表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/197

ep.46 風のはじまりの朝

朝の空気はひんやりとして、草の上に落ちた露が静かに光っていた。 遠くで鳥が鳴き、町の外れでは冒険者たちがすでに動き始めている気配がする。


咲姫はふにゃっと伸びをしながら、 「ん~……朝なのです~……」 と、まだ半分眠った声で呟いた。焚き火の跡に近づき、残り香をくんくんと嗅ぐ。


紗綾は猫を抱いたまま、風の流れをじっと見ていた。 「……風が落ち着きませんね。誰かが動いています」 猫も同じ方向を見つめて、しっぽをゆらりと揺らす。


果林は団子の串を片手に、 「朝の団子はうまい~。でも今日はなんか、空気が違う気がする~」 と、ぼんやり呟いた。


風音は草の揺れを見つめ、静かに言葉を落とす。 「……風が乱れてる。重い気配が近い」 その声は小さいのに、場の空気を引き締める力があった。


風花は大鍋を磨きながら、柔らかく微笑んだ。 「今日の風は、少しざわついてるね。でも、怖がる風じゃないよ」 踊り子らしい、包み込むような声だった。


その頃、町の外れでは冒険者たちが準備をしていた。 剣を磨く者、地図を広げる者、焚き火を囲んで作戦を話す者。


彼らの背中越しに、 “重い足跡の残り香” だけが、風に混じって流れてきた。


まだ姿は見えない。 でも、確かに何かが近づいている。


咲姫がふと顔を上げる。 「……なんか、来るのです?」


紗綾は小さく頷いた。 「ええ。今日は、いつもと違う朝です」


風がひとつ、長く鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ