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ガチャ37 美少女エリー

 リュウは指先に魔力を集中させ、小さな雷球を発現させた。雷球の放つ光で食堂が一段と明るくなっている。


「すごい! すごいです! リュウ兄さん!!」


「……たまげたよ! まさか、記憶喪失で常識知らずのアンタが魔法を使えるだなんてね」


「少しは安心できたか?」


 リュウの実力は、確かに素晴らしい。だが、エリーは再び浮かない表情を浮かべていた。


「でも、そんなリュウ兄さんが逃げるしかないほどの相手が命を狙っているんでしょう?」


 リュウは不安がるエリーをどう納得させようか考え出した。


(まいったな。エリーを泣かすわけにもいかん。……仕方ない。マギスクロール【ワープ】の話だけはしておくか)


「……誰にも言わないと約束をしてくれるなら、俺がそいつから逃げる時に使った奥の手を教えよう。どうする?」


「……約束します! 私、口は堅い方ですよ!!」


「あたしはやめておくよ。おしゃべり好きだからね。ここで話すのもなんだし、奥の休憩室使いな」


 エリーが頷いてリュウの手を引いて足早に歩く。

 食堂を出て従業員専用の出入り口を通って休憩室へと入った。室内には簡易的なベットとテーブルが置かれているだけである。


「ここなら、誰にも聞こえません。さあ、教えてください!」


 エリーはリュウの安全が確認できるまでは逃さないという目つきをしている。


「大きな声を出したら、結局壁越しに声が聞こえちゃうだろ」


 そう言ってリュウはエリーの耳元へ顔を寄せる。

 顔を赤らめるエリーに、自身の持つ最高級レアのマギスクロール【ワープ】について説明し、前回逃げた時はリィオスの元に転移したことと、リィオスとは師弟関係にあることを話した。


「……というわけだ。驚いたか?」


「はい。とっても! でも、これなら安心ですね!! 何かあったら、王国最強の戦士リィオス様の元へ行けばいいですから」


 ようやく安心したエリーは緊張が抜けて肩を下し微笑んでいる。

 リュウは師匠リィオスがいなければ安心さることができなかったのかと複雑な気持ちになる。だが、義妹が笑ってくれている姿を見て、今だけは甘んじて受け入れようと思うのだった。


(当然、次はリィオスがいなくても安心させられるような実力を身に着けて戻ってくるさ)


「だから、もう心配するな」


 リュウがエリーの頭を優しく撫でていると、エリーは気持ちよさそうに目を細めた。

 しかし、リュウの命の安全が保障されたことで、今度は長い旅に出かけるということを思い出し、寂しげに眉を寄せてしまう。


「もう、心配はしていません。でも、リュウ兄さんに会えないなんて耐えられないです! 寂しいな……」


 瞳を潤ませながらリュウへと抱き着くエリー。


「必ず、戻ってくるから」


 リュウは落ち着かせるようにゆっくりと宥めるように話す。いつもなら、それで十分だったはず。しかし、エリーは抱き着いたまま首を横に振ったのだった。


「リュウ兄さんのことを考えるといつも胸がドキドキしちゃって、最近は夢にも出てくるんですよ? 気づいちゃったんです。お義兄さんとしてじゃなくて、異性として好きだってこと! 好きな人と離れるなんて、嫌です……」


 思いの丈を吐き出したエリーはリュウの胸の中で泣きじゃくっている。リュウは頭を撫で続けているが、エリーは鼻をすすりながら涙を流し続ける。


(エリーが俺のことを好きだって!? どうすればいい? 正解はどれだ? わからん! だが、俺だって同じ気持ちだ……)


「……俺も、エリーのことが好きだよ。1人の女性として」


「本当、ですか?」


「嘘じゃないよ」


「証明してください。思い出す度に愛されてるって感じられるような、濃厚なキスで」


 エリーはそう言って上を向いて目を閉じた。

 弾力のありそうな唇が綺麗なピンク色をしている。


 リュウは何も言わず、唇を優しく重ねていく。

 唇を重ねたまま、相手を思う気持ちを確かめるように、舌を絡め合っていた。


 エリーとのディープキスは甘い果物のような味がした。



「…………嬉しいです」


 長い口づけを終えた2人はベットに腰かけている。

 エリーは頬を赤く染め、横に座るリュウの腕を胸に抱きながら、リュウへともたれかかっていた。


 服の上からは想像できないようなボリューム感ある胸が作っている谷間に腕が挟まれている。

 リュウは身動きが取れずに固まっていた。


「……男としてはこの状況で我慢するのはつらい。そろそろ解放してくれないか」 


「どうしてですか?」


 不思議そうな顔で首を傾げるエリー。


「どうしてって。こういう状況だと襲いかかるやつもいると思うぞ」


「……襲ってくれても、いいんですよ?」


 エリーはリュウの手を取って胸へと押し付けた。

 柔らかだが弾力のある感触がリュウの本能を刺激する。


「私はもう、リュウ兄さんのものなんですから」


 エリーは真っ赤な顔のまま、はにかんで笑った。


「……ダメだ」


 自分より年下の少女とは思えないような色気を放つエリー。状況に流されそうになるリュウだが、なんとか残っていた理性が踏みとどまらせた。


「どうして? 両想いなら、いいじゃないですか」


「ダメなものはダメだ! そういうことは、もっとエリーが大人になってからな」


 リュウは煩悩(ぼんのう)を断ち切るように立ち上がり、休憩室から駆け足で出ていった。


「もう! リュウ兄さんだって、私とそんなに年かわらないじゃないですかー!」


 エリーは少しだけ怒った声を出しながらリュウを追いかけていく。

 玄関でようやくリュウに追いついたエリー。


「はぁ、はぁ。やっと追いついた……。リュウ兄さん、速すぎです!」


「鍛えているからな」


 傍から見たら恋人同士のやり取りにしか見えない場面。

 玄関先を掃除していた女将はそんな2人を眺めながら、口を出す。


「あんたら、話をするだけにしては随分長かったね。あそこは、愛の巣じゃあないんだよ?」


 女将の探るような視線に対し、エリーは愛想笑いを浮かべ、リュウは無表情の顔を微かに引きつらせていた。

 ありのまま起きたことを話すわけにもいかない2人は、勘付いている女将を前に、しばらく無言で過ごすのだった。



 結局、リュウはエリーと付き合うことになったということを女将に伝え、告白に時間がかかったという説明で一応の納得を得ることができた。

 その後は無口なシェフであるエリーの父親にも話を伝えている。


 『幸せにしてやってくれ』

 エリーの父親はそんな雰囲気を漂わせ、娘を頼むとだけ言って厨房へと戻っていった。


 やるべきことを済ませたリュウは、玄関の前で振り返った。エリーが持ってきたサンドイッチ入りのバスケットをリュウは受け取る。

 エリーは花が咲いたように笑みを浮かべている


「じゃあ、行ってくる」


「いってらっしゃい、リュウ兄さん!」


 愛おしいエリーに見送られながら、リュウはオーガ討伐の報酬を受け取るため冒険者ギルドへと向かって行った。

お読み頂きありがとうございます。


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