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ガチャ28 一触即発。ジョセフの壮大な勘違い

「……そんなに俺がアイツを倒したことを信じられないか? ギルドカードを見ればわかるだろう」


 リュウはポーカーフェイスを崩すことなくマジックポーチに手を入れ、グリードムントの指環を起動。手に持ったギルドカードのステータス表記をある程度制限してからマジックポーチから手を出し、ギルドマスターに見せつける。


「……何!? これはどういうことだ!!」


 リュウのステータスを見た瞬間、ギルドマスターが驚愕の声を上げていた。


―――――――――――――――――――――――

名 前 リュウ

種 族 人間

ランク F

レベル 25 

HP 246/246

MP 3426/3426

筋力 141

魔力 91

耐久 131

敏捷 169

器用 92

幸運 EX


スキル

【千里眼lv2】

【剣lv4】

【魔力操作lv10】


魔法

 【雷魔法lv1】 

称号

【ゴブリンキラー】【極大魔光エーテルを宿し者】

加護

―――――――――――――――――――――――


「確かに、ゴブリンキラーの称号があるな。お前が倒したんだろう。それはいい。

 だが、登録したのは1週間ほど前だろう! 何故こんなにもレベルが上がっている? 総戦闘力も同レベル帯の冒険者平均を大きく上回っているぞ! それに、魔力操作レベル10に雷魔法? どうなってやがる!! 登録した時とは完全に別人のステータスだ!」


 ギルドマスターが執務机を興奮しながら叩く。しかし、常軌を逸しているリュウのステータスを見て興奮するのも無理はない。

 並みの冒険者であればレベル25に至るまでに10年はかかる。

 しかもレベル25のDランク上位冒険者達の平均的な総戦闘力(各ステータスの合計値)は凡そ800程度。

 カンストしている幸運と圧倒的なMPを除いても、リュウの場合は870ある。MPを足すと4000を超えており、総戦闘力だけで言えば一流冒険者と言えるほど。さらに、伝説級の魔力操作レベル10に加えて特殊属性【雷魔法】の使い手であった。

 ギルドカードは開示したくない情報を隠すことができるという仕様になっており、他にどんなスキル、魔法、加護を隠し持っているかわかったものではないのだ。

 

 記憶喪失と言って王都に侵入。新緑の森でゴブリンキング亜種を生み、それを倒すことで王都での地位を確立。自由に動けるようになり、国境付近で戦端を開かせるためにオーガ複数体を放ったのだとすれば辻褄が合う。

 ギルドマスターはリュウを直感的に敵国の手練れと思い込み殺気立つ。Aランク冒険者として魔光エーテルを練り込んだ強者特有のプレッシャーを放ちながら拳を構えつつ尋問を始めようとした。


「誤魔化して門を抜けた手段と、王都に来た本当の目的を言え」


「……煩い奴だな」


 重圧をかけても顔色1つ変えず減らず口を叩くリュウに対し、ギルドマスターは警戒度を上げつつ、低い声を出す。

 

「……立場がわかっていないようだな。次に適当なことを抜かしたら、命の保証はできんぞ!!」


 ギルドマスターの脅しながら叫んだ声に呼応するかのように、リュウの全身から虚空に線を引きながら紫電が放出される。威嚇の雷光はギルドマスターにすら冷や汗を流させるほどの重圧感。


「魔力操作を極めた雷魔法の使い手は魔光圧気エーテルグラストでこれほどの現象を起こすか……。こんな男を野放しにはできん! 総戦闘力がAランクに届きかけているといっても、幸運と魔力量以外は俺の方が圧倒的に高い!! 確実に、ここで仕留めてやる!!」 


 ギルドマスターはリュウを王国を騒がせている帝国の手練れだと判断し、ここで確実に仕留めるために闘気を高めていった。


「――――ダメよ!! ジョセフさん、誤解してるわ!! リュウもお願いだから必要のない喧嘩は買わないで!!」


 ただの誤解で尊敬するギルドマスターと好意を寄せている青年が殺し合いを始めようとしているのは止めなければならない。

 心に響く想いを届けるために、ダリアは強者達が放つ圧倒的なプレッシャーに震えながら、身体になんとか力を入れて絞り出すように叫んでいた。


「……誤解? ダリア、どういうことだ?」


 ジョセフは油断なく闘気を高めつつ拳を構えたまま、懇願するような声を出したダリアに説明を求めた。

 対してリュウは面倒事を片付けてくれるのならそれでいいと言わんばかりにあっさりと魔光圧気エーテルグラストを散らせる。ダリアを一瞥した後、ポーカーフェイスを貫いていた。


(なんで、こんなことになっているのかしら……)


 始めから丁寧に説明をするべきだったのかもしれないと後悔しながら、怒れるギルドマスターのジョセフの誤解を解くためにダリアは重い口を開いた。 

 簡潔にわかりやすく伝わるよう、自分の中で簡単に情報を整理してジョセフに聞かせていく。


――10分後。


・リュウが本当に記憶喪失者であること

・ステータスが高いのは王国の剣である元Sランク冒険者リィオスに才能を見出され師事しているため

・登録をした当初からDランクのドナルを倒せる程の特殊なマジックウェポンを持っており、それと魔剣を併用して恐らくゴブリンキング亜種を仕留めたこと 


「――――ということですね。以上がリュウに関する報告となります」


 説明する前はその眼光だけで人を殺せるような圧力を放っていたが、話を進めていくうちにいつの間にか殺気が消えていた。

 ダリアが話終え殺気を感じないことに安堵し、ジョセフの目を見て話せると思って目を上げると、ギルドマスターである偉大なジョセフの顔がそこら中にいる中年の男性と見間違えるほど老け込んでいることに気がつく。


 間接的にあの"リィオス・ジーフリード″にもケチをつけたようなものであり、ジョセフは命運が尽きたと思っているのだろう。ヒーロー秘蔵の弟子を帝国の間者と断定して撲殺しようとした男に対して民衆がどのような行動に出るかなど、聡明なジョセフにとって想像に容易いことであった。



「ジョセフさん! リュウは細かいことを気にしないタイプだから安心して良いと思いますよ!」

 

 ダリアは肩を落とすジョセフをなんとか励まそうと気を回す。


「ねぇ、リュウ。そうでしょう?」


「まぁ、勘違いしやすい状況で俺みたいな奴が来たら、こうなることもあるだろうな」


 フォローをするような発言に安堵するダリアとジョセフ。


「……そんな短慮な奴が、ギルドマスターってのもどうかと思うが」


 リュウの無遠慮な言葉に場が凍り付いた。

 ダリアはさらに老け込んでしまったジョセフに同情しつつ、リュウに気づかいを求めてはいけないと1つ学んだのであった。


「おい。ダリア。そんなことより、さっきの話はどうなってるんだ?」


 凍りついた空気を作った張本人のリュウが、疲れ切った表情をしているダリアに声をかけた。


「さっきの話? ……ああ、ランクアップの件のことね」


「そうだ。しかし、こいつの様子から考えると俺はただ怪しいやつかどうかを確かめるためだけに呼ばれたように思えたが……。これじゃあ、貴重な時間の無駄遣いだな」


 リュウがそう言って威圧するような目でジョセフを見ると、ジョセフは最早生きる屍と化しており反応がなかった。

 時間が無駄になったことに対する怒りの炎がリュウの瞳に宿り始める。


「そ、そんなことないわよ!」


 ダリアはリュウの目を見て、喧嘩が始まったら今度こそ収拾がつかなくなると感じ、咄嗟に話を作ってジョセフへと助け船を出した。


「そうですよね。ジョセフさん! さっきのはちょっとした誤解で、今日はゴブリンキング亜種を倒したリュウを一目見て、資質ありと認めたらランクアップさせるって言っていましたよね?」

 

 ジョセフは絶望した表情のまま明晰な頭脳を回転させ、この場を丸く収めるための計算を弾き出す。真面目な表情を作り、おもむろに顔を上げた。ダリアの作り話に合わせるように言葉を選んで話し始めていく。


「もちろんだとも。身元不明のお前が急成長を遂げた理由が不明であり、Aランク冒険者でもある俺から見ても強者と呼ぶに相応しいほどのステータスと魔光圧気エーテルグラストの凄まじさ。警戒しないわけにもいかなかった。これで済むとは思わんが、謝罪させてくれ。すまなかった」


 ジョセフは深々と頭を下げている。

 リュウは興味なさげに鼻を鳴らした。


「勘違いについては気にしてないと言ったろ。それより、ランクアップの話がしたい。俺は何ランクになるんだ?」


 タイミング見計らっていたダリアはリュウの要求がジョセフへ適切に伝わるよう補足する。


「リュウは王国から出されたオーガ討伐依頼を受けたいようなんです」


 ジョセフは単刀直入に切り出してきたリュウの要求がわかりやすいことに一瞬だけ安堵する。求めている要求に自身の裁量範囲で答えられるというのも無関係ではなかっただろう。

 社会的抹殺を防ぐためにもここをクリアすることが重要であり、戦闘とはまた違った胃の痛くなるようなプレッシャーがジョセフを襲っていた。


「リュウのステータスとゴブリンキング亜種討伐の功績を考慮して、異例だが俺の裁量でFランクからCランク上位への飛び級することを認定するとしよう。これが俺にできる最大限の誠意の形だ。他の連中には俺から話をつけておく。だから……」


「だから?」


「俺がお前に殴りかかろうとしたというのは内密にしてくれないか」


 リュウは情けない表情で懇願するジョセフを鼻で笑い飛ばす。


「なんだ。そんなことを気にしていたのか? いいだろう。そもそも言いふらすつもりなんて微塵もなかったが……。今回の件は水に流し、黙っておいてやる」


「本当か?」


「くどい。気が変わりそうな気がしてきたな」


「悪かった! 今のはナシだ。ナシ!」


「この話はもういいだろ? それより、ジョセフ。ギルドカードを早く更新してくれ。時間が惜しい」


 リュウはランクアップして指定ランクCのオーガ討伐依頼を受け、雷魔法を早く試したいと思っており、カードの更新を急ぐようにジョセフに要求した。


「わかった。おい、ダリア。カードの更新頼む」


 ジョセフがリュウのギルドカードをダリアに投げる。

 受け取ったダリアは好意を寄せる青年があっという間に1流と見られるCランク上位まで上り詰めたことに驚いていた。

 リュウがオーガ討伐へ早く行きたいと言っていたことを思い出し、願いを叶えてあげるべく、ミニスカートをなびかせながら事務所へ向かって走って行った。


――数分後


 息を切らしながら走って戻ってきたダリア。階段も走ってきたため呼吸が荒れている。

 大きく呼吸をするたびに、たわわに実った乳房が揺れていた。


「……お待たせ。リュウ、更新してきたたわよ」


 リュウはギルドカードを手渡そうと腕を伸ばすダリアの胸元に覗いて見える谷間を見ないように気をつかいつつ、カードを受け取る。

 やっとオーガ討伐依頼を受けられると思い気分が高揚してきたリュウは、依頼受注をするためにダリアへ声をかけた。


「助かった。依頼の受注もしたい。受付カウンターへ行こう」


「うふふ。言うと思ったわ。さっきついでに受注処理も済ませてきたの。思う存分戦っていらっしゃい!」


「……ダリア。嬉しいよ。今度、お礼にご飯でも奢らせてくれ」


「あら、嬉しいわね。期待して待ってるわ!」


「ああ。じゃあ、行ってくる」


 アメジストのような色気と美しさを兼ね備えたダリアの微笑みに見送られながら、リュウは冒険者ギルドから出ていった。

 王都の門を抜け、リュウはギアを上げてオーガ討伐のため荒野へ向かって全力で走り出した。

お読み頂きありがとうございます。

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