ガチャ25 魔法戦士への道
「リュウ君! 今後の指導方針に関わるから、ちょっとステータスを見せたまえ!」
【魔力操作lv10】を修得したと口にする弟子。それは圧倒的な技量の証明であった。弟子の持つ底知れない素質に慄くリィオス。
元Sランク冒険者の魔法戦士である自分であれば、リュウの持っている素質を全て開花させることが可能。現在自分しか存在を確認されていない魔法戦士の後継者としてリュウを育てることができると、つい先ほどまでそう思っていた。
しかし、魔力操作lv10とは伝説に名を残すほどの魔法使い達しか到達しえない境地である。
流石にそのレベルでの魔力操作をできないリィオスは、1人でこの天才的な素質を持つ青年を育てることが、成長の足枷になるかもしれないと感じ始めていた。
リィオスの考えていることなど知らないリュウは淡々と返答する。
「ギルドカードならいいぞ」
リュウはそう言ってポケットに手を入れると、グリードムントの指環からギルドカードを出現させる。
その後、何でもないような顔をして、情報をある程度隠した状態のギルドカードをリィオスに渡した。
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名 前 リュウ
種 族 人間
ランク F
レベル 24
HP 238/238
MP 12/3401
筋力 138
魔力 88
耐久 128
敏捷 164
器用 89
幸運 EX
スキル
【MP増加lv6】
【身体能力強化lv2】
【千里眼lv2】
【剣lv4】
【魔力操作lv10】
魔法
称号
【ゴブリンキラー】【極大魔光を宿し者】
加護
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ギルドカードを受け取ったリィオスは思わず声を上げた。
「……これは!! 疑っていたわけではないけど、確かに魔法操作のスキルレベルが10だね。それに加えてこの魔力量。Aランク並みだよ! 既に王国の宮廷魔術師と遜色ないくらいさ!!」
人類最高峰の魔力操作と王国軍の宮廷魔術師の長に勝るとも劣らないほどの魔力量。規格外のステータス上昇に驚愕してしまうリィオス。
(ん? 魔力量? ……ああ、そういうことか。異世界言語翻訳・通訳は俺にとってわかりやすいようにステータスの表示もしているんだな。リィオスにはMP欄が魔力量と表示されているんだろう。ユグドラシルではMPのことを魔力量と言うようだ。バレると面倒だから合わせておこう)
「これでAランク程度の魔力量か。魔力の値がもっと高ければ良かったんだが……」
急激に増えた魔力量。
確かに、大幅な継戦能力アップではあった。
しかし、現状の魔力値では魔法を高威力にしたり、大規模化するのは難しいだろう。
リュウは思わず、無いものねだりをしてしまうのだった。
不服そうなリュウを見ていたリィオスが碧眼を細め、口を開く。
「宮廷魔術師は、厳しい修練を重ね、魔力と魔力量のステータスを上昇させることに特化させてやっとこの領域まで辿り着くんだよ? 魔力量が現時点でAランク魔法使いに匹敵するということがどれほど凄いことなのか、リュウ君はわかっていないね。
魔力量があれば魔法を多く使えるだろう? 何度も繰り返すことで熟練し、より高位の魔法が使えるようになっていくんだ。
魔力量が多いというのはそれだけで他の魔法使いから羨望のまなざしを受けることになる。覚悟しておくんだね」
「へー。で、リィオスはどれくらいなんだ?」
「私かい? ハハハ。魔力量はリュウ君より結構高いかな。それ以上はまだ言えないね」
「チッ。やはり言わないか」
(話の流れで聞けるかと思ったが、甘かったな)
「リュウ君ってさ。解析系のスキル持ってるでしょ?」
城門での戦いの時に鑑定をした瞬間『何かをされている』と気がついていたリィオス。今度は能力の核心に迫ってきた。洞察力の高さに舌を巻くリュウは肯定も否定もせず沈黙している。
「そのスキルとリュウ君自身のレベルがもっと上がればその内見えるようになるから、頑張ってね」
からかうような雰囲気の碧眼が細められ、リュウのポーカーフェイスを映している。
「本題に戻ろうか。今後の指導方針だけど……。正直な所、私だけではリュウ君の魔法の才能をきちんと開花させられる自信がないんだよ。リュウ君の方が魔力操作のレベル高いしね。
基礎的な部分はきっちり教えるよ。
だけど、応用については……。
私の魔法の師であるエルフの女性に習う方が良いと思うんだ。
リュウ君さえ良ければ手紙を出しておくけど、どうかな?」
あの魔女だけには余計な貸しを作りたくないとリィオスは思っている。しかし、弟子の持つ天賦の才を確実に花開かせるためには必要なことだと割り切り、渋々リュウに魔女にも師事するよう勧めたのだった。
「その方が強くなれるんだろ? こちらからお願いしたいくらいだな」
「わかった。手紙を出しておくよ。返事が返ってくるのに数か月ほどかかると思う。その間に私の下で剣と魔法の技量を磨き、実戦で剣を使いつつ魔法も行使できるような魔法戦士を目指して特訓しようか!」
「ああ。それでいい」
魔法戦士という言葉にリュウの胸が躍りだし、口角を僅かに上げていた。
「やっと修業に戻れるね。さっきも話したけど、魔力操作のスキルレベル10であれば、どの属性魔法に適性があるかを調べるのは簡単さ。
利き手の指先に小さな魔光を作って、それぞれの属性を強くイメージしてみるんだ。
適性がある場合はその属性に適した現象が起こる。
魔法使いの間では『原初魔光の調べ』と呼んでいるらしい。では、まず4大属性からやってみようか」
「4大属性か。火・風・水・土のことだよな。他にも属性ってないのか?」
常識である魔法の属性について理解していない様子のリュウに愕然とするリィオスは一瞬言葉に詰まっていたが、すぐに事情を思い出して話を続けた。
「……リュウ君は、記憶を喪失しているんだよね? あんまりそんな風には見えないから時々忘れちゃうよ。悪かったね!
他には、光・闇・聖・雷・氷などの特殊属性と呼ばれるものがあるんだ。
特殊属性魔法は使い手がとても少なくてね。王国でも、特殊属性は光属性を私が持っているだけ。国単位で見ても、数名程度いれば多いと考えられるようなものなんだ」
「よくわかった。大抵の魔法使いが4大属性を修得しているんだな。俺も4大属性のどれかに適性があるかもしれないってことだろ。理由もわかったし、そろそろ原初魔光の調べをやるか」
(これは既に雷魔法から試したいだなんて言えないな。どうせ、雷魔法しか使えないだろうに、いちいち全属性調べるのは面倒だが、ガチャのことがバレるよりましか。仕方ないな)
「ちょっと待ちなよ。魔力量、あと12しかないじゃないか。これを飲んでからにしてくれるかい? 倒れられても困るからね」
高級そうな瓶に入ったMPポーションらしきものを飲み干すと、MPが全回復した。
「悪いな。助かった。……やるか。原初魔光の調べ」
原初魔光の調べとユグドラシルでは呼ばれている、魔法属性適性検査を始めるリュウ。
リィオスが期待しながら見つめているが、それを遮るように右手の甲を出し、人差し指を立て魔力を集中させた。半透明の魔力が球体を形成している。
リィオスから言われた通り、リュウは順番に火・風・水・土の4大属性から調べようと、火から試して行く。
どうせ適性はなく特に変化しないだろうと思ったが、一応火属性なら炎かと思ってイメージしてみると、原初魔光が赤く染まり小さな灯火に変化していた。
驚愕するリュウ。
その後も3つの属性を順番に試して行ったが、微弱な反応であったものの全ての属性において適性を示した。
「……まさか、全てに適性があるなんて!! 4大属性全てに適正を持つのは、エルフの中でも天才と呼ばれる彼女だけだと思ったけど……本当に凄いね。リュウ君は! 次は特殊属性も試してみようか」
光・闇・聖・雷・氷の順に原初魔光の形質を変化させていく。闇の時は原初魔光が暗黒で塗り潰されていた。そして、雷はやはり反応が強く、紫色を帯びた原初魔光は小さくなるどころか肥大化していた。
「闇も相当に希少な属性でなかなかの反応だったけど、さっきの4大属性も含め、原初魔光は雷に1番反応していたね」
無言で頷き返すリュウ。
「全てに手を出したいかもしれない。だけど、普通は魔法使いが一生をかけて1つの属性魔法を極めていくもの。中途半端に修めて器用貧乏になったら目も当てられないし、ひとまず属性魔法は雷に絞って研鑽した方がいいね」
「確かにな。俺もそう思うよ」
「わかってもらえて良かったよ。時々いるんだ。2属性に適性があるからと言ってどっちも同じくらいに訓練した結果、どっちも大したことのない魔法しか使えないって人。
話が脱線したね。適性もわかったことだし、雷魔法をさっそく使ってみようか。原初魔光であれ程の現象を起こせているし大丈夫だと思うよ」
「本当か?」
「本当だよ。単体相手に使う魔法の方が簡単かな。雷だと伝記なんかにはスパークやブリッツといったものがあったと記されているそうだけど、魔法はイメージが大切だからね。リュウ君にとって馴染みのあることを思い浮かべながら原初魔光の形質を変化をさせていけば良いよ」
「ああ。わかった」
放電現象や落雷を強くイメージするリュウ。地球にいたころ学んだ科学の知識も総動員している。
原初魔光から迸る魔力が紫色に変化。
鋭くも不規則な動きで虚空に線を幾つも引いては消えていく。魔力をさらに放出すると、放電の規模が大きくなった。
消えた閃光の後から鳴る音が周囲に響いている。
(よし! 原初魔光を雷に変化させることができぞ。次は攻撃用にアレンジするか……。アレを試してみよう)
紫電が中空に浮かんでいる。
リュウは地球に存在していた、神話に出てくる武器を思い浮かべた。
それは勝利を確約するとされた伝説の武具。
『貫くもの』の名を冠する神の槍。
放出された雷魔力が、稲妻の化身となり眩い光を発している。
「ーーーー完成だ。貫け、稲妻投槍」
目の前でリュウを観察し続けるリィオスに向かって、圧縮した稲妻で形作った大槍を投げ飛ばした。
詠唱を始めた瞬間、咄嗟に展開した魔力障壁にぶつかり、目も眩むような光を放ちながらも突破できずに消えていった。
「……ハハハ! 流石はリュウ君。詠唱短縮か。君も十分、怪物級だね」
余力を持って防いだはずのリィオスの額からは冷や汗が流れていた。
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