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ガチャ12 深緑の森に走る紅の剣閃

 リュウは王都レーヴォリを出て深緑の森を目指しまっすぐに走って移動している。途中、深緑の森の方へと足を運ぶ冒険者たちを発見。


 野営に必要な大がかりな荷物を持って移動していたのは日々の生活に必要な金を稼ぐのに必死な低ランク冒険者ばかり。

 リュウは同じ内容の依頼書が掲示板には何枚も貼られていたことを思い出した。

 多くのゴブリンを倒して少しでも生活の足しにしたいのだろう。


「おい、あいつ1人でゴブリンの群れを相手にするつもりらしいぞ?」


「バカだよな。それに長期戦になるのに荷物を持ってないのもありえねぇ」


「あいつ、決闘してたリュウだろ? ドナルに勝ったからって調子に乗ってるだろ。ああいう奴は早死にするね」


「ちげぇねぇな。がはは!」


 戦闘経験を積むためと割りきり、野営するつもりがないためマジックポーチしか荷物を持たなくて済んだリュウは、ヤジを飛ばす低ランク冒険者達を軽々と追い抜いていき、深緑の森の入り口にたどり着く。


 深緑の森は昨日の様子と打って変わり、草や葉が生い茂り密度が高まったかのように見えるほど隙間なく醜悪な緑に埋め尽くされていた。


(……昨日より、ゴブリンが目に見えて増えているな? 数は少なくても見えるだけで100体くらいはいそうだ) 


 深緑の森の木々の合間から緑色の小鬼らが野生の鹿を囲んで仕留めている姿が見える。千里眼で前方から見える範囲全てを眺めるが、獲物を捕らえよう必死なゴブリンばかりであった。

 

(……近接戦闘だけでどこまでやれるか、だな!)


 気合いを入れ直したリュウはフレムタンを抜き、先ほどの鹿を襲っていたゴブリンの集団に突っ込んでいく。


 全速力で木を避けながら駆け抜け、獲物を仕留めて愉悦ゆえつに浸り無防備な背中を見せるゴブリンの胴を魔法銀製の紅い刃が通り抜ける。


 悲鳴をあげる暇もなく絶命したゴブリンの上半身が地面に落ちるのと同時に、同胞を殺られたことに気がついた4体のゴブリン達が興奮して叫びだす。

 

「「グギャギャギャ!!」」


「……うるさい奴らだ」


 フレムタンを振り抜いた勢いをそのままに、リュウは近くのゴブリンに斬りかかった。


 ゴブリンは棍棒を上げて刃を受け止めようとするも、間に合わずに胸を深く斬られて暗緑色の血を吹き出し倒れていく。


「ギャッギャッ!」


 2体目のゴブリンが倒れた瞬間、離れた位置にいる残りのゴブリンが棍棒を構えてリュウへと飛びかかってきた。


「舐めるな!」


 降り下ろされる棍棒に対し下から上へと紅の線が走る。


 根本以外を斬り飛ばされて呆然とするゴブリンを頭からフレイムタンで両断。

 

 抵抗などないかのように真っ二つにした。


 フレイムタンを振り切ったところを背後から残った2体が左右に別れて、ほぼ同時に思いきり棍棒を叩きつけようと振りかぶっている。


「うおおおおおおおおっ!!!!」


 リュウはタイミングを合わせて右後方へと身体を捻りながら足を踏み込み、右手に握った紅の両刃で薙ぎ払った。


 狙いもつけずに振るった刃がゴブリンに致命的なダメージを与えながら体の何処かを通り抜けたことを確信し、フレイムタンを左手に持ち替え、左側から迫るゴブリンへと身を翻しながら一閃。


「……グゲッ」


 手に持つ棍棒ごと正面から横一文字に切り裂さかれたゴブリンは口から血を吐き出しながら崩れ落ちた。


(レベルが上がるとこんなにも違うものなのか。以前ゴブリンを斬った時よりも筋力が上がっているからだろうが、さらに切れ味が増しているな)


 想像以上にスムーズに戦闘が終わったことに自分でも驚きつつ、リュウは周囲を見回しながら警戒を続けている。


(これだけの騒ぎを起こしたんだ。必ず他のゴブリン達が気がついて集まってくるだろう。囲まれると面倒だ。こっちから仕掛けて、見つけ次第斬っていこう)


 リュウはゴブリンの死体から耳と魔石を剥ぎ取りマジックポーチに入れると次のゴブリンを探して走り出すと、騒ぎを聞きつけてこちらへ近づいてきていた10体ほどのゴブリンの群れを発見する。


 リュウは木を使って身を隠しながら接近。群れが真横を通る瞬間に飛び出して、片っ端からフレイムタンで斬りつけつつ反対側まで駆け抜ける。


「……キリがないな」


 刃に着いた血を振るい飛ばしながら思わずリュウは愚痴を溢す。

 しかし、愚痴を溢すのは無理もない。10体ものゴブリンを倒した今も、騒ぎを聞きつけてゴブリンが先ほどとは比較にならないほどの数が集まってきているのだから。


(……面倒だが仕方がない。次は雷魔法の範囲攻撃魔法を使えるようにしておくことにしよう。今は目の前の奴らを斬って斬って斬りまくるぞ!)


 リュウは油断せずフレイムタンを構えている。しかし、近づいてきたゴブリン達は先程のように襲いかかってこず、リュウの回りを囲んでいった。

 数は200を超えている。


(動きが急に変わったな。何があった?)


 リュウが疑問に思っていると群れの奥から他のゴブリンとは毛色の違うタイプのゴブリンが出てきた。リュウは千里眼を使って観察する。


 体長は2メートルほど。

 通常のゴブリンよりどす黒い緑の肌で、額には角のような小さな突起があった。

 武器は棍棒ではなく鋼の剣を持っており、反対の手には鋼のタワーシールドを持っている。頭には鉄製のヘルムを被っており、体には使い古されたチェインメイルを着込んでいた。


 遠くにいるはずなのにリュウと目を合わせて『見えているんだぞ』と言わんばかりに醜悪しゅうあくな顔を歪めてニタリとわらっていた。

 

(明らかにアイツがこいつらのボスだな)


 リュウは千里眼を使ったまま鑑定を試みた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 ゴブリンキング

種族 小鬼族の王

レベル 30

HP 500/500

MP 48/48

筋力 158

魔力 50

耐久 137

敏捷 146

器用 72

幸運 41


スキル【表示できません】

魔法 【表示できません】

加護 【表示できません】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(……不味いな。どうやらゴブリンの王様はかなり強いらしい)


 予想以上のゴブリンキングのステータスの高さに頭を痛めるリュウ。逃げ出すにもゴブリンキングの方が足が速いのだから背中を見せればあの鋼の剣で切り裂かれてしまう。


(殺られる前に殺るしかないか!)


 覚悟を決めたリュウは呼吸を整え、フレイムタンをゴブリンキングがいる方へとつき出す。


「そこで待ってろ、ゴブリンの王。今すぐぶった斬ってやるッ」


 リュウは己を鼓舞しながら挑発の言葉を発し、ゴブリンキングへと疾走していった。

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