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ガチャ16 悪戯好きな守護者

 リュウの持ってきたゴブリンらしき緑色のモノはどう見ても体長2メートルを超えており、リィオスは驚きながら叫ぶ。


「リュウ君! それってゴブリンキングじゃないか!?」


「ん? アンタは昨日の兵士か。これがゴブリンキングだとよくわかったな」


「……私も昔は冒険者として腕を鳴らしていたからね。ある程度のモンスターは見ればわかるよ。そんなことより、そのゴブリンキングはリュウ君が仕留めたのかい?」


「ああ。なんとかな」


「なんとか、か。その割りにリュウ君は怪我をしているように見えないね」


「1発でも貰ったら、取り巻きのゴブリンと、こいつから袋叩きにされてしまうだろ? 必死で避けるしかなかったのさ」


 肩に担いでいるゴブリンキング亜種を一瞥し、苦笑いを浮かべるリュウを目を細めさせながらリィオスが眺めている。


「なるほどね。昨日のリュウ君がゴブリンキングとその群を倒したと言ったら笑ってしまうところだけど、今日のリュウ君なら信じられるね。雰囲気があるよ。」


「まぁ、いくつかレベルも上がったしな。それより、そろそろ通らせて貰ってもいいか? コイツを抱えてるのも面倒でな」


「悪かったね。じゃあ、身分証の提示をしてくれるかな?」


 リュウはブラックレザーのボトムから冒険者ギルドカードを無造作に取り出すと、好奇に満ちた表情で見つめるリィオスの眼前に視線を遮らせるようにギルドカードを立てた。


「……これは驚いたよ」


 一部のスキルとステータスのみを表示させている状態にも限らず、リィオスは感嘆の声を上げた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名 前 リュウ

種 族 人間

ランク F

レベル 22 

HP222/222

MP 89/245

筋力 125

魔力 82

耐久 122

敏捷 154

器用 83

幸運 EX


スキル

【千里眼lv2】


魔法


称号

【ゴブリンキラー】


加護

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「リュウ君、幸運を除いてCランク同等のステータスだよ。スキルも恐らくもっとあるんだろうね?」


「……どうかな」


「間違いなく、身体能力が上がる系統と、MPが増加する系統のものはあるだろね。でも、このくらいのステータスになったのは未完全とは言えゴブリンキングを倒してレベルが大幅に上がったからだね」


 リュウは目を細めながらゴブリンキングを地面に放り、沈黙を貫く。


「つまり、勝てたのは実力以外の要因が大きいよね。マジックウェポンの剣と、腰に下げているモノ。あとは……その靴のお陰かな? 格上にも勝てるようなマジックウェポンやアイテム。リュウ君は良いものに恵まれているよ」


(この兵士、エアステップシューズにも気がついたのか。面倒なやつだな。ゴブリンキングを倒したのが不自然ではないと示すためにステータスを開示したが、余計な注目を浴びることになったみたいだ。裏目に出たか……)


「特にゴブリンキングに風穴を空けたであろう魔剣は同じ剣士として羨ましい」


 辺りを見渡し人が居ないことを確認したリィオスが手を挙げると、城門が重い音をたてながら閉じられていく。


「これで、邪魔は入らないね。念のためにこれも使おうか」


 懐から魔法巻物マギ・スクロールを取り出し、効果を発動させるべくスクロールに刻まれた名を読み上げた。


「ホワイトアウト」


 リィオスとリュウを残して世界が無機質な白で埋め尽くされた。タイムラグを殆んど感じさせずに魔法を発動させたマギ・スクロールは魔力を失ってただの巻物と化す。

 

(クソッ! どういう状況だ?)


 マギ・スクロールに鑑定をかけた。リュウは怒りのあまり大声を上げそうになるのを、なんとか堪えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 ホワイトアウト

評価 A

価値 金貨30枚

説明 使用者と対象者を一定時間、他者から視認できなくなる魔法【ホワイトアウト】を封じ込めたマギ・スクロール。名前を読み上げると効果を発動させることができる。チャージ0

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(この野郎! 奪う気満々じゃないか!)


 睨み付けてくるリュウを歯牙にもかけず、リィオスは微笑みを浮かべながら手を差し出した。


「その剣、ちょっと貸してくれないかな?」


「……断る」


「連れないね。……それなら、無理矢理にでも貸して貰うとしようか」


 濃厚なプレッシャーを放ちながらリィオスが足を一歩踏み出した瞬間、リュウは静かにフレイムタンの柄に手を伸ばし、鋭い眼光で射抜く。


「おやおや、恐い顔だね。やる気かい?」


 腰を落としたリィオス。柔和な表情が一変し、剣の柄に手を添えて、獰猛な雰囲気を出しながらいつでも抜刀できるように構えている。


(……隙が無さすぎる。鑑定だ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名 前 リィオス・ジークフリード

種 族 人間

ランク S

レベル  ???

HP ???/???

MP ???/???

筋力 ???

魔力 ???

耐久 ???

敏捷 ???

器用 ???

幸運 ???


スキル

【表示できません】


魔法

【表示できません】


称号

【ジャイアントキリング】【ドラゴンキラー】【殲滅者】【守護者】【魔法戦士】【剣を極めし者】【リミットブレイカー】


加護

【表示できません】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(ランクSだと! レベルアップした鑑定でも全くステータスが読み取れないほどの相手か……クソが!!)

 

 鑑定が上手く通らなかったことはゴブリンキングで体験済みだったが、ここまで読み取れなかったことは初めてであり、リュウは一瞬動揺してしまう。


「今、何かしたね?」


「……別に何も。自意識過剰なんじゃないのか?」 


「そんな言葉で誤魔化せると思うなんてね……。王都守護隊隊長、リィオス・ジークフリード! 敵意ある行動、宣戦布告と受け取った!!」


 放つプレッシャーが爆発的に増したと同時に、リィオスが前傾姿勢で飛び出す。身体がブレてみえる程のスピードで急接近。


「これくらいは、受け止められるかな?」


 魔剣を抜刀。鞘で走らせ、加速させた銀の刃がリュウを襲う。すかさずフレイムタンを鞘から僅かに引き抜きリィオスの魔剣を受け止めた。


 魔剣と魔剣の鍔迫り合いは膠着している。武器は互角。しかし、使い手の優劣が明確にわかれた。


「反応速度はいいね。ちょっと力が弱すぎるけど」


 リィオスが魔剣を握る手に力を入れてフレイムタンを押し始める。リュウは全力で抗うものの、徐々に押し戻されていく。


 フレイムタンの両刃が仇となり、自身の剣の刃が首に触れていた。


「こんなものかい? 大したことないね」


うるさい奴だ!」


 リュウはフレイムタンを手放しつつ、後ろへ思い切り跳ぶ。

 魔剣が目前の空間を切り裂いたが構いもせず、一瞬生まれた隙に乗じて魔剣を振り切ったリィオスの懐へ飛び込む。


 「くらいやがれ!!」


 隙だらけのリィオスの驚愕した顔に力の限り握りしめた拳を突き込んだ。


「なんだと!」


 殴り飛ばしたと思ったリュウは手応えの無さに顔をしかめさせ叫ぶ。


「残像さ」


 横から現れた魔剣がリュウの首を両断せんと迫っている。回避も間に合わないタイミング。

 リュウは諦観し命だけでも守るため両手を挙げた。


「……降参だ。フレイムタンを渡すから命は助けてくれ」


 首筋に触れた魔剣の切っ先から血が僅かに流れて地面に落ちた。


「そう。最初からこうやって素直に剣を渡してくれればよかったんだよ」


 リィオスは微笑みながら敗けを認めて両手を挙げているリュウを威嚇するように殺気を放ちつつ、フレイムタンを拾い上げる。

 目的のものを手にして満足そうな表情を浮かべていた。


「本当に良い剣だ。私の聖剣ブリュンヒルデと打ち合っても刃こぼれ1つしないとはね」


 フレイムタンの美しく輝く紅の刀身を一頻ひとしきり愛でるように眺めている間に世界を塗りつぶしていた白色が元の景色に戻っていく。

 リィオスは唐突に後ろを振り向いた。


「ねえ、マルコ君そこにいるよね。君から見てどうだった?」


 武骨な巨漢が門の影から出てくるなり、呆れたようにリィオスを睨みながら口を開く。


「リィオスさん。悪ふざけが過ぎますよ。あんな言い方したらリィオスさんを知らない奴なら誰だって、自衛のために戦うのを選ぶのに決まってる」


「そういう風に誘導しようと思ってやって、その通りになったんだし、誉め言葉とて受け取っておくよ」


「……それと、悪役っぽい演技はダメですね。端から見たら吹き出しそうでした。慣れないことはやめといたほうがいいんじゃないですか?」


「ハハハ。マルコ君は厳しいね。それで、リュウ君のこと、どう思った?」


「正直、驚きましたよ。昨日とはまるで別人じゃないですか。やっぱり、リィオスさんの勘はやっぱり当たりなんですかね」


「そうだろう?」


 命が助かったというよりも、始めから奪う気などなく、フレイムタンもただ眺めるだけで特に持ち去るというわけでもないことに戸惑うリュウ。


「おい。どういうことかわからん。説明してくれ」


 リィオスは悪戯が成功した子供のような表情で困惑しているリュウに対し謝罪を始める。


「いや、悪かったね! リュウ君を少し試させて貰ったんだよ。ゴブリンハートを持ってきたあの日。私には君が才能の塊のように写ったんだ」


 リィオスは柔和な微笑みのまま、碧眼を鋭く細める。

 

「才能だけでなく、強力なマジックウェポン、マジックアイテムを持つスーパールーキー。順調に行けば、君はきっと大物になるだろう。でもね、今回のようなことがあるかもしれない」


「今回のようなこと?」


「今後も狙われることは間違いないよ。マジックウェポンもそうだけど、ゴブリンキングを冒険者登録して2日目で撃破してしまうような才能と戦闘力を持つリュウ君自身もね」


(そういうことか……)


「まだまだ君は弱い。Cランク程度でも冒険者としては十分に強い部類に入るけど、ただそれだけ。

 格上の相手に襲われたら?

 自分より弱い奴等が徒党を組んで攻めてきたら?

 自分の持つマジックウェポンより強力なマジックウェポンを持つ相手と戦うことになってしまったら? 

 色んなことを想定してみてほしい」


(耳が痛いな。レアガチャで強い武器、防具、アイテム、スキル、魔法を手に入れて舞い上がっていたらしい)


「それにリュウ君が対処できるならいいんだけどね。先程、順調に行けば大物になるといったけど、そういう才気溢れるルーキーはごまんといるんだよ。

 でもね、豊かな才能を持つ故に、新人潰しや鼻の効く盗賊団なんかにいいようにされてしまう者が圧倒的に多いんだ。

 直接話をしたことのあるリュウ君までそうなるかもしれないと思うと、なんだか忍びなくてね」


 リィオスは過去のルーキー達を思い浮かべ、気の毒そうな顔をしていた。


「よくわかった。俺は確かにこのままだと悪意のある連中にいいようにされてしまうだろう。忠告、感謝する。ありがとう」


(慢心していては駄目だ。この世界は弱肉強食。生き残るために強くならなきゃな)


 リィオスに軽く頭を下げ感謝の意を示したリュウはゴブリンキングを右肩に担ぎ上げ門を潜って行こうすると、左肩を掴まれ思わず立ち止まり振り返った。


「なんだ? やっぱりフレイムタンを寄越せっていうのか?」


 碧の瞳を見開き心外だとばかりに首を横に降った後、真剣な声色でリィオスは提案した。


「……リュウ君。私の元で、修行してみないか?」

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