ガチャ48 深まる仲
日刊総合best5入り記念投稿!
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「全く、騒がしい! それに、ここは皆が通る階段ですよ。3人も居たら通る人の邪魔になるでしょう。早く降りたらどうですか?」
螺旋階段にて和やかに笑いあっていたリュウ、リィオス、マルコの3人は、上から取り巻きの貴族を率いて降りてきた貴族派の文官に嫌味たらしい口調で叱責された。
豪著な服で着飾った男が鋭い目つきで見下すようにリュウを見ている。
アイコンタクトを交わしあった3人は一様に頷くと、口論になる前に階段を降りて行った。
▽
大広間へ着いた3人は人気のない場所へ移動する。マルコは先ほどの貴族達がリュウへと向けた敵意ある眼差しを思い出していた。
「やっぱり、お前かなり嫌われてるな。まぁ、階級を大事にしてる奴等からしたら当たり前だけど」
「そうだね。それに関しては私も同意かな」
マルコが凛々しい眉を寄せて話すと、リィオスが金髪を軽く揺らしながら頷く。
そんな2人を一瞥し、リュウは鼻を鳴らして返事をした。
「別に、あんな連中に好かれようなんて思ってない」
「はっきりしてるねぇ。貴族にも立派な人はいるんだよ?」
「ああ。わかってるよ。さっきの奴等みたいに権力を傘に着た奴が気に入らないだけだ」
マルコは渋面を浮かべたまま呟く。
「……俺は心配だな。お前って貴族から見ると短気とか喧嘩っ早いなんて生易しいもんじゃなくて、ナチュラルに喧嘩売ってるみたいな感じだしな。
早く修業行けよ。じゃないと面倒事が増える一方な気がする」
マルコの言い分は一理ある。それに、堅苦しい雰囲気の王城に長居したいとは思わない。リュウはそう思っていた。
「俺としてもそうしたいが……。良いのか?」
「良いのかってお前。そりゃあ、良いに決まっ…………てないわ」
途中まで言いかけてマルコはあることを思い出していた。
リィオスはマルコの様子を見て不思議そうに尋ねる。
「あれ? マルコ君。リュウ君に何か大事な用事でもあったのかい?」
マルコは謁見前にリュウが刻印使いであることを、金貨10枚を払って聞いている。しかし、リィオスはまだ何も聞いていないのだ。
(俺だけ高い金を払っておいて、上司であり師匠でもあるリィオスさんが無料で話を聞けるのは、腑に落ちんぞ!)
そう感じたマルコはリュウに確認する。
「ええ。そうなんですよ。
……おい。リュウ。あのこと、リィオスさんは知ってるのか?」
「いや、まだ言ってないぞ」
リュウもマルコの意図には気がついていたが、それをリィオスに悟らせることなくポーカーフェイスのまま簡潔に答えた。
リィオスは弟子達だけで盛り上がっているのに少しだけ仲間外れにされているような気持になる。
「ん? 2人だけの秘密ってやつかい? 気になるなー。師匠である私にも教えてくれない?」
「構わないが、有益な情報について話すことになるから、聞くなら情報料として金貨10枚貰うぞ」
「えっ! 結構高いね。金貨10枚なら払えないことはないけどさ。いったい何について教えてくれるっていうんだい?」
レアガチャを回すための資金はどれほどあっても困らないと考えているリュウは、内心で喜びつつも、努めて冷静に振る舞った。
「フレイムタンのような高ランクの武具にも簡単に印を刻める職人の紹介、だな。お前の持ってるブリュンヒルデにも刻めるかもしれないぞ」
聖剣ブリュンヒルデはSランクのマジックウェポンだ。
当然リィオスも王国お抱えの授印職人達に印を刻みたいと1度は依頼している。
しかし、魔力紋を刻むためには難易度が高すぎ、授印職人達からは失敗する確率が高すぎて無暗に請け負うことはできないという返答だった。
そんな状況であり、リィオスは聖剣に印を刻むことを半ばあきらめていたが、リュウの言葉を聞いて碧眼を大きく見開いていく。
マジックポーチから金貨が詰まった革袋を取り出しリュウへと突き出した。
「……是が非でも払おう! さあ、受け取り給え!! そして、今すぐに教えたまえ!!」
「よし。確かに受け取った。リィオス。少し耳を貸せ」
リュウは周囲に誰もいないことを確認し、リィオスに近づく。そして、リュウが刻印というスキルを持っていて、僅かな時間でフレイムタンに印を刻んだことを説明した。
「そうか!? 盲点だった! 勇者物語を読んでいながら気がつかなかったとはね。私はなんて無駄遣いをしてしまったんだ……」
勇者物語好きのリィオスがその可能性に気がつかなかったのも、仕方ないことかもそれない。
伝承『勇者物語』では、勇者が刻印スキルを入手してはいるものの、それは晩年近くのことであったとされている。希望の宝玉を使って勇者が刻印スキルを入手した時、同時に幾つもの武具やアイテムも出現していたという記述もあった。
しかし、勇者が刻印スキルを使ったのは己の愛剣エクスカリバーのみで、他には記録が残っていない。そのエクスカリバーも、勇者が亡くなった時に光となって消えていったと書かれており、今となっては検証不可能であった。
そのため自在に印を刻むスキルなど無かったと主張する研究者もいるほど。
数少ない勇者物語の中でも変わり者と呼ばれる研究者は、希望の宝玉のレベルが上昇して、同時に複数の宝玉を出すことができるようになり、さらに、『入手できるリスト』にスキルが加わったのではないかという持論を展開しているようだ。
このように、多数派の意見としては刻印スキルは存在すらも怪しいと言われていた。
仮に存在していたとしても、伝説の勇者が老成する頃にスキルレベルが上がったであろう希望の宝玉でようやく入手できるというもの。
リィオスは無意識でリュウのことをまだまだ伝説の勇者レベルには達していないと思っていた。そのため、気がつけなかったのだ。
マルコは後悔しつつ長考するリィオスがあまり驚いていないことを不思議に思って声をかける。
「えっ! リィオスさん。知ってたんですか? ……リュウが伝説の勇者が持っていたかもしれないっていう、刻印スキルを持っているってことを。折角驚く顔が見れると思ったのになぁ」
「……私が驚く? ああ。そうか。
リュウ君。マルコ君に例のこと教えてもいいかな?」
リィオスがそう言ってリュウを見た。
リュウは気負いもなく平然とした様子で答える。
「ああ。マルコになら、教えてもいい」
「おお! 流石は兄弟子だね。
では、マルコ君。これを聞いたからって騒いではいけないよ。心の準備できたかい?」
「……もったいぶらないで早く教えて下さいよ」
「リュウ君はね……」
「いったい、リュウがなんだっていうんです?」
訝しげに言ったマルコ。
リィオスは柔和に笑って碧眼を細め、右手を上げ人指し指を立てた。
たっぷりと間を置き、囁くように声を出す。
「かつての勇者と同じく、異界より来訪せし者であり、希望の宝玉の所持者だよ」
「へー。リュウって勇者と同じで異界出身で希望の……ってええ!? フゴ!!」
リィオスが神速で腕を伸ばしてマルコの口を塞ぐ。
大広間にマルコの絶叫が響くのをなんとか阻止したリィオスは、あまりの驚きように思わず声を上げて笑ってしまうのであった。
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