ガチャ24 伝説的なスキルレベル
瞼を開ける。しかし、近くのものでさえ、ぼやけて見えるほど視界が滲んでいた。リュウが横たわっているベッドを優しいロウソクの灯りが照らしている。
(修練場ではないな……。屋敷の客室ってところか)
意識が覚醒し、重たく感じる身体を起こす。懐中時計を取り出し、東洋の龍の紋章がアクセントとなった白銀の蓋を開けた。
針が20時を示している。
(もう夜か。数時間は寝てしまったようだな……)
突然、ドアをノックする音が聞こえる。しかし、リュウはまだ眠気が強く、上手く返事ができなかった。
「失礼致します」
初老の男性が返事を待たず部屋へと入ってくる。ドアを開けた瞬間リュウと目が合った。
主人からは『リュウ君が極大魔光の試しを行った。消耗が激しいからね。しばらくは起きてこないと思うよ』と聞いている。
それ故、リュウが既に起きていると思わなかったシリウスは、瞬きを数回繰り返し驚いていた。
「申し訳ございません。もう起きていらっしゃるとは思わなかったものですから」
シリウスが謝罪しながら頭を下げた。
「気にするな。それより、リィオスはどこに行った?」
極大魔光の試しの時に感じた圧倒的な魔力が近くにないことを疑問に感じていた。
「リィオス様は、リュウ様をここへお運びになった後、修練場へ行かれました」
(修練場はかなり特殊な場所らしいな……)
「何をしているんだ?」
「詳しいことは何も聞いておりませんが、リュウ様が起きたら修練場へ来るように伝えて欲しいと言付かっております」
「わかった。まあ、これを食ってから行くとするよ」
リュウはマジックポーチに手を突っ込みながらグリードムントの指輪からバスケットを取り出した。
籠の中にはやすらぎ亭の看板娘エリーの作ったサンドイッチがぎっしりと詰まっている。
「左様でございますか。美味しそうなサンドイッチですねぇ。リィオス様からも急いで起こすようには言われておりませんので、どうぞごゆっくりとお召し上がり下さい」
丁寧に腰を折って深々と礼をしたシリウスは、そう言って後ろを振り向きドアに手をかける。しかし、リュウにとっては初めて来た屋敷であり勝手がわからない。
迷って時間を無駄にするのを嫌っているリュウはシリウスを呼び止めた。
「待ってくれ。修練場へはどうやって行けばいいか教えてくれないか。ここは広くて迷いそうだ」
「おぉ、そうでしたな。部屋を出ましたらすぐ右手側に行って下さい。しばらく進むと階段がございますので、そちらから降りて頂ければ修練場へと着きます。では、失礼いたします」
部屋からシリウスが出て行った後、バスケットへ手を伸ばし、サンドイッチを1つ取り出してかぶりついた。
「……美味い」
空腹の状態で食べたサンドイッチは思わずそう呟くほどの味。精神力を使い切った心まで、満たされるような気がした。
(帰ったら礼を言わなくちゃな)
やすらぎ亭のフリルエプロンがよく似合うブロンドヘアーの美少女の笑顔を思い出した。お礼を伝えると決め、バスケットをグリードムントの指環に戻す。
空腹を満たしたリュウは客室から出て、長い階段を下り修練場へと向かった。
「……リュウ君か! 随分、早かったね」
剣を止め、碧眼を見開くリィオス。本来なら数日間寝込むこともあるようなほどの消耗具合であったのにも関わらず、僅か数時間で立ち上がれるまで回復することに驚くのも無理はなかった。
「そうか? しかし、随分変わった場所で修業をしているんだな。客室で起きた時はリィオスが敷地内にいないのかと思ったぞ」
岩肌を剥き出しの広大な空間を見回すリュウだが、特に変わった点をみつけることはできなかった。
「修練場全体に魔力隠蔽効果を持つ結界が張られているんだ。おかげで、凄く静かで落ち着けるようになったよ。
私ぐらいの魔力を持つと魔力を扱える者にはすぐに居場所が悟られてしまうからね。
修業くらいは誰にも邪魔されたくないから、知り合いのエルフの魔法使いに頼んで結界を張って貰ったんだ。居留守をしてもバレなくて助かっているよ。ハハハ」
「お前が張った結界じゃないのか? なるほどな。知り合いのエルフの魔法使いってのも随分とでたらめな女らしい」
「否定はしないけど、本人に会ったらそういう言い方はやめてくれるかな? 怒ると怖いんだよね」
「知るか。そいつの態度次第だな」
王国の剣や王都の守護者と人々から崇められることもあるような王国最強の元Sランク冒険者である自分に対してもまったく遠慮もせずに接するリュウを好ましく思う。
しかし、あの誇り高きエルフの魔女が許すかと言われれば疑問に感じざるを得なかった。
できれば2人が出会わないことを祈ったリィオスは、魔女のことを頭の隅から追い出すように話題を変えてるのだった。
「……ここに来てもらったのはね。今から魔法を覚えて貰うためだよ」
(既に雷魔法を獲得しているとは言えないな。こいつに勝つまでは俺の秘密は黙っておきたいところだ……)
「魔法を覚えるって言ってもな。どの属性に適性があるのかわからないだろ?」
「魔力操作を高いレベルで覚えたものの場合は、特にマジックアイテムによる判定などはおこなわなくても調べられるんだ」
「どういうことだ?」
「極大魔光の試しを始める前に言ったことを覚えているかな?」
「ああ。魔法は魔力操作の応用って話で……」
数時間前の話を自分なりに咀嚼しながら説明を始めた。
魔法を発動させるためには魔力操作を修める必要がある。魔力操作とは魔力を知覚して操れるようになることであり、魔力操作の精度に応じて、魔力を見ることができたり、動かせるようになる。段階を踏んでいけば色や形を変化させることができるというもの。
「どうだ?」
リュウの説明に頷きながら微笑んでいるリィオスは、リュウが話し終えたところで人差し指を立て、魔力を放出させた。
指先から数センチほどの高さに精製された小さな魔力球。眩い光を放ったかと思うと、今度は揺らめく炎になっている。
「素晴らしいね! 属性適性を調べるのに必要なのは、こんな風に魔力の色や形を変化させられる技量だけさ。リュウ君はあれ程の超極大魔光を制御して見せたから、絶対に魔力操作スキルを高いレベルで身に着けているはずだよ。確認してごらん」
促されたリュウがステータスオープンを唱える。
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名 前 リュウ
種 族 人間
ランク F
レベル 24
HP 238/238
MP 12/3401
筋力 138
魔力 88
耐久 128
敏捷 164
器用 89
幸運 EX
スキル
【レアガチャlv1】
【刻印lv1】
【MP増加lv6】
【身体能力強化lv2】
【千里眼lv2】
【鑑定lv8】
【異世界言語翻訳・通訳】
【剣lv4】
【銃lv1】
【魔力操作lv10】
魔法
【雷魔法lv1】
【サバイバル魔法lv10】
称号
【ゴブリンキラー】【極大魔光を宿し者】
加護
【ガチャ神の加護】
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「……とんでもないことになったな!!」
スキルレベルMAXの魔力操作の修得。そして、爆発的な最大MP値の上昇。それに関連すると思われるMP増加のレベルアップや新しい称号の獲得。まさに、死ぬほどの苦痛を味わったリュウだが、そんなことも吹き飛んでしまうほどの喜びに興奮して身体を震わせている。
「想像していたよりも、魔力操作のスキルレベルは高かった。10だ。それと、最大MPが大幅に増加した」
「魔力操作のスキルレベルが10だって!?」
超極大魔光を身に受けたリュウの魔力操作のスキルレベルはかなり高いと踏んでいたリィオス。しかし、実際は伝説に残るような賢者達しか辿り着けない極地へと一気に駆け昇っていた。
「リュウ君! 今後の指導方針に関わるから、ちょっとステータスを見せたまえ!」
リュウよりも魔力操作レベルMAXの価値を正しく知っているリィオスは、自身の全てを教え込むだけではなく、知り合いの魔女に声をかけるべきかもしれないと真剣に考えながらステータスを見せるようにと指示をしたのだった。
お読み頂きありがとうございます。
今回の話で魔法まで使えるところまで行きたかったのですが、話が思ったよりも長くなってしまったので、次回に持ち越しとなります。




