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ガチャ27 指定ランクC『オーガ討伐依頼』を受注せよ

 やすらぎ亭の食堂にはいつも通りの男女の組みがテーブルについている。銀髪長身の青年とやすらぎ亭の看板娘。連泊中の他の客からすれば付き合っているかのように見える2人だった。

 リュウはエリーと一緒に朝食を食べ始める。

 お互いに昨夜のキスが頭から離れず、しばらくの間、沈黙していた。エリーの頬は陽だまりのような温かな色をしている。


(こういう時は男から話しかけるものなのかもしれないな。……普通にしゃべるだけだ。普通に。……いや、恥ずかしいな)


 女性に不慣れなリュウなりに考え、かける言葉を決めた。


「……親父さんの料理はいつ食っても美味いな」


「はい! とっても!」


「エリーの作ったサンドイッチも美味いぞ。今日も持っていきたいが、あるか?」


「よ、喜んでもらえて嬉しいです。……どうぞ、リュウ兄さんっ」


 はにかむエリーの笑顔が、やけに眩しく感じられた。

 手渡されたサンドイッチ入りのバスケットを受け取って、マジックポーチに入れるように見せかけながらグリードムントの指環に収納する。


「ありがとう。じゃあ、行ってくる」


「リュウ兄さん。今日はどこに行くんですか?」


「ああ。人にはあまり聞かれたくないから耳を貸してくれ」


「は、はい。どうぞ」


 何気なく耳へと接近するリュウの顔。

 耳に感じる吐息がエリーの鼓動を速めていた。


(ちちち、近いですよぉ!!)


 リュウは動揺を隠せず茹って顔がリンゴのようになっているエリーに気がつくことなく修業の内容を囁く。


「今日は、ある程度強いモンスター相手に魔法を使って戦闘するつもりだ」


「む、無茶は駄目ですからねっ」


 エリーはリュウが強いモンスター相手に戦闘すると聞いて、無茶をしないようにと真っ赤な顔のまま釘を刺す。


「わかってる」


 そう言って席を立ち上がり、食堂から出ていこうとすると後ろから澄んだ声が聞こえてきた。


「リュウ兄さん。いってらっしゃい!」


 軽く上げた片手を振って、リュウは冒険者ギルドへ向かっていった。


◇◇◇


 冒険者ギルドの扉を開けた。

 朝早い時間にも関わらず多くの冒険者が集まっており、ざわついて落ち着きのない様相を呈している。


「まじかよ」


「やっぱり、あの噂は本当だったんだな!」


「まさか、オーガがあんな所に現れるなんて……」


「しかも複数だろ?」


「1体だけじゃねぇのか? しばらく、あっち方面は行けねぇな」


 ギルド掲示板に群がる冒険者達が口にしている内容を聞きつつ、リュウは人混みをき分けて掲示板の前へ出た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

依頼主 リーデンブルグ王国


指定ランク Cランク以上


依頼内容

 王国と帝国の国境沿いに面する荒野にて複数のオーガを目撃したという報告が上がっている。詳細な数は不明だが、少なくとも3体のオーガがいることは確認された。その3体は固まって一緒に動いていたそうだ。危険度は単体でCランク。グループともなればBランク相当と言えるだろう。厳しい相手だが、優秀な冒険者の諸君に討伐をして欲しい。帝国が国境付近で大軍を率いて軍事演習を行っており、王国から騎士団を派遣してしまえば軍事行動をとったと見られて緊張関係になるだろう。それだけは避けなければならない。申し訳ないが、よろしく頼む。


討伐対象 オーガ複数体


期限 3日以内


報酬額 オーガ1体討伐につき金貨1枚

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(今度は王国直々の依頼か。しかし、まいったな)

 

 掲示板には常設依頼のものが多く、雷魔法の試し打ちをするに相応しいCランクモンスターは王国依頼のオーガ討伐しかなかった。リュウは指定ランクC以上という条件を満たしていないため、参加できないことを残念がって立ち尽くす。


(貼り出していないだけで、もしかしたら別の討伐依頼があるかもしれないな。ダリアに聞いてみるか)


 気分を切り替えたリュウは妖艶な黒髪の美女を思い浮かべながら受付へ向かう。

 受付カウンターには次々と来る冒険者に嫌な顔を一切見せず捌いていく仕事のできる美人受付嬢がいた。リュウの前の冒険者が要件を終え去っていく。

 礼の言葉と共に、少しだけ勢いをつけ腰を折るダリア。

 豊満な胸が揺れ、制服の間から乳白色の深い谷間が見えている。


「……ダリア。今日は混んでるな?」


 意識しないようにと考えれば考えるほど、谷間に視線が吸い込まれていく。リュウはすぐに目を離さなければいけないと思いつつ、それができないでいた。


 悪戯が成功したダリアはリュウの視線を胸元に強く感じ、軽く頬を上気させ、小悪魔のような笑みを湛えて頭を上げた。


「ウフフ。リュウ。どうしたの?」


 匂い立つような妖艶さに目が離せないリュウだが、要件を思い出すと駄目で元々と開き直って尋ねる。


「Cランク程度のモンスター相手に腕試しをしたいんだが、掲示板には王国依頼のアレしかない。貼り出してない依頼の中で、指定ランクなしのCランクモンスター討伐依頼はないか?」


「指定ランクのないCランクモンスター討伐依頼? DランクとCランクの間には大きな壁があると言われているのよ? 指定ランクのない依頼なんてあるわけないじゃない! 仮にあったとしても低ランクの冒険者にとっては死にに行くのと同じことなんだから」


「そうか。残念だな……」


(こうなったら、金にはならんが荒野に行ってオーガを襲ってみるか? 魔石だけでもある程度の金は手に入りそうだしな)


 最もな話を聞いて、リュウは依頼を受けずにオーガを討伐してしまおうかと考え込んでいた。


 ダリアは悩んでいるリュウを見て、なんとかしてあげたいと思うと同時に何かを忘れているような気がしていた。


(……あっ! ギルドマスターから言われてたこと、忙しすぎて忘れてたわ!)


 ギルドマスターから『リュウが来たら執務室まで連れてくるように』と言われていたことを思い出す。詳しいことは聞かされていないが、恐らくは功績を挙げたリュウをランクアップさせるつもりなのだろうとダリアは考えていた。

 自分が足りない所を説明し補足することでCランクまで引き上げられる可能性があると思ったダリアは、リュウと一緒にギルドマスターに会うことを決めるとリュウに声をかける。


「ねぇ、なんとかなるかもしれないわよ?」


「……どういうことだ?」


「行けばわかるから、ちょっとついてきて」


「わかった」


 リュウは不思議そうな声色で返事をして、ダリアの後ろをついていく。

 受付カウンターを超えて事務所の中を通ると2階へと続く階段が見えてきた。


「こっちよ」


 ダリアが指先を2階へ向ける。


「2階? あんまり良い予感がしないんだが」


 表情を僅かにしかめさせたリュウ。

 そんなリュウを見て予感が的中したとダリアは思うのだった。


(どうせ『お偉いさんは好きじゃないんだ』とか言い出して帰りそうだもの。絶対、言わないわよ)


「いいから、はやく行くわよ?」


 疑い始めたリュウに声をかけると足早にダリアは2階へと上がっていく。


 リュウが仕方ないと諦めてダリア追いかけるために顔を上げると、艶めかしい太股が視界に飛び込んでくる。

 制服に採用されているミニスカートはここから見上げるだけで奥まで覗き見えるほどの短さ。

 蠱惑的な色香を放つ領域は黒いレース状の布で覆われており、妖艶な雰囲気を漂わせていた。

 

(うおっ! 黒か!! 堪えろ。見るな俺!! そしてダリア。お前も隠せ!!)


 リュウは目の前に広がる光景に混乱しつつ凝視したまま固まっている。


 太ももとその奥に届く熱い視線を感じてダリアは軽くため息をつくと後ろを振り返りリュウと目を合わせた。


(うふふ。見てるわね? 本当に仕方ないわね。男の子って) 


 ダリアは意味ありげに目を細め、微笑んで見せた。


「わ、悪い。その……わざとじゃないんだが」


 リュウは申し訳なさそうな顔で謝った。無表情な顔が真っ赤に染まっていく。


(ほんとウブよね。もっと、からかいたくなるわ)


「……リュウなら、いいのよ? もう少しくらい見ても。それに、あの時だって見てたでしょう?」


 そう言ってダリアは腰をかがめ、ブラウスに詰まった豊満な胸に手を当てながらリュウを見つめる。


 胸元の開いたブラウスの隙間から現れた深い谷間に目を奪われながら、リュウはなにも言わず顔を真っ赤にして呆然としていた。


「うふふ。気をつけなさい? 女は視線に敏感な生き物よ」


 言葉を出せないリュウは何度も首を縦に振っている。 


「じゃあ、いきましょうか」


 恥ずかしそうに俯いているリュウに声をかけ、ダリアは案内のため歩き始めた。


 ギルドの事務所の2階の1番奥の部屋につき、足を止めた2人。ドアに掲げられたプレートには『執務室』と書かれていた。


「入るわよ?」


 ダリアがリュウに確認のため声をかけ、直後に執務室のドアをノックする。執務室の中から低い声が聞こえてきた。


「入れ」


「失礼します」


 ダリアがドアを開けると装飾されていないものの、耐久性のありそうな執務机の向こうに強面の男が座っていた。

 白髪が混じり出しているくらいの中年だが、衰えないよう鍛え上げていることが服の上からでもわかるほどの身体つきをしている。


「ギルドマスター。彼がリュウです」

 

 ダリアがリュウの名前だけを紹介した。

 リュウはギルドマスターと聞いて眉を僅かにひそめている


(やはりか。役職付きの奴と親しくなるのは面倒に巻き込まれそうで嫌なんだが……)


「ほう。お前さんが登録したばかりでいきなり難易度Aランク相当のゴブリンキング亜種とその群れを討伐したリュウで間違いないか?」


 リュウは頷くことで肯定を示す。

 探るような視線を送る強面のギルドマスター。

 

「確かに、マジックウェポンらしき剣も持っているようだ……。だが、それだけでゴブリンキング亜種を倒せるか? 他の者……それも相当な手練れの人物と組んで倒したということはないのか?」


 鋭い目つきで睨む男の目は嘘をつくことなど許さないと物語っていた。


「……そんなに俺がアイツを倒したことを信じられないか? ギルドカードを見ればわかるだろう」


 ポーカーフェイスに戻ったリュウはマジックポーチに手を入れ、グリードムントの指環を起動。手に持ったギルドカードのステータス表記をある程度制限してマジックポーチから手を出し、ギルドマスターに見せつけた。


「……何!? これはどういうことだ!!」


 リュウのステータスを見た瞬間、ギルドマスターが驚愕の声を上げていた。

お読み頂きありがとうございます。

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