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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
2章

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ep.44 試し

森の守護者たちが弓を下ろし、静かな声で告げた。 「……ならば、試す。湖へ進む者が本当に風を乱さぬかどうか」


その言葉に、仲間たちは互いに顔を見合わせた。霧の中で揺れる木々、止んでいた風が少しずつ戻り始める。森そのものが試練を与えているようだった。


果林は酒瓶を抱え直し、笑みを浮かべる。 「試しってことは、まだ道は閉ざされてないってことだね。師匠の導きに従うのが弟子の務めだよ」


小豆は祈りを捧げ、焚き火の夜を思い出すように言葉を紡ぐ。 「兎神さまも猫神様も、導いてくださっています。風を乱さず、調和を保つことを誓います」


木世実は舞の拍を刻み始めた。雪原で舞ったときと同じように、疲れた心を癒すリズムが森に響く。 「風と一緒に舞えば、乱れることはありません。風は応援の拍に変わるのです」


咲姫は団子を取り出し、笑顔で差し出す。 「団子の香りを風に乗せるのです。きっと森も喜ぶのです」


紗綾は札帳を開き、筆を走らせる。 「風の記録:試し。問い――風は乱されるものか、調和されるものか。記録者・紗綾」


悠真は静かに歩みを進め、風を受け止める。 「風は導きです。受け止めることで、道は開ける」


森の風が強まり、試しの瞬間が訪れた。枝葉が揺れ、霧が舞い上がる。仲間たちは乱されずに進み、祈りと舞と笑い声が風と調和した。


守護者たちは弓を完全に下ろし、瞳に光を宿した。 「……湖へ進む資格あり。風を乱さぬ者たちよ、進むがよい」


森の奥から光が差し込み、霧が晴れていく。湖への道が、確かに開かれた。


【後書き】

こんばんは、悠真です。 森の守護者たちに試されました。風を乱さずに進めるかどうか――それが条件でした。


小豆さんの祈り、木世実さんの舞、咲姫さんの団子、果林さんの笑い、紗綾さんの記録。 それぞれの力が風と調和し、道は開かれました。


私はただ、風を受け止めました。導きは風そのものに宿っているのだと思います。 次は、湖のほとりへ。

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