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ガチャ51 飛龍の巣へ向かって

「任せたからな。俺はもう行く」


 そう言ってリュウは立ち上がり、リィオスとマルコを一瞥して客室のドアを開ける。

 マルコとリィオスは去っていくリュウの背中を見ながら助言をしようとした。


「ワイバーンに食われるんじゃねぇぞ」


「最上層に行く前に、しっかりレベルを上げておくんだよ」


 2人からの気遣いを感じたリュウは口元に笑みを浮かべつつ、返事代わりに左手を上げる。

 その後、リュウは振り返ることなくそのまま屋敷から出て行った。



 リィオスの屋敷を出たリュウは王城へ向かう前に考えていたことを思い出していた。


(飛龍の巣にそのまま行きたいところだが、買い物をしておかないといけない。食事に使う道具と食用モンスターがわかるくらいの本は用意しておきたいな。その辺の雑貨を売ってる露店に入って適当に買っていくか)


 リュウはそんなことを考えながら目当ての物が売っていそうな露店を探していく。何件かを通り過ぎ、あまり良いところが見つからないと思っているところで、年季を感じさせる露店を発見した。


(ここは……。所々に魔力が宿っているアイテムなんかもあるみたいだ。少し小汚い感じだが、その分扱っている品数も多そうだ。意外と良いものが売っているかもな)


「店主。ちょっと入用でな。今から言うものを見繕みつくろってくれないか?」


 リュウは欲しい物を店主へまとめて伝えた。


 ナイフ×1 

 フォーク×1

 スプーン×1

 コップ×1

 皿セット×1

 鍋セット×1

 キッチンナイフ×1

 カッティングボード×1

 調味料セット×1

 食用モンスター図鑑×1

 王国全土地図×1

 マント×1


「……ちょっと待ってな」


 店主はそう言った後、しばらくの間、無言で露店の中を探し回っていく。

 ほどなくして全てを見つけ出した店主はリュウへと代金の要求をする。


「そら。値段は全部で金貨5枚だ」


「おいおい。結構な値段だな?」


「調味料と図鑑と地図が高いんだよ。嫌なら、やめておけ」


(いちいち鑑定している時間が惜しいな……。金なら、飛龍の巣でたっぷりと稼げばいい)


「いや、必要なものだ。買おう」


「……毎度あり」


(あとは、食い物を数日分は確保したいな。うまそうな匂いもしてきたし、露店をいくつか巡ってみよう)


 リュウが歩きながら食べ物を出している露店を眺めている。


(サンドイッチ、ホットドッグ辺りはユグドラシルでも定番なんだな。スープ系も欲しいところ……。順番に行くか)


 リュウは目についた所から店主に声を掛けて行き、サンドイッチやホットドッグはあるだけ全て買い、スープは鍋に入っているスープを買ったばかりの鍋に移してもらっていた。


「「「毎度あり! 兄ちゃん。また来てくれよ!!」」」


 リュウへの礼を言った後、どの店主も売り物が捌けてやることがなくなったので、ホクホク顔で店じまいをするのであった。


(よし。これで準備は整ったな。飛龍の巣へ向かおう)


 準備を終えたリュウはそう思いながら大通りを歩いて行った。



 王都の重厚な城門を抜け、リュウは地図で高難易度ダンジョン"飛龍の巣"がある霊峰フェイロンを探す。

 リィオスが王国最南端にあると言ったことを思い出し、目で追っていくと王国と獣人国との間に巨大な山脈が境界線を引くように存在していた。

 

 (ここか……。とんでもない場所だな。距離もそれなりにあるみたいだし、全力で走っても数日はかかるぞ。街道を使って行けば早いかもしれないが、ああいう連中と何度もすれ違うのも、できれば避けておきたいところだ)


 そう考えているリュウの隣を何処からか来た商隊が通り抜けた。数台の馬車に乗せた荷物が城門にて検閲されており、商人とその護衛達は身分証の提示に合わせて犯罪者でないかを断罪の水晶で識別されていた。無事に検閲を終えた商隊は王都の中へと消えていく。


(俺の外見や装備については既に知られていると思っていいだろう。街道を歩いて行くなんてのは、敵に自分の居場所を教えてしまうようなもの。面倒だが、街道からは離れて行くとしよう)


 リュウは西に向かい、小高い丘を越えた辺りで後ろを振り返る。城門にいた門番の姿が丘で遮られてみることができなかった。門番も同じくリュウを確認できない状態だろう。

 リュウは人目を完全に避け切ったことを確信し、グリードムントの指環から古びたブラウンのマントを装着した。

 全身を覆うマントを着たリュウを、遠目から外見のみで判断するのは非常に困難になったと言えるだろう。


(よし。全力で行くか。

 チンタラしてたら俺が灰色尽くめの男にリベンジする前に、あいつらに先をこされちまうしな)


 リィオスやマルコの圧倒的な強さと、己の敵わなかった強敵がリュウの脳裏を過ぎた。

 

(ユグドラシル最強になるためには、どうせいつかは超えなきゃならん奴らだ。やってやるさ!)


 はやる気持ちを足に溜め、深く息を吸う。

 直後、リュウは撃ち出された弾丸のように霊峰フェイロンへと全力疾走を開始した。



 リュウが南に向かって走り始め、数時間が経過した。草原に生える木や丘が時々流れていくのを、横目で感じながら、リュウは前だけを向いて走っている。


(草原は意外とモンスターに合わないもんだな)


 リュウは転移前の地球でやっていたゲームではスライムなどのモンスターとの戦闘になることが多かったことを思い出していた。


――さらに走り続けて数分後。

 

 リュウは千里眼越しに、灰色の狼が集団を見つけつつ疾走を続けていた。

 狼たちは大きなワイルドボアを仕留めて、食事を始めている。


(……ん? あれは、グレイウルフの集団か。

 退屈していたところだ。

 数は30くらいか?

 肩慣らしには、丁度いい!)


 最早千里眼を使うほどの距離でもない。リュウはそう判断して千里眼を切った。

 走るスピードはそのままに、腰に下げた魔弾の拳銃を手早く引き抜く。


 リュウは獲物を喰らっているグレイウルフの頭部に狙いをつけ、疑似フルメタルジャケット弾を撃ち放った。


 涎を垂れ流しながら仕留めたばかりのワイルドボアを食べていたグレイウルフの頭部を魔弾が貫通。


「グッ……」


 狼の眼球から色が無くなり、耳付近の弾痕から濁った血を流しながら倒れる。

 倒れた個体の近くにいたグレイウルフが振り向きリュウを見つけた。


「……ウォオオオオオンン!!」


 一匹の灰色狼が『敵があそこにいる』と知らしめるように吠える。

 グレイウルフ達は一斉にリュウを睨み、強みである敏捷性を生かして走り出した。


 リュウは銃口を横へと滑らせ、間断なくトリガーを引いていく。

 連続する銃声と共に、岩にめり込むほどの威力を誇る魔弾が音速を超えて飛ぶ。

 

 5回の発砲。

 同じ数だけ、狼の死体ができあがった。


 それでも20を超えるグレイウルフ達は、リュウを見つけるとワイルドボアを仕留めた時のように、囲い込もうと扇状に広がる動きを見せる。


「やらせんぞ」


 リュウは右手で魔弾の拳銃の弾倉を振り出しつつ、左手でグリードムントの指環を起動。

 魔弾を空いた弾倉へと全て入れ込み、弾倉を銃身へと振り戻す。

 

 無機質な銀色の銃口が囲い込もうと走り込むグレイウルフ達に再び向けられた。


 死を告げる銃声が草原に再び鳴り響く。

 リュウから向かって左端から順に、6匹が魔力で形成された弾丸で撃ち抜かれて絶命。

 

 同胞が死んでいくことをいとわずに、隊列が崩れたグレイウルフ達は息を荒くしてリュウへとさらに距離を詰めていく。


 互いの距離はあと数十メートル。

 リュウは魔弾の拳銃をホルスターに戻しつつ、左腰に差していたフレイムタンの柄を軽く握った。

 

 炎の魔剣を抜き放つべく構えたリュウと、グレイウルフ18匹が交差していく。


 先頭を走っていたグレイウルフ3匹が牙を剥き出しにしてリュウへ飛びかかった。

 

「……斬るッ」


 リュウはさらに加速し、フレイムタンを右斜め上に向け抜刀。

 鮮やかな紅刃が飛びかかって来た3匹の灰色狼を一刀の元に斬り捨てた。

 空中で斬られたグレイウルフが濁った血と臓物を零しながら落ちていく。


 リュウは返り血を避け、奥から走り込んできていた2頭の狼をすれ違いざまに斬り伏せる。

 立ち止まり包囲されるのを嫌ったリュウはその場を駆け抜けた。


 一気に同胞を薙ぎ倒していった強敵リュウが、灰色狼達に対し背を向けている。


「「ウオオオオオオン!!」」


 残されたグレイウルフ10匹は本能的に襲うべきだと感じ、無防備なリュウの背後から牙を立てようと走り出す。

 一番最初に辿り着いた俊足の灰色狼がリュウの頭部を噛み砕こうと跳躍した。


 背後にグレイウルフの殺気を感じたリュウは、後ろへ倒れ込むように上体を落とし、右足を後ろへ出しつつ身体をひねる。

 リュウはその体勢から右腕一本でフレイムタンを豪快に斜め下へと斬り下ろした。

 

 一刀両断。

 リュウの肩口まで跳躍していたグレイウルフの顔から尻尾まで、魔法銀製の紅刃が斜めに通り抜けていった。

 数舜の後、斜線がズレて灰色狼だったモノが濁った血を噴き出しながら地面へ落ちる。

 

 攻撃を終えたリュウに、グレイウルフが血の雨の中を次々と駆け抜けて突進してくる。


 リュウは斬り下ろした動きを利用して完全に後ろへ向き直り、突進してきた先頭のグレイウルフにフレイムタンを振り下ろす。

 続け様に、その後ろから来ていたグレイウルフの顎下を掬い上げるように斬り上げた。


 胴を断ち切られた狼達の四肢が大きく痙攣し、地面に血の池を作っている。


 一瞬の静寂が訪れた。


(チッ。囲むために時間を稼いでいたのか。まあいい。次で決める)

 

 ジリジリと徐々に包囲網を狭めていくグレイウルフ達。

 タイミングを計っていた灰色狼達が一斉にリュウを喰い千切ろうと牙を剥いて襲いかかる。


 リュウは限界まで灰色狼達を引きつけた。

 もう少しで、リュウの身体に狼たちの牙と爪が届く。

 

 その瞬間。


「燃え上れ!!」

 

 フレイムタンが激しい炎を噴き出した。

 直後、リュウはその場で旋回しつつ、炎纏う魔法銀製の刃を水平に薙ぎ払う。


「はああああ!」


 8匹のグレイウルフはまとめて斬り飛ばされ、真っ二つになった身体は炎で一気に燃え上り、魔石を残して塵と化した。


(俺に狙われたのが運の尽きだ。魔石は有効活用させてもらおう)


 リュウはそんなことを考えながら魔石を拾い上げ、グリードムントの指環へと収納。

 遮るもののない草原を再び南に向かって走り出した。

お読み頂きありがとうございます。


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