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ガチャ18 冒険者ギルドの個室にて

「ありがとうございました」

  

 丁寧に会釈する黒髪の美女。

 豊満な胸が揺れ、周囲の男の冒険者達が思わず鼻の下を伸ばしていた。

 ダリアはそのことにもちろん気がついている。


 自身の容姿が整っていることも理解しており、胸が揺れたのを無遠慮に注視するような冒険者には営業用の笑顔で声をかけてやることにしているのだ。


「何かご用でしょうか?」


 目線を無理矢理ブラウスの膨らみから外し、既に気がつかれているとも知らず、バレないようにと男達が散っていった。


(はぁ。こんなのギルドマスターから頼まれてなかったら絶対怒鳴ってやるのに……。リュウがこないかしら。かなりカッコいいし、将来性もある。ウブな所もなんだか可愛いのよね)


「おい、ダリア。……聞いてるか?」


 目を開いたままぼんやりと考えていると、いつのまにか受付カウンターに銀髪で若い冒険者が大きな緑色のモノを肩に担ぎ上げて立っていた。

 

「あら、リュウじゃない。その肩に乗ってる大きなゴブリンは何?」 


「ゴブリンキングだ。深緑の森で仕留めた」


「えっ! ゴブリンキ……」


 こんなところで騒ぎになったら面倒だと感じたリュウはダリアの口を左手でそっと塞いで囁いた。

 

「静かにできるところで説明させてもらっていいか?」


(……こういうときは大胆になるのね)


 僅かに鼓動が速くなるのを感じつつ、受付嬢としての仕事を果たすためにリュウをカウンター奥の個室へと案内し、椅子に座って詳しく話を聞き取り始めた。


「……つまり、ゴブリンの異常発生はゴブリンキングの影響で、騎士団が来るのを待っていたら被害が拡大していたはずということね? だとしたら、あなたは王都と他の街を行き交う冒険者や商人を救ってくれたことになるわ」


「そんなつもりはなかったけどな」


「うふふ。良くも悪くも、冒険者は結果が全て。民衆を救った新しい英雄の誕生ね」


「やめてくれよ。騒がしくされるのは苦手だ。だいたい、本物の英雄が王都の門番にいるじゃないか。英雄というより、化け物染みた強さだったがな」


 リュウは心底うんざりしながら左肩を擦る。未だに掴まれた肩の痛みが取れていないのだった。

 対するダリアは門番と英雄のキーワードから1人の男を思い出し驚愕の声を上げた。


「あなた、まさか……。ゴブリンキングに飽きたらず、リィオスさんとも勝負したの!?」


「ゴブリンキングを担ぎ上げて門を通ろうとしたんだよ。そうしたら、アイツがいきなり門を閉めてスクロールまで使って1対1の状況を作ってな。いきなり剣を貸せとか言い出すんだ。

 どう考えても、そのまま奪う気満々だと思うだろ?」


 選ばれた英傑しか入隊できない最強部隊。その王都守護隊の隊長と言えばあのリィオス・ジークフリード。彼を相手に戦うなど王国民であれば正気を疑う出来事であった。

 ダリアも一瞬眉を潜めるが、リュウの抱える事情を思い出して納得した表情を見せる。


「記憶喪失なのよね? リィオスさんのことを知らなければ、武器に目を眩ませた門番が職務を利用して奪い盗ろうとしてきたと思っても、不思議じゃないかもしれないわね……」


「俺にとっては大切な愛剣だからな。死守するために応戦したまでだよ。結果は惨敗だ。勝負にもならなかった」

 

「でも、余程気に入られたのね。模擬戦を申し込んでも門前払い。マルコ君以外と戦ってるところを見たことないもの」


「変に気に入られたみたいでな。戦闘後に、アイツの弟子になることを無理矢理納得させられたよ。まあ、勧誘の仕方が舐めてやがるからな。さっさと強くなって一発ぶん殴ってやることにしたんだ」


 できることなら今すぐにでも殴り込みに行きたい気持ちを隠しもせずに、鋭い目付きで挑戦的な笑みを浮かべている。


「うふふ。売られた喧嘩は買う主義だものね。あなたなら、本当にできてしまいそうに思えてきたわ。リィオスさんに勝ったら、1番に教えてね?」


 王国最強の戦士を目の前のルーキーが殴りつけるなどという実現できる根拠もない発言。だというのに、なぜか信じてみたい気になったことが可笑しくなり笑いだす。

 リラックスしたダリアが楽な姿勢をとるべく脚を組み換えるとスカートからのびた健康的な太股が目に入る。

 リュウは目のやり場に困って視線をさまよわせ、気分を切り替えるために話題を変えた。


「ゴブリンキングなんて初めて倒したモンスターでな。討伐証明部位がわからなかったから念のために死体と魔石を持ってきたんだ。コイツは何処が討伐証明に使えるんだ?」

 

「討伐部位はゴブリンと同じ耳よ。でも、少し形が違うわね。……この魔石は普通のゴブリンキングからは採れない大きさで、色も違うみたい。

 ちょっと待っててね。私では判断できないから解体専門の職員に見て貰ってくるわ」


 受付嬢用の討伐証明部位、魔石が描かれた手引き書のゴブリンキングのページと現物を見比べて、より上位のモンスターにである可能性が高いと判断したダリアは慌ててベテランの解体専門職員の元へ走っていく。

 数分ほど経ち、ダリアが息を切らしながら戻ってきた。


「お待たせ。この魔石、ゴブリンキングの亜種からしか採れないもので、Aランクの価値があるんですって! 『キングオブゴブリンハート』って呼ばれてるらしいわよ!」


 鑑定で予め価値を知っていたリュウは特に驚きもせず淡々と質問を続けた。


「そうか。売却すると幾らになるんだ?」


 息を調えたダリアは椅子に腰掛けながら話す。


「……冷静ね。慌てた私がバカみたいじゃない。

 Aランク魔石だから金貨50枚以上ってところかしら。でも、本当に売っちゃうの? 簡単に手に入るものじゃないのよ?」


 「俺は金が必要なんだよ」


 「金貨50枚も何に使うのよ?」


 最低金貨10枚。日本円にして1000万。数年は仕事をしなくても無理なく生活できる金を、何が出るか決まっていないガチャという名のギャンブルに間違いなく金貨50枚全てをつぎ込む気でいることを、まだ、ダリアに伝えるわけにいかない。嘘をつくのも巧くないと自覚しているリュウは簡潔に答えた。


 「秘密だ」


 再び脚を組み、スカートの奥から艶かしい太股が露に。

 左手を右肘の下に当て、右肘から先の腕はまっすぐ伸ばし、人差し指でリュウを指す。

 左手が双丘を押し上げていた。ダリアは蠱惑的な表情で見つめながら首を傾げる。


「……教えて?」


(耐えろ耐えろ耐えろ! 我慢だ、俺!!)


「……ダメだ」


「あら、残念。もう少し仲良くなったら、聞かせてくれるのかしら?」


 惑わすような色香を残しながらダリアが尋ねてくる。


「……考えておくよ」


「うふふ。楽しみね。じゃあ、後で魔石を換金してくるわ」


「ありがとう。ところで、騎士団からの依頼にはゴブリンの間引きと指揮をしている固体がいるかの調査と報告のみだったが、実際にはゴブリンキング亜種がいて、しかも討伐してしまったわけだ。こういう場合は報酬の上乗せを期待してもいいのか?」


「私からはなんとも言えないわ。依頼内容に書いてない仕事をして別途報酬を払う人もいれば、勝手にやったんだから報酬を余分に払う気はないという人もいるの。騎士団だから、何かしら別の報酬を出してくれると思うわ」


「そうか。それは楽しみだな。じゃあ、依頼内容のゴブリンの間引き分と屑魔石売却分。指揮固体発見及び詳細報告の報酬。ゴブリンキング亜種の魔石売却分を貰おうかな」


 マジックポーチを逆さまにして、大量のゴブリンの耳と屑魔石がテーブルへ無造作に落ちていく。


「ゴブリンの耳も屑魔石も、1度にこんなに見るのは初めてよ。数を確認するわね。お金の受け渡しは窓口でしかできないから、悪いけど先に戻っててくれる?」


「ああ」


 大量の素材を目の前にして受付嬢としてのスイッチが入り、テキパキと動き始めた。

 妖艶な雰囲気が消えたことを惜しく感じつつカウンターへとリュウは戻っていく。

 10分も経たない内にダリアが大きめの布袋を持って戻ってきた。


「ゴブリン1体討伐につき銅貨5枚で今回は150体分認定ね。銀貨7枚と銅貨50枚。屑魔石は100個で売却額は銀貨5枚。ゴブリンキング亜種の発見と詳細報告を合わせて銀貨5枚。ゴブリンキング亜種の魔石売却額金貨50枚。合計金貨50枚。銀貨17枚と銅貨50枚ね」


「ありがとう」


「修業、無理しないでね?」


「ああ」


(これで、ようやく刻印を試せるな! 魔弾の生成も必要だし、何よりガチャを回せる! 楽しみだな!!)


 布袋を受け取ったリュウは流行る気持ちに胸を踊らせながらやすらぎ亭に向かった。

お読み頂きありがとうございます!


次回はガチャります。

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