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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
2章

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ep.43 森の守護者

湖へ向かう山道は、次第に森の深みへと変わっていった。雪は消え、代わりに湿った土と苔の匂いが漂う。木々は高く伸び、枝葉が空を覆い、昼だというのに光は薄暗い。風は止み、霧が漂い始める。仲間たちは足を止め、互いの姿を確かめながら進んだ。


「……静かすぎるね」果林が酒瓶を抱えたまま呟く。 「団子の匂いもしないのです」咲姫が首をかしげる。 「森が息を潜めているようだ」悠真は低く言った。


そのとき、前方に影が現れた。長い耳を持ち、緑の衣をまとった者たち――エルフ。彼らは弓を構え、霧の中から姿を現す。


「ここから先は、森の守護者の領域。湖へは立ち入ることを許さない」 声は冷たくも澄んでいて、森そのものが語っているようだった。


果林は苦笑し、酒瓶を軽く掲げる。 「やっぱり封鎖って噂は本当だったんだね」


小豆は一歩前に出て、祈りの言葉を紡ぐ。 「私たちは旅を続ける者です。湖を乱すつもりはありません。兎神さまも猫神様も、導いてくださっています」


木世実は舞の拍を刻み、疲れた心を癒すようにリズムを響かせる。 「旅を続けることで、人を応援したいのです。湖の風も、きっと人を励ますはずです」


エルフの一人が弓を下ろし、仲間に目を向けた。 「……言葉は風のように届く。だが、湖は守らねばならない」


咲姫は団子を差し出し、笑顔で言う。 「団子を食べながら話すのです。きっと仲良くなれるのです」


その素直な声に、森の空気が少し揺れた。エルフたちは互いに視線を交わし、弓を下ろす者が増えていく。


紗綾は札帳を開き、筆を走らせる。 「風の記録:森の守護者。問い――湖は封鎖か、交渉か。記録者・紗綾」


悠真は静かに前へ出て、エルフの瞳を見つめた。 「導きは猫神様からも示されました。湖のほとりは、旅の本拠となる場所。もし封鎖が必要なら、その理由を教えてほしい」


森の守護者たちは互いに視線を交わし、やがて弓を完全に下ろした。 「……ならば、試す。湖へ進む者が本当に風を乱さぬかどうか」


その言葉と同時に、森の奥から風が吹き抜けた。霧が揺れ、木々がざわめく。まるで森そのものが試練を告げているようだった。


果林は酒瓶を抱え直し、笑みを浮かべる。 「試すってことは、まだ道は閉ざされてないってことだね」 小豆は祈りを続け、木世実は舞を強める。咲姫は団子を握りしめ、紗綾は札帳を閉じた。悠真は静かに頷き、仲間たちを見渡した。


湖への道は、封鎖ではなく「試し」へと変わった。 森の守護者たちの瞳には、旅人たちを見極めようとする光が宿っていた。


【後書き】

こんばんは、紗綾です。 森の守護者――エルフたちに出会いました。湖へは封鎖されていると聞いていましたが、彼らはただ守っているだけのようでした。


「湖は封鎖か、交渉か」――札帳にはそう記しました。 猫神様の言葉と町の噂が重なり、いよいよ湖のほとりが近づいているのを感じます。


次は、守護者たちとの対話と試しの時です。

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