ガチャ49 執事シリウス
予定より分量が増したため、分割して投稿します。
リィオスは柔和に笑って碧眼を細め、右手を上げ人指し指を立てた。
たっぷりと間を置き、囁くように声を出す。
「かつての勇者と同じく、異界より来訪せし者であり、希望の宝玉クライノートの所持者だよ」
「へー。リュウって勇者と同じで異界出身で希望の……ってええ!? フゴ!!」
リィオスが神速で腕を伸ばしてマルコの口を塞ぐ。
大広間にマルコの絶叫が響くのをなんとか阻止したリィオスは、マルコのあまりの驚きように思わず声を上げて笑ってしまった。
「ハハハ。やっぱり、驚いたね」
「そりゃあ、そうですよ! でも、これでリィオスさんがリュウに入れ込んでた理由がわかってスッキリしました。リィオスさん、勇者物語好きですもんね」
「あれは私の聖書なのさ! 勇者は弱きを助け……」
リィオスは自身の聖書である勇者物語の素晴らしさを説明しようと興奮気味に話始める。
しかし、放っておけば話が長くなると感じたリュウは会話の途中で遮った。
「おい。リィオス。その勇者物語とかいう伝承の話は、時間のある時にしろ。俺は刻印を済ませたらさっさと飛龍の巣に行きたいんだよ」
リィオスは折角勇者物語の素晴らしさを弟子達に教えられるのにと思いながらも、リュウの機嫌を損ねてブリュンヒルデに刻印をして貰えなかったら意味がないと考え直し、口をつぐむ。
そんな2人のやり取りを見ていたマルコは、今月の給料全額分(金貨10枚)を情報料としてリュウに払っており、懐事情にそれほど余裕が無かった。
通常、印を刻む際にかかる代金はランクが高ければ、それに応じて倍増するもの。
代金次第では貯金がかなり減るかもしれない。そう考えたマルコは恐る恐るリュウに問いかけた。
「……それで、刻印にかかる代金は?」
「私も執事やメイド達を食べさせていかないといけないからね。白金貨を何枚も必要と言われたら困る。……ちょっとはおまけしてくれるよね?」
リィオスはリュウに念を押すように尋ねた。
ランクSの魔剣に刻印をしてもらうには、どれだけの大金が必要かはリィオスも十分に理解している。
それでもリィオスはリュウに言わざるを得ない理由があった。
最近、特に自分に対して遠慮が無くなってきたリュウのことだから、希望の宝玉を使用するために、法外な額を請求する可能性もあり得るからだ。
莫大な金が要求されるかもしれないと感じ、戦々恐々とするリィオスとマルコ。
リュウはそんな2人を見て肩を竦めていた。
(俺を守銭奴だとでも思ってるのか? まぁいい。はじめからあまり金をとるつもりは無かったし、こいつらは、もう俺の身内みたいなもんだからな……)
内心を表情には一切出さずにリュウは答える。
「……そうだな。初回刻印記念として特別サービスといこうか。今回に限り、お前達からは刻印代を取らないことにする」
「何? 本当か! お前は本当に傲岸不遜が売りのリュウなのか!?」
「良かった! これでシリウスに説教されないで済みそうだ!!」
普段では考えられないような大金を支払うことになると思い込んでいたリィオスとマルコ。
良い意味で想定外のことが起こり、口々に喜びの声を上げた。
リュウはそんな2人をなんとなく微笑ましく思いつつ、周囲を見回した。大広間は人の往来が増えており、重要なことを長く話すのに適しているとは言えない状況になってきている。
「……お前達。声が大きいぞ。本当はこの場で手早く刻印を済ませたいところだが、部外者が多すぎる。どこか良い場所はないか?」
リュウの言葉を聞いて冷静になったリィオスは声の大きさを落としてリュウに答えた。
「それなら、私の屋敷に行こうか。修練場なら誰にも邪魔されないだろうしね」
「今なら、ポールがいるから王城はよっぽど心配ないだろ。俺もそれでいいと思うぞ」
「……よし。修練場へ向かうか」
リュウ、リィオス、マルコの3人は王城から出て、リィオスの屋敷へと向かって行った。
▽
先頭に立って歩いていたリィオス。後ろにリュウとマルコを連れていた。
大通りをしばらく歩き、それほど時間をかけずに屋敷の入り口へたどり着く。
門を開き、美しい芝生と天然石で作られた池のある庭を抜け、3人は屋敷の中へ入って行った。
「お帰りなさいませ。リィオス様」
主人の帰りを察していたのか、玄関で待ち構えていた初老の男性が折り目正しく腰を折って頭を下げていた。
リィオスはブリュンヒルデに刻印できるかもしれないと期待に胸を踊らせており、いつもより機嫌良く笑っていた。
だが、刻印を誰にも邪魔されずに終えたいとも思い、頭を上げたシリウスに注文する。
「シリウス。リュウ君とマルコ君と一緒に客室に入るよ。しばらくは誰も通さないでくれるかい?」
「かしこまりました。ところで、リィオス様……」
「なんだい?」
シリウスの眼光がリィオスを射抜いている。
「また、お金を浪費されたのではないですか?」
「っぐ。な、なんのことかな」
「……そのだらしのない笑みを見せた後は、大抵、後になってから、必要のないものに大金を使ったとおっしゃるので心配になりまして」
シリウスの鋭い指摘にリィオスは背中から冷や汗をかきはじめる。
「こ、今回はちゃんと価値のあるものだよ! 何に使ったか、言う訳にはいかないけど」
そう言ってリュウとマルコを横目で見たリィオス。
シリウスは1度咳払いをして、執事に相応しい目付きに戻し、客人であるリュウとマルコに向かい直す。
「オホン。失礼しました。
どうやらリュウ様とマルコ様に関係があることなんですね?」
リィオスがシリウスを恐れる気持ちをわかるような気がする。リュウはそう思いつつ、質問に答える。
「詳細は言えないが、俺とリィオス、マルコとの取引だ。損はさせない。必ず対価以上のモノを渡すことになるだろう」
「……ふむ。リュウ様がそこまでおっしゃるのなら、これ以上は何も言わないでおきましよう。
疑うような発言をしたことをお許しください」
リュウは少しだけ同情するような表情を作ってシリウスへと声をかけた。
「気にしていない。気分屋のリィオスの執事なんてやってるんだ。苦労、してるんだろ?」
「……私の口からは何とも言えませんね」
数秒の間を置いてからそう言ったシリウス。
リィオスは怒ったような顔をして喚く。
「そんなの苦労してると言ってるようなものじゃないか!」
「煩い奴だな。さっさと客室まで行くぞ」
「最近、扱いが酷過ぎないかい!?」
「……プッ。リィオスさん。自業自得って奴ですよ」
「時間がもったいない。俺は先に行く。来るのが遅かったら、取引は無しにするからな」
勝手知ったる我が家のようにリュウが客室へと向かい出す。
「君たちは本当に……。 えっ? わかったよ! すぐに行くとも!!」
リィオスとマルコは慌ててリュウの背中を追いかけていった。
玄関に残されたシリウスは客室へ向かって、誰も見ていないのに頭を下げる。
「今後とも、我が主人をよろしくお願いいたします」
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