ガチャ46 芝居に隠された理由
日刊ランキング99位入り記念投稿!
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シュバルツが謁見の終わりを告げるため声をかける。
「魔法戦士リュウよ。今後の活躍に期待している。では、退出してよいぞ」
リュウは最後に臣下の礼と共に不敵に笑うと、シュバルツに背を向け謁見の間を後にするのだった。
▽
リュウは謁見の間を出て、フレイムタンを取ろうと壁を見る。しかし、フレイムタンはいつの間にか床に落ちていた。拾い上げ軽く埃を払ったリュウは、門番をしていた王都守護隊隊員のポールに声をかけた。
「おい。これ、もしかしてオズワルドが触って行ったのか?」
ポールは苦笑いをしながら答える。
「そうなんだよ。
『見分するから見せろ』と言うもんだから、
『見分することは無理かと思います。障壁が展開されるので触れると痛いですし、やめておいた方がいいかと』とは伝えたんだが
『私は公爵だぞ!』とか言ってあの魔剣を触ってな。
……障壁が展開された瞬間の驚き方と痛がり方は、面白かった! あの方は俺たち平民上がりを徹底して嫌っている。正直、胸がすくような気持だったぞ」
ポールの話を聞いて、リュウはオズワルドの無様な姿が目に浮かび、失笑する。
「門番も大変だな」
「リュウが謁見でオズワルド卿を焚きつけたんだろう? 強者の放つ魔光圧気を感じたぞ。まったく、無茶をする」
「俺は、売られた喧嘩は買う主義なんだ」
「なんだそれは。賢いとは言えない主義だな」
「あらゆる理不尽に屈したくないだけさ。理解されようとも思っていないがな。じゃあ、門番頑張れよ」
リュウは不思議そうな顔しているポールに挨拶代わりに左手を上げ、螺旋階段を下りていく。
リュウにしては珍しくゆっくりと歩きながら、謁見の間でのやり取りとポールとの話を受け、転移前のことを少しだけ思い出していた。
(転移前、俺は散々他人の作ったレールの上で走ったろ。小中高とやりたくもない勉強を続けさせられて、少しでも高い初任給と昇進を得るために大学へ行った。圧迫面接を耐え抜き、苦労してなんとかそこそこの会社に入れたと思ったら、今度は奴隷のように働く日々。何のために生きていたのか正直よくわからない。
今度は俺が自分の道にレールを引いていくんだ。味わえなかった自由を、必ずつかんでみせる)
螺旋階段の中腹辺りでリュウが思い耽っている所へ、シュバルツ王と話を終えた金髪碧眼の男が追いつき声を掛ける。
「リュウ君。お疲れ様! 君は結構演技上手いね? 役者になれるかもよ」
リュウが声をかけられ振り返った際に、貴族派の怒った表情をしている文官と頭を下げているで武骨な男の姿が目に映った。組織に属するのは大変なことだと思いつつ、リュウはそれよりも唐突な行動ばかり起こす困った師匠に言いたいことがあった。
「リィオス。お前な。ああいう芝居やるなら、先に俺に話をしておけよ。俺が西の未開地"魔の領域"じゃなくて南のダンジョン『飛龍の巣』へ行くと言ったら、どうするつもりだったんだ?」
「ハハハ! リュウ君なら機転を利かせてくれると信じていたよ」
リィオスは周囲に誰もいないことを確認し、念のためリュウだけに聞こえるような小声で秘密を打ち明ける。
「……あの芝居は、シュバルツ様の提案だね。帝国への内通者を炙り出すためにやったのさ。謁見が始まる少し前に決まったことなんだよ。仕方ないでしょ?」
「シュバルツが? あいつなら、俺をダシにしなくても、いつか見つけられるだろう?」
リュウは賢明なシュバルツの姿を思い出しながら言った。
リィオスは柔和な表情のまま目だけを細める。
「これは、リュウ君の命を守るためにも必要なことだったんだ。
あらかじめ、間違った情報を流しておくことで、帝国がリュウ君へと辿り着けないようにしておくべきだという話になったんだよ」
沈黙するリュウは続きを促すようにリィオスを見つめていた。
リィオスは周囲を見回し、人がいないことを再度確認する。魔力も探ってみたが、近づいてくるのは顔を赤くしているマルコだけであった。
リィオスは話を続けていく。
「リュウ君が帝国の手練れと思われる灰色尽くめ男と交戦したことを、シュバルツ様にだけは報告したんだ。そうしたら『若き英雄殿の命が危ないな』とおっしゃってね。
王国を混乱に陥れるための仕掛けを2度も打ち破ったリュウ君が長期間王都にいなかったら、必ず帝国側がリュウ君の居場所を突き止めようと動くのは当然でしょ? 以前、私がリュウ君に言ったことでもあるけど……
それをシュバルツ様も気にしていたんだよ」
「なるほど。それであんな手の込んだ芝居をしたわけか。シュバルツにはさっそく借りができたな……」
突然始まった芝居が内通者を炙り出すためものというのは薄々感づいていたが、リュウはシュバルツが己の命を間接的に守ろうとしてくれていたことには気がついていなかった。
(フンッ。頼んでもいないってのに。……まあ、嫌いじゃない)
シュバルツが困ったら手を貸してやろう。そんな風に思いながらリュウは口の端だけを上げて笑った。
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