢いよくぶつかる。


「……グヘッ」


 肺の中の空気を全て押し出され、ビッグバードは意識を失って地面へと落下した。


(図鑑には食用って書いてあるが、もう数体分確保してあるし、あいつはあのまま放っておこう。時間の無駄だ)

 

 リュウは森の中を再び走り出す。


(……しかし、長いな。森に入ってからもう何日も経ってるぞ)


 そんなことを考えながらリュウが走り続けていると、凄まじいまでの密度を保っていた森の樹木が少しずつ減り始めていった。

 次第に太陽の光を感じられるようになってきており、リュウは目を細めながら口角を上げている。


(ようやく、森から抜けれそうだな。地図通りならこの先に、霊峰フェンロンがあるはずだ)


 太陽が昇り、眩しく感じるような朝陽が差し込む森の出口。

 リュウは期待を胸に抱きつつ、駆け抜けて行った。

お読み頂きありがとうございます。


感想、ブックマーク、評価が更新の励みとなっています!

※最新話の下欄から行えます。


なんとか、投稿できました!

骨折やパソコンの不調にめげず執筆。

少しだけ自分を誉めたい。

誕生日おめでとう。頑張ったな、俺。


ということで、


投稿予定などについては活動報告(下記リンク)にて行います。


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